オンタリオ州PNP制度紹介|すぐ定員になるので早めの準備を!

オンタリオPNP
監修者 監修者
村山まりえ

移民コンサルタント。「Immigration Consultant ICCRC R511456」を取得している、カナダで数少ない日本人ビザコンサルタント。韓国系最大手の留学エージェント、国際的教育財団でのマネージメント職を経て現職へ。

移民の国、カナダ。

海外から条件の合う移民を受け入れるため、さまざまな移民(永住)プログラム制度があります。

その中で、各州が独自に設けている移民推薦プロラムを「プロビンシャル・ノミニー・プログラム(PNP)」と呼びます。

これは、各州がその州が永住して欲しいと考える人材を呼び込むためのプログラムです。

 

村山

今回の記事では、オンタリオ州のPNP制度についてご紹介します。

PNP制度自体に関する情報や、他の州のPNP制度については「PNPって?州から移民推薦状をもらってカナダ永住権を取得しよう!」をご覧ください。

オンタリオ州のPNP「OINP」

大都市トロントで有名なオンタリオ州のPNPは「オンタリオ・イミグラント・ノミニー・プログラム(Ontario Immigrant Nominee Program ・OINP)」です。

OINPには、大きく分けて3つの申請分野(カテゴリー)があります。

OINPの申請カテゴリー

  • Employer job offer(雇用主からの内定)★
  • Human capital(人的資本)
  • Business(ビジネス・起業)

Human Capital(人的資本)は、修士課程、博士課程を卒業しているなど、特に優れた特徴を持つ人が対象になるカテゴリー。

Businessはカナダの起業を買収する、カナダで起業する人が対象になるプログラムです。

村山

この2つは一般的にハードルが高めなので、あまりおすすめはしていません。

そのため、今回ではもっとも可能性のあるEmployer Job Offer(雇用主からのジョブオファー)カテゴリーに絞ってご紹介します。

Employer Job Offer3つの申請経路(ストリーム)

Employer Job Offer(雇用主からのジョブオファー)カテゴリーは、更に3つの申請経路(ストリーム)に分かれます。

Employer Job Offerの申請ストリーム

  • Foreign Worker Stream(海外労働者ストリーム)
  • International Student Stream(留学生ストリーム)
  • In-Demand Skills Stream(高需要技能ストリーム)

この中で、In Demand Skills Streamは内外装技師や精肉技師など、オンタリオ州が定める特に需要が足りていない専門職のジョブオファーを受けている人が対象です。

あまり一般的とは言えないので、今回の記事での紹介は割愛します。

オンタリオ州で技術職のジョブオファーをもらっていて、「自分の職種がIn-Demand業種に該当するかも?」と思う方は、カナダ留学コンパスにご相談ください。

Foreign Worker Stream(海外労働者ストリーム)

海外労働者ストリームでは、ジョブオファー、申請者、雇用主がそれぞれ条件を満たしている必要があります。

ジョブオファーの条件

ジョブオファーには次の5つの条件が求められます。

  1. フルタイム、無期限であること
  2. NOCレベルB以上であること
  3. 職種の州賃金中央値以上の賃金であること
  4. 雇用主が必要とするポジションのオファーであること
  5. オンタリオ州内のジョブオファーであること

申請者の条件

申請者には次の4つの条件が求められます。

  1. 職業経験または資格があること
  2. 資格がある場合は有効な資格であること
  3. オンタリオ州に住む意志があること
  4. カナダの有効な滞在資格を有していること(カナダ国内から申請の場合)

雇用主の条件

雇用主には次の2つの条件が求められます。

  1. オンタリオ州内で3年以上操業し、良好な財務状況で税などの未払金がないこと
  2. (大トロント都市圏の場合)100万ドル以上の売上と5人以上の雇用があること、(大トロント都市圏以外の場合)50万ドル以上の売上と3人以上の雇用があること

International Student Stream(留学生ストリーム)

留学生ストリームでもジョブオファー、申請者、雇用主がそれぞれ条件を満たしている必要があります。

ジョブオファーの条件

ジョブオファーには次の5つの条件が求められます。

  1. フルタイム、無期限であること
  2. NOCレベルB以上であること
  3. 職種の州の低賃金レベル以上の賃金であること
  4. 雇用主が必要とするポジションのオファーであること
  5. オンタリオ州内のジョブオファーであること

申請者の条件

申請者には次の4つの条件が求められます。

  1. カナダの公立カレッジ・大学で2年以上のプログラム(大卒者向けプログラムの場合は1年以上)を卒業していること
  2. 卒業から2年以内の申請であること。
  3. オンタリオ州に住む意志があること
  4. カナダの有効な滞在資格を有していること(カナダ国内から申請の場合)

