世界中から移民が集まる大都市圏、オンタリオ。
日本人留学生にとってカナダ東部にあるオンタリオ州(トロント)は「とにかく寒い」「ずっと雪」というイメージが強く、長期の滞在先としての候補地として除外する方もいらっしゃいます。
しかし、近年はカナダの永住権(移民)を目指し、オンタリオ州での進学や就職を考える方も増えています。
そこで気になるのが
- オンタリオ州での移民は現実的なのか?
- どうすればオンタリオ州で移民できるのか?
バンクーバーなどの日系コミュニティが発達した地域と比べ、日本人に向けたトロントの情報は少ないとも聞きますので、今回はオンタリオ州での移民の現状についてご紹介いたします。
このページの目次
オンタリオ州について
カナダの首都オタワとカナダ最大の商都であるトロントを抱えるオンタリオ州には、実にカナダの人口の38%の人たちが住んでいます。
オンタリオ州 | 14,689,075人(約38%) |
---|---|
ケベック州 | 8,556,650人(約22%) |
ブリティッシュコロンビア州 | 5,131,575人(約13%) |
アルバータ州 | 4,402,045人(11%) |
(出典:2020 Statistics Canada. Table 17-10-0009-01 Population estimates, quarterly)
多くの日本人にとってはバンクーバーのあるカナダ西部が有名ですが、実は東部の方が人口は多いんです。
カナダの首都はオタワですが、経済・金融の中心地はやはりトロントです。
なんとトロントとその周辺エリアの人口だけで6,197,000人と、ブリティッシュコロンビア州の総人口を上回るんですよ!
地図を見ていただくと理解しやすいのですが、オンタリオ州はアメリカの五大湖(※中学校で習いましたね!懐かしい!)の真上に位置しています。
古くからさまざまな産業が発展したエリアとなっており、ボストンやニューヨークなどにもほど近いため、エンターテイメント産業も盛んです。
日本で言う、東京を中心とした関東エリアをイメージしてしいていただくと近いでしょう。
なるほど、オンタリオ州は人口が多くて大きな州なだね!
オンタリオ州の移民状況
世界から移民が集まる多様性のある国として知られるカナダですが、オンタリオ州の移民状況はどのようになっているのでしょうか?
オンタリオ州は移民が多い!
人口も多く面積も広いオンタリオ州。
実は、毎年移民が訪れる数カナダナンバーワンなんです!
なんと、一年にカナダに移民する人の45%ほどがオンタリオ州に移民しているというデータがあります。
その州都であるトロントは世界中から集まった人々から成る超多国籍都市であり、
- グリークタウン
- リトルイタリー
- コリアンタウン
- チャイナタウン
- リトルインディア
など、各国の移民が集まってコミュニティを作っていることもよく知られています。
オンタリオ州の移民は競争率が高い
オンタリオ州には移民が多いんだね。それって、オンタリオ州は移民しやすということ?
答えはYESでもあり、NOでもあります。
例えば、オンタリオ州PNP制度紹介|すぐ定員になるので早めの準備を!でもご紹介した通り、オンタリオ州が定める地方移民プログラム(Provincial Nominee Program, PNP)は競争率が非常に高いのです。
Provincial Nominee Program とは?
Provincial Nominee Program (PNP)とは、カナダの州(または準州)などの地方が独自に行う移民プログラムのことです。
カナダの移民制度は大きく分けて
・Federal (フェデラル、連邦政府)
・Provincial(プロビンシャル、州政府)
の2通りあります。
PNPでは国ではなく州が移民を推薦します。
このプログラムの審査に通ると、州から「この人はうちの州に必要な人材です!ぜひ永住権を出してあげて!」と推薦状をもらえるので、カナダに永住しやすくなるという仕組みとなっています。
詳しくはPNPとは?州から移民推薦状をもらって永住権を取得しようをご覧ください。
オンタリオ州のPNPはどれほど競争率が高いのでしょうか?
実際のデータを見てみましょう。
2019年にProvincial Nominee Program、つまり州の移民プログラムで移民した人数は以下の通り。
PNPで移民した人数 | 州の人口 | |
オンタリオ州 | 12,341人 | 14,689,075人 |
ケベック州 | - | 8,556,650人 |
ブリティッシュコロンビア州 | 12,575人 | 5,131,575人 |
アルバータ州 | 11,236人 | 4,402,045人 |
マニトバ州 | 12,545人 | 1,377,004人 |
サスカチュワン州 | 10,962人 | 1,179,154人 |
(出典:2020 Annual Report to Parliament on Immigration、※20年データです)
※ケベック州はそもそもが独自の移民システムとなるため、データ集計上、PNPの人数は0名と記載されます。
州の人口で言えばオンタリオ州が圧倒的に多いにも関わらず、PNPで移民した人数はブリティッシュコロンビア州やアルバータ州とほぼ同じですね。
言い換えれば、オンタリオ州は人口に対して PNP の受付が少なく、競争率が高い。
すなわち、「移民しにくい」とも言えます。
しかも、ここだけの話、実は移民申請費用も他州のPNPと比べて高めです!
