カナダ永住には様々なルートがあります。
どのルートを選ぶにしても、基本的には学歴、職歴、英語力を伸ばしていく必要があるのですが、それを回避する方法として、ユーコン準州への永住を勧める情報を、ネット上で見かけます。
ユーコン準州への永住は本当にそんなに簡単なのでしょうか?
移民コンサルタントがユーコン準州への永住について解説します。
このページの目次
ユーコン準州ってどんなところ?
まずはユーコン準州がどこにあるのか見てみましょう。
地図で見るとこんな感じです(赤色のエリア)。
ユーコン準州の位置
地図で見ると一目瞭然。カナダに13ある州(準州)のなかで最北に位置しています。
隣の灰色に塗られたところはアメリカ、アラスカ州です。
地図で見るとだいたい想像がつくと思いますが、
ユーコン準州、超寒い!!
ユーコン準州の観光局ウェブサイトで、州都ホワイトホースの気候を紹介しています。
ホワイトホースの気候
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
平均最高気温(℃) | -13 | -9 | -1 | 6 | 13 | 19 | 21 | 19 | 12 | 4 | -6 | -11 |
平均最低気温(℃) | -22 | -19 | -12 | -5 | 1 | 5 | 8 | 6 | 2 | -3 | -13 | -19 |
平均日照時間 | 6 | 8 | 11 | 14 | 16 | 18 | 19 | 17 | 14 | 12 | 9 | 6 |
最低気温の平均がマイナスになる月が7か月、1年の半分以上です。
いちばん寒い1月の平均最低気温はマイナス22度!まさに極寒ですね。
緯度も非常に高いので、12月の平均日照時間が6時間、1日の75%が夜です。
夜が長くてオーロラが見られることは嬉しいですが、十分な日光に当たれないことは、ビタミンD不足やうつ病など、様々な健康不良の原因になります。
オーロラを始めとする雄大な自然は素晴らしいのですが、寒さと暗さはとても厳しいので、永住を見据えて長期滞在するには相当の覚悟がいります。
雄大だが過酷な自然なので人口が少ない
ここまでご覧いただいて、ユーコンの雄大な自然がイメージできたかと思います。
しかし、あまりに過酷な環境なので、あまり住みたがる人がいなく、人口も少ないです。
2011年の国勢調査のデータでは、人口と人口密度はこのようになっています。
面積 | 482,443 km² |
人口 | 33,897 人 |
人口密度 | 0.065 人/km² |
人口密度、0.065 人/km²です。
1平方キロメートルに0.065人ということは、10平方キロメートルに6.5人ということ。
10平方キロメートルは東京ドーム213個分。そこに6人くらいしか住んでいないということです。
もちろん、ユーコン準州には北極圏の人が住めないエリアが相当あるので、人が住めるエリアに限って人口密度を算出したら人口密度は変わってきます。
それでも、日本の過疎自治体でも10人/km²くらいな。
桁違いの人口の少なさですね。
人が少なければ、働く人も少ない
これまた当然ですが、人口が少なければ、働く人も少ないです。
特に、社会を支える労働集約型、肉体労働系の産業で人手が足りません。
そこで困ったユーコン準州の政府が、ユーコン準州に住みたいと思う人を増やすために、外国人にユーコン準州を移民先として選んでもらう方法を導入しました。
ユーコン準州の永住制度
「マニトバ州独自の移民プログラムで永住権を取る」の記事や「ブリティッシュコロンビア州の独自移民プログラム BCPNP International Graduate」の記事でも紹介しましたが、カナダに13ある州(準州)はそれぞれ永住権プログラムがあります。
この州独自のプログラムをPNP(州政府推薦プログラム)と呼びます。
PNPについては「PNPとは?州から移民推薦状をもらってカナダの永住権を取得しよう!」で詳しく解説しているのでご覧ください。
ユーコン準州にも永住権プログラム「ユーコン準州永住権プログラム(Yukon Nominee Program 、YNP)」があります。
詳しくみていきましょう。
ユーコン準州永住権プログラムってなに?
