LMIA (Labor Market Impact Assessment)とは?

LMIA
監修者 監修者
村山まりえ

移民コンサルタント。「Immigration Consultant ICCRC R511456」を取得している、カナダで数少ない日本人ビザコンサルタント。韓国系最大手の留学エージェント、国際的教育財団でのマネージメント職を経て現職へ。

カナダで働くために必要な「就労ビザ」。

その「就労ビザ」を取得するために必要な、最大の関門とも言える手続きを「LMIA」と呼びます。

LMIA 審査にクリアしないと、就労ビザをもらうことはできません。

今回はそんな就労ビザ申請の前段階の手続き「LMIA」に関する疑問を専門家が徹底的に解説いたします。

LMIAってなに?

「LMIA」とは「Labor Market Impact Assessment」の頭文字を取ったもので、日本語に訳すとこんな意味になります。

(外国人を雇うことが)雇用市場への悪影響を与えないかの審査

つまり、外国人を雇うことでカナダ人(またはカナダ移民)に悪影響が出ないか?という審査です。

カナダの就労ビザを取るためには、LMIAという審査をクリアする必要があります。

なんでLMIAが必要なの?

実は、外国人を雇うことは国にとってリスクがあります。

なぜなら、仕事の数には上限があるから。

本来、カナダ人が雇用されるはずであった仕事に1人の日本人が就いたとすればどうなるでしょうか?

当然、カナダ人1人分の仕事が1つ減ることを意味します。

日本人を一人雇用するとカナダ人の雇用が1つ減る

カナダ政府は、国民の失業率を上げてまでして外国人を雇うことを嫌うでしょう。

日本人とカナダ人の2人がいて、仮に2人がまったく同じスキルを持っている人材なら、カナダ人を雇うはずですよね?

その日本人を雇うことが、どうしても不可欠だと証明するものが「LMIA」というわけです。

カナダの就労ビザに必要な条件

日本人がカナダで就労ビザを取得するには条件があります。

就労ビザ取得に必要な条件

  1. 適切な職種でジョブオファー(採用通知)をもらっているか?
  2. 雇用主にスポンサーになってもらえるか?
  3. その日本人の雇用が適正かどうか?
  4. 適正な「求人」が行われたか?

上記のうち、特に3と4の部分がLMIAで審査されます。

適切な職種かどうか?

まずは、職種の適切さが問われます。

カナダ政府は、低賃金で低レベル(高い技術を必要としない)の雇用が外国人によって占められることを望んでいません。

それはなぜでしょうか? こちらの理由が挙げられます。

外国人が低レベルな雇用に就けない理由

  • 低賃金の外国人はカナダの経済への貢献が少ないから(厳しく言うと「役に立たない」)
  • カナダ人が社会人になってすぐに就ける雇用として「低レベルの雇用」を取っておきたいから(カナダ人の雇用優先)
  • 外国人が低賃金、劣悪な労働環境でこき使われることがないように配慮しているから

国にとって外国人を安く雇うのはそれなりにリスクがあるということですね。

では、どのような職業が「適切な職種」なのでしょうか?

具体的には、「NOC(全国職業分類: National Occupation Classification)」というものの中で、一定レベル以上の専門性を有する職種である必要があります。

NOCって何?

NOCとはカナダの職業分類のことで、カナダの仕事は全てこのNOCのどれかに当てはまります。

NOCは職種(製造業、サービス業など)と専門性レベルで分類されます。

就労ビザの取得には基本的に専門性レベル「B」以上の職種が該当になります。

専門性レベル「B」とは、平たく言うと、「ヒラ社員のひとつ上」という程度の専門性です。

例えば、レストランのディッシュウォッシャー(皿洗い)は専門性レベルCですが、クック(調理師)になると、専門性レベルBになります。

同じ職場に勤務していても、仕事内容によって専門性のレベルが違うんだね。

就労ビザを取るには、基本的に専門性レベルB以上の職種でジョブオファー(採用通知・雇用契約書)をもらっていることが必要です。

ただし、下記のような場合は専門性レベルC以下の職種でも就労ビザが取れることがあります。

例外

  • 専門性レベルBの上位の職種がない場合
  • 田舎で労働力が不足している場合

「専門性レベルBの上位の職種がない」ってどういう状況?