ではオンタリオ州に移民したい場合は、どのようなルートを使えばいいのでしょうか?
オンタリオ州でおすすめなのは、Provincial(州政府)ではなく Federal(連邦政府)の移民システムです。
オンタリオ州への移民ならフェデラル移民システムがおすすめ
ではオンタリオ州に移民したい場合は、どのようなルートを使えばいいのでしょうか?
オンタリオ州でおすすめなのは、Provincial(州政府)ではなく Federal(連邦政府)の移民システムです。
いちばん人気の移民カテゴリは Federal(連邦政府)の移民制度 Express Entry うちの一つ、Federal Skilled Workerです。
Express Entry とは?
Express Entry(エクスプレス・エントリー)とは、2015年から導入された熟練労働者(スキルド・ワーカー)を対象にしたカナダの移民制度です。
Express Entry には3種類の申請方法があります:
・Canadian Experience Class, CEC(カナディアン・エクスペリエンス・クラス)
・Federal Skilled Worker, FSW(フェデラル・スキルド・ワーカー)
・Federal Skilled Trade, FST(フェデラル・スキルド・トレード)
CEC はカナダでの就労経験が条件で、留学生の方が狙うことが多いです。
FSW は専門性のある職歴や高い英語力が必要です。
FST は指定のトレード職(職人など)での職歴が必要です。
それぞれのカテゴリーについての詳細はカナダ永住への道「エクスプレス・エントリー」をご覧ください。
オンタリオ州は日本でいう関東圏、そしてトロントは東京のようなものです。
基本的に人があふれているため、より高いスキルを持った人が求められます。
また、経済・ビジネスの中心地のため、もっとも求められるはビジネススキルを持った人材です。
カナダも地方に人を呼びたい
マニトバ州やサスカチュワン州などでは、地元産業に貢献できる人材を呼び込みたいので、PNP への割り当て人数が多いです。
これらの州では、農業・鉱業・製造業などが盛んですがなかなか就いてくれる人がいませんので、そういった職種で移民を求めています。
日本の地方も移住支援や起業支援金を出すなど、日本人の地方移住を奨励していますよね。
PNP も地方に人を呼ぶための制度なので、日本の地方移住支援と似ています。
大都市で既に人材で溢れているトロント(日本で言う東京)があまり PNP に積極的ではない理由がイメージできるかと思います。
じゃあ、オンタリオ州で働いて移民できるのはバリバリのビジネスパーソンだけということ?
いえいえ、そんなことはありません。オンタリオ州、そしてトロントへの移民をおすすめできる理由もあるんですよ。
日本人にトロント移民をおすすめできる3つの理由
日本人にとってトロント(オンタリオ州)への移民をおすすめできる理由はこちら。
① 日系コミュニティがまだ小さく、育っている最中である
現在(※2021年10月)、ブリティッシュコロンビア州バンクーバーの失業率が7.3%、ビクトリアが5%なのに対し、オンタリオ州のトロントは9.3%、オタワが6.4%と比較的高めです。
そのため、「仕事を見つけること」のハードルは高いと言えます。
ただ、トロントではバンクーバーと比べ日系コミュニティーがまだ小さく、発展途上です。
つまり、今後どんどん成長する可能性があるということ。
例えばワーキングホリデーを使って移民をお考えの場合、観光・飲食産業での仕事が重要になってきます。
実は、トロントはここ数年ほど空前の日本食ブーム!