雇用主の条件

雇用主には次の2つの条件が求められます。

  1. オンタリオ州内で3年以上操業し、良好な財務状況で税などの未払金がないこと
  2. (大トロント都市圏の場合)100万ドル以上の売上と5人以上の雇用があること、(大トロント都市圏以外の場合)50万ドル以上の売上と3人以上の雇用があること

申請条件のポイント

海外労働者ストリーム留学生ストリームも、申請の条件は同じものが多いです。

海外労働者ストリームの場合はジョブオファーの賃金の条件が「州賃金中央値以上」が必要なのに対して、留学生ストリームの場合は低賃金レベル以上でよいことが大きな違いです。

両方のストリームともに、比較的難しい条件は、雇用主の売上げと従業員数の条件です。

村山

オンタリオ州でOINPを使う場合は、ある程度大きな規模と業歴のある会社で働くようにしましょう。

最大の難点「定員オーバー」

ここまでオンタリオ州のPNP制度OINPについてご紹介してきました。

申請のプロセスは、上記に挙げた申請の条件を満たせば申請が出来るというもので、ポイントを稼いで申請の招待をもらう必要はありません。

「それはいい、じゃあさっそく申請だ!」と言いたいところですが、実はそんなに簡単ではありません。

PNPによる移民受け入れは、州ごとに定員が決まっていて、その定員に達すると申込みが締め切られてしまうのです。

例えば、留学生プログラムの場合、2019年4月26日に海外労働者ストリームと留学生ストリームの受付を停止しています。

村山

応募多数により定員オーバーになってしまった、ということ。

こちらのオンタリオPNPからのお知らせをご覧ください。

2019年の海外労働者ストリームと留学生ストリームの受付を停止するという通知です。

受付停止

2019年の受付終了ではありませんが、受付がいつ再開されるかは未定です。

オンタリオPNPで申請を考える場合は、申請の準備を全て整えて、書類を用意して、受付が開始されたらすぐに申し込む必要があります。

特に留学生ストリームの場合、カレッジ・大学を卒業してから2年以内に申請するという条件がありますので、申請のタイミングを逃さないために入念な準備が必要です。

 

海外労働者ストリーム、留学生ストリームよりもっと大変なのが、Human capital(人的資本)カテゴリーのMasters Graduate Stream(大学院卒業者ストリーム)です。大学院ストリーム

こちらは2018年の通知です。

村山

4月5日に大学院ストリームの受付開始が発表され、なんとその日のうちに定員に達して締め切られています。

 

このように、申込がいつ始まるか分からず、始まるとすぐに定員上限に達してしまう所が、オンタリオ州PNPの使い勝手が悪いところです。

オンタリオ州PNPへの申請をお考えの場合は、慎重にご検討ください。

 

では、具体的にオンタリオ州でカナダ永住権を取得するのはどれくらい大変なのでしょうか?

サンプルケースを使って紹介します。

T・Kさん(仮名、32歳)のケース

T・Kさんは旅行会社に務める32歳の男性で、実家で両親、妹と暮らしています。

T・Kさんは大学を卒業して5年間社会人として働いたあと、退職してカナダ、ニュージーランド、オーストラリアにワーキングホリデーで1年間それぞれ滞在しました。

ワーホリの間は旅行会社に勤めたり、ツアーガイドをしたりして、永住したいという希望を抱きましたが、働いていた会社では、「ワーホリの切れ目が円の切れ目」という感じで、ワーホリのあとの滞在延長の相談に乗ってもらえませんでした。

T・Kさんは英語の勉強を頑張っていたので、カナダの公立カレッジに入学するのに必要な英語レベルをクリアしていたので、カナダで2年間公立のカレッジに通うことにしました。

公立カレッジに通うと最大3年間のポストグラデュエーション・ワークパーミット(ポスグラ)が取得できるので、カレッジの2年とポスグラの3年間の計5年間あれば、カナダ永住に必要な条件を満たせると考えていました。

結果的には、その見込は甘かったのですが…。

T・Kさんプロフィール(カナダ渡航前)

  • 年齢(32歳)
  • 学歴:4年制大学卒(日本)
  • 職歴:会社員5年間(日本)、レストランクック8か月(カナダ)、ツアーガイド8か月(ニュージーランド)、旅行会社9か月(オーストラリア)
  • 英語力:IELTS6.0
  • 同伴家族:なし
  • カナダ滞在歴:ワーホリで1年間