NOC リストには、カナダの全ての職種が含まれています。

通常、専門性レベルCやそれ以下の職種には、専門性レベルBの上位の職種が存在します。

例えば、同じ「飲食店従業員」でも

・料理を運ぶサーバー業務: レベルC

・在庫や衛生管理、シフト作成、メニュー発案等の管理業務: レベルB

しかし、なぜか時々、上位の職種がない場合があります。

具体的には

  • ネイリスト
  • エステティシャン
  • 介護士

などです。

ネイリスト、エステティシャン等の職種はNOCでは

「6562 Estheticians, electrologists and related occupations」に分類され、

介護士は、

「4412 Home support workers, housekeepers and related occupations」に分類されます。

これらの職種には専門性レベルBに当たる上位の職種がありません。

そのためこれらの職種の場合、本来はレベルCの職種ですが、LMIAを申請して認められることがあるのです。

また、田舎で労働力が不足している場合、専門性レベルがC以下の職種でもLMIA申請が認められることがあります。

 スポンサーはいるか?

次に、スポンサーの有無です。

就労ビザのスポンサーが見つからなくて大変」のように耳にすることもありますが、就労ビザを取るためにはスポンサーが必要なのです。

スポンサーとは?

ここで言う「スポンサー」とは、ジョブオファー(採用通知)を出して、LMIAの手続きをしてくれる雇用主のことを指します。

このスポンサーを見つけるステップが「就労ビザ」を取得する上で、最大の関門だと言えるでしょう。

スポンサーになった雇用主は、LMIA申請費用の$1000を負担し、外国人を雇うことが適正かどうかの審査を受けなければなりません。

その日本人の雇用が適正かどうか?

スポンサーは、その日本人を雇用することが適正なのかどうかを証明する必要があります。

その日本人をわざわざ雇う価値があるのか?という審査です。

本当に能力が高いのか、具体的にどういう仕事をするのか……など様々な要素が検証されます。

具体的には、雇用主が電話でインタビューを受けることになり、その日本人を雇うことの適正さについて確認されます

適正な「求人」が行われたか?

カナダ国内の企業が外国人を雇う場合、カナダ人、カナダ移民に向けた求人を十分に行ったことをスポンサーが証明する必要があります。

その求人により選考をした結果、「どうしてもその外国人を雇うことに至った」ということを、カナダ政府に納得してもらわないといけません。

「本当にまずはカナダ人を雇う努力をしたんですか?どうしてもカナダ人を雇えないから、仕方なく外国人を雇うんですね?」という確認です。

この求人広告を出す媒体、求人の期間、求人広告の内容について、様々な規定があります。

LMIA 審査は複雑で規定が厳しいです。申請の際は、ぜひカナダ留学コンパスにご相談ください。有資格の移民コンサルタントが申請のお手伝いをします。

LMIAの種類

このように、LMIA とは就労ビザを取得するために必要な審査です。

LMIAにはいくつかの種類があります。

  • Low Wage LMIA(低賃金LMIA)
  • High Wage LMIA(高賃金LMIA)
  • Dual Intent LMIA(二つの目的のLMIA)★

この中で、最後のDual Intent LMIA(二つの目的のLMIA)を申請するのが一番おすすめです。

その理由も含め、LMIAの種類を解説します。

Low Wage LMIA(低賃金LMIA)

低賃金LMIA は、ジョブオファー(採用通知)に定められた時給が州の時給中央値を下回る場合に適用されます。

時給中央値とは、州の労働者全員の時給を上から並べた時の、真ん中の人の時給のことです。

ブリティッシュコロンビア州の場合$23.00です。

LMIA申請の上限

低賃金LMIA を申請するには雇用主に対して申請数の上限が課せられます。

雇用主は全従業員数の10%を超える数のLMIA申請をすることができません。

High Wage LMIA(高賃金LMIA)

高賃金LMIA は、ジョブオファー(採用通知)に定められた時給が州の時給中央値を上回る場合に適用されます。

LMIA申請の上限

高賃金LMIAには申請数の上限は定められていません。

Transition Plan(移行計画)

高賃金LMIAを申請する際、雇用主は外国人の雇用から、カナダ人・カナダ移民の雇用へ移行する計画を提出する必要があります。

Dual Intent LMIA(二つの目的のLMIA)

就労ビザと移民申請の両方の目的のために使えるのが、Dual Intent LMIA(二つの目的のLMIA)です。

LMIAは、就労ビザを取るための他に、移民申請でより多くのポイントを得るために使われることもあります。

その時に使えるのが Dual Intent LMIA です。

LMIA申請の上限

二つの目的のLMIAの場合、ジョブオファーの時給の額に関わらず、申請数の上限は適用されません。

Transition Plan(移行計画)

二つの目的のLMIAの場合、ジョブオファーの時給の額に関わらず、移行計画の提出は必要ありません。

二つの目的のLMIAが一番のおすすめである理由がお分かりいただけるのではないでしょうか?