バンクーバーなどの日系コミュニティーがすでに充実した地域でビジネス成功したお店がトロントに続々と出店しているんですよ。
日本人におなじみの居酒屋、ラーメン、焼き鳥、牛丼などのいわゆるB級グルメがカナダ人の間にもかなり浸透してきているのです。
しかも、少し前までは日本食といえば中国人や韓国人の経営する「日本食っぽいけど違う」お店がほとんどでしたが、現在では実際に日本人が経営しているレストランも増えています。
平均的な「ジャパレス(ジャパニーズレストラン)」の質もどんどん上がっています。
さらに、ひと昔前のジャパレスといえば
- チップがもらえない
- 時給が低い
- ワーホリが終わったあとは雇ってもらえない
という悪い印象を持つ方も多かったのですが、今は状況が違います。
飲食店は二号店、三号店と出店したり、トロントを出て東のケベック州モントリオールまで進出するケースもあります。
ワーホリで働いていた20代の方が新しい店舗のマネージャーやスーパーバイザーといったポジションにつくことも多くなり、就労ビザをサポートしてもらえる件数もどんどん増えています。
トロントでは飲食店以外にも、日本人を対象にしたビジネスが増えています。
トロントで成功している日本人向けビジネス例
●旅行・観光業
●教育(語学学校やカレッジ)
●金融(銀行や保険など
このように、トロントでもワーホリから永住権獲得を達成した方はいらっしゃいます。
トロント移民達成へのルート例①
ワーキングホリデーで経験を積む
↓
就労ビザに切り替え、カナダでの職歴をつける
↓
職歴を使ってExpress Entry制度で移民
トロント移民達成へのルート例②
公立カレッジに進学
↓
卒業後、2~3年のポスグラビザで就労経験を積む
↓
職歴を使って Express Entry 制度で移民
オンタリオ州での移民はほかの州のPNPよりは時間がかかるとは言え、発展中の日系コミュニティをうまく使い計画性を持ってステップを踏めば移民は可能です。
ただ、次の項目にも繋がりますが、就労ビザの会社サポート、つまりLMIAの手続きは、雇用主が何か書類をパパっと準備すれば終わり、というような簡単な手続きではありません。
外国人を雇う正当性を証明するため、数々のステップを取って雇用主が州の労働局に申請する必要があり、労働局がこれを最終的に判断するため、申請すれば100%通るというものではありません。
多くの方が、これを雇用主と自分の間での同意や手続きで良い、と勘違いしており、そこで期待値に大きなズレができることもありますので、「LMIA?何それ?」と思った方はぜひプロセスを改めて確認ください。
② 移民者が多いため、会社サポートを期待できる(こともある)
オンタリオ州はカナダの中でももっとも移民が多い州です。
そのため、移民の雇用やビザサポートに慣れている企業が多いのもこれから移民を目指す方にはメリットと言えます。
ひと昔前まで日本人にとってオンタリオ州での移民が難しいといわれていたのは、そもそも地域の雇用主(企業)がビザや外国人雇用(特にLMIA)の仕組みに詳しくなかったのも理由のひとつです。
雇用主がビザや移民システムに詳しくなければ、わざわざ勉強してサポートするのは面倒ですし、雇用契約が切れたらそのままサヨウナラ…となりやすいです。
「がんばったら報われる」と考えあまり不満を声に上げない日本人は、雇用主から「ビザを出してあげる」という言葉をひたすら信じて一生懸命、仕事をします。
しかし、結局雇用主に協力してもらえなかったという残念なケースも多々あるのが現実です。
せっかくがんばって働いたのに、意味がないなんて…。
昔(といってもほんの5年ほど前まで)は、カナダに来た日本人は薄給に耐え、自分のお金で移民コンサルタントを雇い、移民申請に必要な書類をすべて用意し上司にはサインをお願いするだけ…というところまでお膳立てした方も少なくありません。
ほかにも、日本では全然違う仕事をしていたにも関わらず、移民申請のためだけにケアギバーとして働きケアギバープログラムを利用するなど、根性で移民を勝ち取った方も多くいました。
それが、ここ数年では状況が変わっています。
日系会社でもここ最近は就労ビザの申請に慣れて来て、学生でも「言われた書類を指示通り提出したら取れた!」という方も見受けられるようになりました。
また、日系を外れると、特にトロントは移民が多いため、カナダの会社で、人事担当者が「カナダ国籍者か永住権保持者しか見たことがない」というケースは非常に稀です。
カレッジや大学を卒業して、そのまま、カナダの会社に就職した方からは、移民申請にかかる書類の発行などは非常にスムーズだったと聞きます。
ただし、あえてサポートをもらえることもあると書いた通り、どちらのケースも、「会社に求められる人材であること」は前提条件ですから、必ずサポートしてもらえる、というようなことはありません。
また、前項から繰り返す通り、最終判断は労働局で、労働局側が「どうしても外国人を雇わないといけない」ということに納得しなければ申請は通りません。
雇用主がサポートしたい、ご本人も続けたいという意思があっても、専門性が低い・給与レベルが低い仕事はそもそもが対象となりません。