公立カレッジのTourismプログラムに入学

T・Kさんはオンタリオ州トロントの公立カレッジのTourism(観光業)のプログラムに入学し、2年間で卒業しました。

卒業後には、無事3年のポスグラを取得することができました。

村山

ここまでは特に問題はなく、スムーズに進んでいるように思えます。

卒業後の就職が難しい

カレッジ卒業、ポスグラ取得までは順調に進みましたが、その後、就職先を見つけるところで壁に当たりました。

オンタリオ州では、就職先を見つけることが難しいのです。

T・K自身に経験があり、カナダのカレッジでも勉強した観光業に関わる仕事がしたいと望んでいますが、カナダローカルの会社に就職するには英語力が足りません

日系の旅行会社に求職しましたが、ワーホリを持っている人が優先的に採用されるらしく、たくさんの企業に申し込みをしても、なかなか採用に至りません。

 

散々苦労した結果、カレッジ卒業から半年後にナイアガラの滝を拠点に日本人向けのツアーを提供する会社にツアーガイドとして就職することができました。

ですが、ツアーガイドはNOCレベルCなので、永住権申請にはつながりません。

州によっては、永住権の条件を緩和する職種に観光業関連の職種を含めていることがありますが、オンタリオ州は該当しません。

就職した会社は、「1年間働いて実績を示してくれれば、ツアーガイドのスーパーバイザーに昇進させるよ」と言ってくれたので、その口約束を信じて、薄給に耐えて働くことにしました。

いよいよ永住権申請

カレッジ卒業から1年半後に、ツアーガイドのスーパーバイザーに昇進しました。

いよいよ永住権の申請です。

T・Kさんの永住権申請は成功するのでしょうか?

T・Kさんプロフィール(永住権申請時点)

  • 申請者:T・Kさん(36歳)
  • 学歴:4年制大学卒(日本)、2年制カレッジ卒(カナダ)
  • 職歴:会社員5年間(日本)、レストランクック8か月(カナダ)、ツアーガイド8か月(ニュージーランド)、旅行会社9か月(オーストラリア)、ツアーガイド1年(カナダ)
  • 英語力:IELTS6.0(留学前のスコア)
  • カナダ滞在歴:4.5年間

エクスプレス・エントリーは対象外

T・Kさんはエクスプレス・エントリーの申請条件を満たしていないので、申請はオンタリオ州のPNP制度、OINPを使います。

T・Kさんが対象になるのは、Employer job offer(雇用主からのジョブオファー)カテゴリーの、International Student Stream(留学生ストリーム)です。

その年の応募は締切ずみ

申し込みについて調べたところ、今年のInternational Student Stream(留学生ストリーム)の募集は締め切られていることが分かりました。

そして、次に申し込みが再開された時点で、T・Kさんはカナダのカレッジ卒業から2年以上が経過してしまい、International Student Stream(留学生ストリーム)の申請条件を満たさなくなってしまいました。

他の制度での永住は困難

その後、ツアーガイドのスーパーバイザーになってから1年経ったの、Foreign Worker Stream(海外労働者ストリーム)を使って申請しようと考えました。

しかし、今度はT・Kさんのもらう給与がオンタリオ州のツアーガイドスーパーバイザーの賃金中央値を下回っていたので申請できません。

PNPを使わないでエクスプレスエントリー単体で申請をすることも考えましたが、永住権申請の招待状が送られてくるポイントを得るには IELTSで満点近いスコアを取る必要があります。

T・Kさんは泣く泣くカナダ移住を諦めざるを得ませんでした

村山

このように、計画不足だったがために、永住を諦めざるを得ないケースが少なくありません。カナダへの移住を考えているなら、早め早めの情報収集が重要です!

まとめ

オンタリオ州はカナダ最大の都市トロントを擁する、カナダ永住希望者からの人気が高い州です。

PNPに割り当てられた数も大きいのですが、希望者が多いためすぐに定員が一杯になってしまいます。

サンプルで紹介したケースのように、せっかくカナダの公立カレッジを卒業しても、卒業後の時間を計画的に使わないと期限内に申請をすることができません。

早いもの勝ちのような不確定要素が高いのでおすすめしにくいところはありますが、ポイントを稼ぐ必要がない点は魅力的です。

まずはカナダ留学コンパスの無料相談をご利用ください。

カナダ永住に向けてどんな可能性があるのかをご提示します。

執筆者 執筆者
村山まりえ

移民コンサルタント。「Immigration Consultant ICCRC R511456」を取得している、カナダで数少ない日本人ビザコンサルタント。韓国系最大手の留学エージェント、国際的教育財団でのマネージメント職を経て現職へ。

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