また、二つの目的のLMIAは、取得する就労ビザの有効期間の面でもおすすめです。この点は後で詳しく説明します。

LMIAの申請方法

適正な求人広告を掲示する期間

LMIAの申請をする前に、雇用主はカナダ人、カナダ移民向けに求人広告を出さなければいけません。

この求人広告は、条件を満たす求人媒体を使って掲示する必要があります。

これは「ちゃんとした求人媒体を使って、ちゃんとカナダ人を雇う努力をしましたよ!と」いう証明のためです。

求人広告はLMIAの申請をする前に最低1か月間出す必要があり、さらにLMIAの申請中も継続して広告を続ける必要があります。

LMIA申請

適切な求人広告を出して選考を行った結果、外国人を雇うことを決めた場合、LMIAの申請に進みます。

LMIA申請に必要な書類は、雇用主の業種、業歴、従業員の職種などによって異なります。

こちらは複雑なので、詳しくはカナダ留学コンパスにご相談ください。有資格の移民コンサルタントが申請のお手伝いをします。

LMIAの審査

申請書類の審査がまず行われ、審査に通ると、雇用主への電話インタビューが行われます。

LMIAの申請費用

LMIAの審査費用は$1,000で、雇用主が負担することになっています。

LMIA承認レター

求人広告・申請書類・電話インタビューなどが審査され、適正だと認められると、LMIAの承認レターが届きます。

この承認レターが届いて、やっと就労ビザ申請に進むことができます。

カナダの就労ビザの申請方法

上記のLMIAの手続きを終えて、いよいよ就労ビザの申請に進むことになります。

就労ビザの申請は、こちらの2つのパターンがあります。

就労ビザ申請の2つのパターン

  1. オンラインでの申請が可能な場合
  2. カナダに入国した時に就労ビザが発行される場合(既にカナダにいる場合は、いったんカナダを出て再度入国)

そして、就労ビザ申請費用は$155がかかり、2018年12月31日以降には「バイオメトリクス」という新たな手続きが必要になります。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

カナダ就労ビザに必要な書類

申請に必要な書類も、オンラインで申請するかカナダ入国時に発行してもらうかで異なります。

オンライン申請の場合

オンライン申請の場合は基本的には「LMIAの承認レター」があればオッケーです。

ほかには特に準備するのが難しい書類はありません。

カナダ入国時に発行の場合

カナダ入国時に就労ビザを発行する場合は、審査官にその場で何を要求されるか分かりません。

そのため、多めに書類を持って行った方がいいです。

具体的には、こちらの3つを用意しておきましょう。

用意しておいた方がいい書類

  • LMIA承認レター
  • ジョブオファー(採用通知・雇用契約書)
  • その職種に就く能力があることの証明(資格の証書・学校の卒業証書・履歴書など)

ただし、申請の内容によっては他にも書類が必要な場合がありますので、詳しくは、カナダ留学コンパスにご相談ください。

カナダの就労ビザの申請期間

カナダ就労ビザの申請期間は、申請の方法(オンライン申請かカナダ入国時に発行か)によって異なります。

オンライン申請の場合は2か月程度、カナダ入国時に発行の場合はその場で就労ビザが発行されます。

掛かる費用は同じなので、カナダ入国時に発行の方が基本的にお勧めです。

ですが、入国時に審査官に事情を説明する必要が生じるため、難易度が上がります

申請時点でのビザの状況や英語力によっては、オンライン申請を選んだ方が良いです。

カナダの就労ビザにかかる費用

就労ビザの申請費用$155がかかります。

さらに、先ほども書きましたが、雇用主がLMIA審査費用として$1,000を支払う必要があります。

かなりの金額を雇用主は、本人以上に負担することになるんですね。

カナダの就労ビザの有効期間

申請したLMIAの種類、職種や賃金等によって異なりますが、1年~2年の就労ビザが発行されます。

Low Wage LMIA(低賃金LMIA)の場合

通常、1年間の就労ビザが発行されます。

High Wage LMIA(高賃金LMIA)の場合

最大で2年間の就労ビザが発行されます。

Dual Intent LMIA(二つの目的のLMIA)の場合

最大で2年間の就労ビザが発行されます。

カナダの就労ビザの延長について

就労ビザは延長も可能です。

ただ、申請の方法は延長だから簡単になるということはなく、上記LMIAの手続きから全てをもう一度繰り返す必要があります。

まとめ

就労ビザを取るための前段の手続きとして「LMIA」という複雑な手続きが必要です。

しかし、LMIAは外国人を排除するためではありません。

カナダ人と外国人が共にカナダ経済に貢献できるように整えられた仕組みです。

手続きは複雑ではありますが、決して不可能ではありません。詳しくは、カナダ留学コンパスにご相談ください。

免責

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そのため、こちらのサイトに記載してある情報を元に何らかの判断を行う際には、弊社にご相談いただくか、カナダ移民局のウェブサイト等をきちんとご確認ください。

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執筆者 執筆者
村山まりえ

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