特に、失業率が高い場合、カナダは、カナダ人の雇用を守ることを優先することは知っておいてください。
③ エンターテイメント業・アーティストの移民も多い
アメリカにほど近く街並みが似ているトロントは、アメリカを舞台とした映画のロケ地とされることも多いです。
北米最大となるトロント映画祭も毎年開催されるなど、映画・映像産業が盛んなんですよ。
ちょうど最近、ハリウッド映画「The Man From Toronto」の撮影で山下智久さん(山P)がトロント入りしていることで知った、と言う方も多いかもしれません。
また、日本でも有名なシルクドソレイユはお隣のケベック州が発祥ですが、トロントにも世界トップ10のランクに入るカナダ国際バレエ団(National Ballet of Canada’s School)があるなど、ダンス・舞台演劇のシーンでも有名です。
これらの技術を学ぶために日本から留学して来た方、または、パフォーマンスや映像技術系の仕事でトロントに来た方が、その後現地の団体や企業から雇用され、移民へ繋げるというケースもあります。
おまけ④ 結婚移民も多い
いわば副産物的な移民方法ではありますが、個人で移民するつもりだったが途中で素敵な出会いがあり、結果としてカナダ人との結婚やコモンローからの移民(Family Class)する方もいます。
都会なので出会う人が多く、マッチングアプリやオンラインデートサイトなどの利用者も多いです。(※利用には最大限の注意を!日本と同じく、都会ではそれだけ誘惑や危険も多いものです。)
また、トロントは世界でも有数のLGBTの街でもあります。
もともと日本では非常に生きづらい思いをしてきた方々が、トロントを選んで留学することもよくあります。
その結果、同性のパートナーを見つけて永住するケースもあります。
ただ、こういったケースはあくまで結果論。もちろんですが、「移民のために結婚相手を探す」のはおすすめしません。
オンタリオ州移民をおすすめしない方
ここまでご紹介した通り、オンタリオ州での移民は可能性があるとは言え、競争も激しく簡単だとは言えません。
また、就労ビザの取得プロセスを見て頂くと、ワーホリ、学生やCo-op(就学+就労)から、そのまま雇用主のサポートを受けられるだけの結果を出す、というのは非常に難易度の高いことだと感じるでしょう。
多くの外国人は、まず働くビザを確保するためにカレッジ・大学を卒業する、マスタープログラムを取るなどのステップを取ります。
そのため、次のような方にはオンタリオ州(トロント)での移民は向いていないかもしれません:
- とにかくできるだけ早く永住権を取得したい
- カナダで進学はしたくない
- 日本での仕事経験やスキルがない
- 大都会での暮らしは苦手
このような方は、バンクーバー(ブリティッシュコロンビア州)など日本人でも比較的移民しやすい地域を探して見た方がよいでしょう。
トロント以外の都市はどう?
オンタリオ州にはトロント以外にも移民先として人気の都市があります。
例えば観光産業で日本人の需要があるナイアガラは有名ですよね。ただ、観光業界での移民であればブリティッシュコロンビア州やアルバータ州でも選択肢は多いので、特別なこだわりがない限りあえてナイアガラで移民を目指すメリットはあまりありません。
また、首都オタワにも仕事は集まっていますが政府関係の高度な仕事が多く、さらにケベック州と隣接していることから公用語である英語・フランス語の2か国語を操る必要があり、日本人には少しハードルが高いとも言えます。
加えて、トロントのコンドミニアムの家賃は1人暮らしでも平均2,000ドル程度(日本円で17万円ほど)です。
留学生の住む、キッチン共用のシェアハウスなどでも$800以上(7万円ほど)ですから、生活費も高く、経済的にもお得であるとは言い難いです。
トロントは経済・金融の中心でエンターテイメントも盛んとしてとても刺激が強く魅力的な場所ですが、その分生活・永住を考える場合は相応の競争があるとお考えください。
オンタリオ州の移民の現状まとめ
オンタリオ州はカナダの中心として非常に魅力のある大都市で、毎年多くの移民が訪れます。
特に人気の移民システムは Federal(連邦)の Economic Skilled Workerで、教育レベルやスキルレベルの高い方が移民に有利な傾向があります。
オンタリオ州のPNP(地方移民プログラム)は他の地方に比べ競争率が高いですが、成長している日系飲食産業やエンターテイメント・アーティスト系の業界ならばチャンスはまだまだあります。
移民を目標としてオンタリオ州を目指すのであれば、このような状況を把握したうえでぜひ挑戦してみてください。
留学の都市選びは人生を左右しかねない大きな決断です。来てみて「失敗した!」ということのないよう、色々な側面から検討してみてくださいね。
また、今回ご紹介した情報はあくまで一般的なものです。
移民制度は頻繁に更新されますし、個人の状況や目的によっても最善の移民ルートは違います。
トロントへの留学や移民を検討している方は、まずはカナダ留学コンパスの無料相談をご利用ください。