移民コンサルタント。「Immigration Consultant ICCRC R511456」を取得している、カナダで数少ない日本人ビザコンサルタント。韓国系最大手の留学エージェント、国際的教育財団でのマネージメント職を経て現職へ。
カナダにはケアギバー(care giver)やナニー(nanny)と呼ばれる、住み込みや通いで人のお世話をする職種があります。
ケアギバーという仕事は日本人でも比較的なりやすい職種で、たとえば「ナニーとして働いてカナダの永住権をとりました!」というような体験談をネットで目にします。
本当にケアギバーを通したカナダの永住権は取りやすいのでしょうか?
実は近年までケアギバーとして永住権を取得するにはたくさんの壁があり、永住権は簡単に取得できませんでした。
しかし、2019年6月に新制度が発表になり、ケアギバーからのカナダ永住権取得に大きな道が開かれたのです!
今回は、そんなケアギバーという仕事と、新制度を使ったカナダ永住権へのつなげ方をご紹介します。
このページの目次
ケアギバーってどんな仕事?
ケアギバー(care giver)とは、住み込みや通いでサービス提供先の家庭の子ども保育や、高齢者や障がい者のケアをする仕事です。
子どものケアについては
- ベビーシッター(babysitter)
- ナニー(nanny)
- チャイルド・ケア・ブロバイダー (child care provider)
高齢者や障がい者のケアをする人は
- パーソナル・ケア・プロバイダー(personal care provider)
- ホーム・ケア・ギバー(home care giver)
などさまざまな名前で呼ばれますが、どれも人のケアをする仕事として共通しています。
ケアギバーになる「資格」は必要ない
実はケアギバーになるには特別な資格はないですし、必要もありません。
ケアギバーになるための条件は、基本的には高校卒業以上の学歴のみです(後で詳しく書いています)。
以前は保育に関わる就労経験がケアギバーとして働くための条件だったのですが、制度が変わって条件が緩和されました。
なお、ケアギバーの仕事はカナダの職業分類上
- Home child care providers(NOC4411、家庭での保育提供者)
- Home support workers, housekeepers and related occupations(NOC4412、家庭でのケア提供者)
に分類されます。
ケアギバーのコースがある学校
- ULI(Universal Learning Institute)のCaregiver with Coop Diplomaコース
どんな家庭がケアギバーを必要としているの?
カナダではどんな家庭がケアギバーを必要としているのでしょうか?
特にこのような家庭に需要があります:
- 保育園が見つからなかった
- 子どもが複数いるので全員を保育園に通わせると保育料が高すぎる
- 高齢の両親のサポートをしてもらいたい
- きめ細かい障がい者サービスを受けたい
都市部では保育園が不足している
日本と同様に、カナダでも子どもの保育のサービスが不足しています。
日本で言う「保育園」はチャイルドデイケアと呼ばれますが、都市部を中心に見つけるのがとても難しいです。
人気のエリアでは、子どもが生まれる前の妊娠期間中に保育園を予約しないと入れないほど!