ユーコン準州永住権プログラムとは、ユーコン準州が独自に設けた移民プログラムのことです。
ユーコン準州移民プログラム(YNP)の目的
- ユーコン準州の人口を増やし、経済、社会を活性化する
- 人材が不足している業種、職種の人材を確保する
- 永住者にはユーコン準州に長期滞在してくれることを期待する
ユーコン準州永住権プログラム(YNP)には3つの申請方法があります。
YNPの3つの申請方法
- Skilled Worker Category(スキルドワーカー)
- Critical Impact Worker Category(クリティカル・インパクト・ワーカー)
- Yukon Business Nominee Program(ビジネスノミニー)
スキルドワーカー
スキルドワーカーカテゴリーは、NOCレベル0、A、Bのジョブオファーを得ている人が対象で、エクスプレス・エントリーと組み合わせて申請可能な場合があります。
クリティカル・インパクト・ワーカー
クリティカルインパクトワーカーは、直訳すると「危機的な影響を及ぼす労働者」です。
つまり、人手が足りなすぎて州の経済が危機的になっている分野の労働者を呼び込むためのプログラムということです。
ビジネスノミニー
これは、ユーコン準州で起業する人のためのプログラムです。
このように、ユーコン独自の移民プログラムは3種類あります。
しかし、ユーコン準州で起業するのは大変ですし、NOCレベルの高いジョブオファーを得るのも難しいので、この2つの申請方法は対象になるケースが比較的少ないです。
ですので、今回の記事ではNOCレベルC、Dの職種でも申請可能な、クリティカル・インパクト・ワーカーに絞ってご紹介します。
YNP クリティカルインパクトワーカーの申請条件
それでは、YNP クリティカル・インパクト・ワーカーの具体的な申請条件をご紹介します。
「ユーコン州は永住権が取りやすい州です」などと紹介されている記事をネットで見かけますが、確かに申請の条件は多くないです。
YNP クリティカルインパクトワーカーの申請条件 | |
最低条件 | |
教育 |
高校卒業以上 |
英語力 | CLB 4以上 |
ユーコン準州内での雇用 | フルタイム、1年以上の雇用契約(ジョブオファー)を受けていること。職種はNOCレベルCまたはDの職種であること。雇用主が永住権申請者を雇う前に所定のカナダ人、カナダ永住者向け求人活動を行っていること。 |
就労経験 | ユーコン準州で受けたジョブオファーと関連する、6か月以上の就労経験 |
カナダ滞在資格 | 就労ビザまたは学生ビザを有していること(観光ビザは不可)。ビザはYNPの推薦を受け、連邦政府から永住権の承認を受けるまでの全ての期間有効であること。 |
雇用主の協力 | 雇用主と永住権申請者の共同申請という申請形態となる。申請時に永住権申請者が既にユーコン準州に居住している場合、雇用主と永住権申請者に同時に面接を行う。 |
では、それぞれの条件を具体的に見てみましょう。
教育の条件
「高卒以上」というのは決して高いハードルではないです。
英語力の条件
英語力の条件は、CLB4以上です。
日本の高校卒業程度の英語力があれば、十分クリアできるレベルです。
もし英語に自信がなくてもカナダで語学学校に数か月通えば、到達できるレベルなので問題ありません。
(もちろん、到達できるかどうかは努力次第ですよ)
雇用の条件
NOCレベルC、Dの職種で1年以上、フルタイムのジョブオファーを受けていること。これだけです。
就労経験
ユーコン準州で受けたジョブオファーと関連する、6か月以上の就労経験があることが必要です。
日本での職務経験を使うなら、在職証明、当時の上司または人事担当者からの推薦状、給与の証明(給与明細、源泉徴収票など)を全て英訳して申請に添付します。
日本で該当する経験がない、昔の職場に頼みたくない、書類を用意するのが面倒くさい、などという場合は、カナダで就労ビザを持って働いた期間を使うことも可能です。
カナダ滞在資格
就労ビザまたは学生ビザを有していること(観光ビザは不可)が条件です。
また、ビザはYNPの推薦を受け、連邦政府から永住権の承認を受けるまでの全ての期間有効である必要があります。
ビザの有効期限内に同じ種類のビザを申請した時に使える、いわゆるImplied Statusは使えませんので、手持ちのビザが切れるまでに新しい種類のビザが承認されるよう、計画的に手続きをする必要があります。
雇用主の条件
雇用主と一緒に申請する形になるので、申請の始めから終わりまで、雇用主に協力してもらう必要があります。
ジョブオファーをもらう段階から、YNPの申請に協力してもらえるか、雇用主に確認しましょう。
以上がユーコン準州に永住するのに必要な条件です。たったこれだけ!