そのため、なかなか子どもの預け先が見つからず、ケアギバーに頼る人も少なくありません。
保育園の費用は高額である
また、カナダは保育サービス自体の費用もとても高額です。
日本では近年保育料の無償化を含むさまざまな制度により、比較的安く保育サービスを利用できるようになりました。
しかし、カナダでは無償化制度はなく、保育料が高いです。
例えば子どもが3人いると費用も3倍になるため、かなりの負担になります。
そこで、ケアギバーを利用する家庭が必要となるのです。
ケアギバー向け永住権申請プログラム
このように、ケアギバーという仕事は需要があり、カナダはケアギバーとして働いてくれる移民に積極的に来てもらいたいというのが現状です。
そこで、2019年6月18日に、新しく2つのケアギバー向け永住権申請プログラムが発足しました:
- Home Child Care Provider Pilot(ホーム・チャイルド・ケア・プロバイダー・パイロット)
- Home Support Worker Pilot (ホーム・サポート・ワーカー・パイロット)
チャイルド・ケアは子どものケア(保育)。
サポート・ワーカーは高齢者や障がい者のケアとして働く職種です。
今回の2つの新しいパイロット(試験的)プログラムでは、これまでのケアギバー永住制度が改定され、ケアギバーとして働く人がより簡単に永住権に申請できるようになりました。
つまり「今まで、ケアギバーの仕事を通して永住権を申請することの障壁になっていた内容」が改善されたということです。
新プログラムで改定された点をご紹介します(両プログラム共通):
「LMIA」が必要なくなった
カナダで就労ビザを取得するためには、通常「LMIA(Labor Market Impact Assessment)」という手続きが必要です。
そうなると、雇用主が限定されてしまうため、このような問題が生じていました:
- 仕事を辞めたくても辞められない(辞めてしまうと、カナダに住むことができなくなる)
- 雇用主側がそんな「辞められない事情」を知っているため足元を見てケアギバーを召使いのようにこき使う
それが、2019年の制度改正により、ケアギバーのジョブオファー(雇用契約)を受けるだけでLMIAなしの職種限定・雇用主を限定しない就労ビザが発行されることになったのです。
「雇用主を限定しない」という所が非常に重要です。
この「雇用主を限定しない」ビザになったことで、ケアギバーが必要以上に雇用主に縛られなくなりました。
配偶者にもビザがでるようになった
ケアギバーの職種は「NOCの専門性レベルC」に分類されます。
つまり専門性が低いため、これまでは配偶者就労ビザの対象外でした。
それが今回の制度改正により、ケアギバーとして働く人の同伴家族にも
- 配偶者就労ビザ(オープンワークパーミット)
- 学生ビザ
が発行されるようになりました。
家族でカナダ移住を目指す方には朗報ですね。
就労ビザと同時に永住権を申請できる!
そして、画期的な変更がこちらです。
就労ビザ申請と同時に永住権の申請ができるようになりました!
このような手順になります。
- 先に永住権の申請をした状態でカナダに来る
- 申請条件の就労経験を満たし、カナダ移民省に報告する
- 永住権申請が審査され、永住権が認められる
これは「カナダに永住したい」と思っている方には飛び上がるほど嬉しい変更ではないでしょうか?
カナダでの「ケアギバー」の申請条件
「ホーム・チャイルド・ケア・プロバイダー・パイロット」および「ホーム・サポート・ワーカー・パイロット」プログラムに申請するためには以下の条件を満たす必要があります:
- ジョブオファーがあること
- CLB 5以上の英語力
- 高卒以降の1年以上の学歴
- カナダでケアギバーとして24か月の職歴(永住権申請時)
- ケベック州以外に住むこと
どれも決して難しい条件ではありません。詳しく見てみましょう。
ジョブオファーがあること
まずはジョブオファー(雇用主からの仕事の証明)があることが条件です。
このジョブオファーにはいくつか条件があります:
- 週30時間以上のフルタイム勤務
- 季節性の仕事ではない
- 勤務地がケベック州以外
- 現実的なジョブオファーであること
どれも複雑なものではないですね。
最後の【現実的なジョブオファー】というのは、例えば
- 雇用主が、実際にケアギバーを必要としている(子どもがいる証明等)
- 雇用主に給料支払い能力がある
- 住み込みの場合、ケアギバーが住む部屋がある
など、ちゃんとした雇い主なら問題ありません。
また、払われる賃金が安すぎると許可が降りません。
その州で定められている賃金の中央値以上(ブリティッシュコロンビア州の場合2021年2月時点で$14.60)の賃金でジョブオファーをもらっていることがまず必要です。
これらの条件を満たしたジョブオファーがあることが必要です。
CLB 5以上の英語力
CLB 5以上の英語力が求められます。
これはTOEIC600点、英検2級程度なので、決して高いハードルではありません。
カナダ永住や進学に必要な英語力について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
高卒以降の1年以上の学歴
学歴としては、高校を卒業したあと、カレッジや大学で1年以上のプログラムを卒業していることが条件です。
日本ですでに大学、短大、専門学校を卒業している場合は、「ECA(Education Credential Assessment)」という手続きを行うことで、日本の学歴をカナダの基準に当てはめた査定を受けることで条件を満たせますよ。
カナダでケアギバーとして24か月の職歴(永住権申請時)
過去36か月の間に24か月以上のフルタイムのケアギバーとしての経験が求められます(永住権申請時)。
ケアギバーとは、下記のいずれかの職種のことです:
【Home child care provider (NOC 4411)】
- 申請者の自宅、または雇用主の自宅で18歳未満の子どもの世話をする仕事
- 雇用主の自宅に住む(住み込み)の必要はない
- Foster parent (里親)としての経験は対象外
【Home support worker (NOC 4412)】
- 申請者の自宅、または雇用主の自宅で、ケアが必要な人の世話をする仕事
- 雇用主の自宅に住む(住み込み)の必要はない
- NOC 4412のうち、home support workers (自宅でのケア提供)経験のみ対象
- housekeeper (ハウスキーパー)としての経験は対象外
また、永住権申請に必要な就労経験は
- 上記の職種のうち、いずれか1種類のみで申請可能。チャイルドケアとホームサポートを両方経験した場合、その期間の合算はできない
- 経験した仕事がNOC に記載されている main duties (主要業務内容)に沿っている証明が必要
- 24か月の就労経験は、過去36か月以内のものであること
- 24か月間は合計就労期間であり、連続である必要はない
- フルタイムとは、週30時間以上の有給業務のこと
- フルタイム学生期間中に得た就労期間は対象外
ケアギバープログラムの定員
現時点での、こちらのプログラムの定員の上限は何人なのでしょうか?
子どものケアギバー | 2,750人/年 |
---|---|
お年寄りのケアギバー | 2,750人/年 |
合計 | 5,500人/年 |
ちなみにこちらの数字は、今までのケアギバー申請者の平均である「年間4,500人」を元に設定されている人数です。
この定員はもちろん、日本人だけを対象としたものではありません。
世界中の「カナダ移民を狙う人」たちが殺到するのは間違いないので、もしケアギバーとしてのカナダ移住を考えている方はすぐにでもご相談ください。
カナダでの「ケアギバー」を通した永住権申請の流れ
カナダでのケアギバーとしての永住権申請は、次のような流れで進みます。
就労ビザと永住権を同時に申請
まずは、就労ビザと永住権を同時に申請します。
ジョブオファーが正当なものかがまず審査され、問題がなければ就労ビザが発行されます。
就労ビザをもらってケアギバーで働く
就労ビザをもらったら、カナダでケアギバーとして働きます。
24か月以上のフルタイムの職歴が永住権申請に必要ですので、2年間は仕事に専念しましょう。
上で述べたとおり、雇用主を限定しない就労ビザなので、ケアギバーの職種であれば雇用主が変わっても大丈夫です。
さらに、途中に空白の期間があっても、36か月以内に24か月働いていれば問題ありません。
条件の達成を報告
過去36か月以内に24か月の就労条件を満たしたら、カナダ移民省に報告します。
この時点からすでに申請済みの永住権申請の審査が始まります。
カナダでの永住権を取得
報告したケアギバーとしての職歴や、犯罪歴や健康に問題がなければ、永住権が承認されます。
ほかの職種では難関となるポイントシステムでポイントを稼ぐ必要はありません!
まとめ
今回のこのプログラムは5年間の仮の「試験的な(パイロット)プログラム」として発表されているという状態です。
つまりこの「5年間」は保証期間ではなく、「5年は様子を見たい」というカナダ政府の希望です。
非常に簡易化されたプログラムであるため、このプログラムが「カナダ移民を目指す人」にとって人気プログラムになることは間違いありません。
それは日本人だけの話ではなく、ラテン、アフリカ、東南アジア、ヨーロッパ、あらゆる人達にとって魅力的なため申請が殺到するでしょう。
条件を満たすための準備は「今すぐに始める」ことをオススメします。
私は多国籍の移民コンサルタントと共同で仕事をしているため、ケアギバープログラムの現在の状況をリアルタイムで情報提供できます。
詳しくはお問い合わせ下さいませ。