確かに、拍子抜けしてしまうほど簡単な条件ですね。
しかも、これらはスタートラインに立つための条件ではなく、この条件を満たせばユーコン準州の推薦をもらえてしまいます。
ポイント稼がなくていいの?とドキドキしてしまいます。
いいんです。上の条件を満たすだけで。
ユーコンへの移民はこんな人におすすめ
ユーコン準州への移民はこんな人におすすめです。
ユーコンに向いているのはこんな人
- 寒さが苦にならない
- 自然が大好き
- 田舎暮らしが好き
- 夫婦で永住を希望していて、一人が公立カレッジに通う
- カナダで働けるビザが6か月くらい残っている
寒いこと、田舎なことがネガティブですが、これは好みの問題なので(ちなみに、わたしは寒いの嫌いデス)、人によってはマイナス要素にはなりません。
その中で、ちょっとハードルが高いのが就労ビザ。
LMIAの手続きが必要な就労ビザを取得するのは大変なので、ワーキングホリデー、ポスト・グラデュエーション・ワークパーミット(ポスグラ)、配偶者ビザなどのオープンワークパーミットが有効な期間にユーコン移住にチャレンジすることを勧めます。
ユーコン準州に住み続けるには、それなりの覚悟がいります。
おすすめなのは、バンクーバーなどカナダの他の都市で永住権取得にチャレンジして、獲得ポイントなどの関係で永住権取得が難しかった時の「プランB」として、ユーコン準州を考えることです。
ユーコンへの移住は「最後の手段!」
ユーコン準州の移民プログラムYNPは、確かに簡単に永住権が取れます。
ユーコン準州内でジョブオファーを得ることが一番の難関なのですが、職種が限定されていないので、飲食店のサーバーやキッチンヘルパーなどの仕事でも申請の対象になります。
ジョブオファーさえもらえれば(そして雇用主が申請に協力してくれれば)、他の条件をクリアするのは難しくありません。
他の永住権申請方法で求められる、学歴、職歴、英語力でポイントを稼ぐ必要もありません。
求められるのはユーコンへの愛と覚悟
「じゃあユーコン準州に移民しよう!」って思われるかも知れませんが、ちょっと待ってください。
上に書いたとおり、YNPプログラムは、ユーコン準州に長く住んで、ユーコン準州の社会と経済に貢献してくれる人を受け入れるプログラムです。
ユーコン準州の過酷な環境の中で、少なくとも数年間生活するだけの、ユーコン準州への愛と覚悟があるか、考えてみてください。
「永住権を取るまでの我慢」という考えは間違い
「永住権を取るまでの数年間我慢してユーコンに住んで、永住権が取れたら本当に住みたい州に移ればいい」と思うかも知れませんが、その考えは間違いです。
「ユーコン準州に住み続ける意志がある」というのがYNPプログラム申請の前提なので、申請の過程で審査官に「永住権が取れたら他の州に行きます」などとポロリと言ってしまったら、その時点で申請が却下になる可能性があります。
「住めば都」とはよく言いますが、ユーコン準州を都と感じるかは人それぞれです。
過酷な環境なのは間違いないので、バンクーバーなど他の都市で永住権にチャレンジして、カナダの経験値を積んでからユーコン永住を目指しても、全く遅くないです。
まとめ
最後にもう一度、ユーコン準州の永住制度、YNP クリティカルインパクトワーカーについて、まとめてみます。
- 高校卒業以上の学歴
- 英語力条件はCLB4と、かなり低い
- ジョブオファーに関係のある6か月以上の就労経験
- NOCレベルC、Dの職種で、無期限フルタイムのジョブオファー
- 雇用主が申請に協力してくれること
条件はこれだけです。
ユーコンは移民しやすいという評判は伊達じゃありません。
ですが、ユーコン移民に飛びつく前に、こんなに簡単に永住権が取れる制度が設けられているという意味をよく考えてください。
このような制度を作っても、まだ人が足りない、根付かないということです。
「寒いところが、自然が、田舎が大好き!」というのでなければ、ユーコン永住は就労可能なビザが残り6か月程度になった時の最後の手段に取っておいたほうがいいです。
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いっしょにカナダ永住を目指しましょう!
BC州など他の州のPNP制度については、こちらの記事もご覧ください。