移民コンサルタント。「Immigration Consultant ICCRC R511456」を取得している、カナダで数少ない日本人ビザコンサルタント。韓国系最大手の留学エージェント、国際的教育財団でのマネージメント職を経て現職へ。
30代になり、仕事や結婚など生活が落ち着いてから海外移住を目指す人は少なくありません。
しかし、どうしても年齢がハードルとなり、諦めざるを得ないケースもあります。
そんな中、 今回ご紹介する30代のN・Hさんはうまく留学や移民プログラムを利用し、無事家族でカナダの永住権を取得することができました。
一体どのようにしてカナダ移住を成功させたのでしょうか?
ポイントは
- 留学や職歴・内定を上手に活用
- 最適な移民プログラムに申請する
- 分からないことは専門家へ!
具体例を出しながら、カナダ永住の専門家がその方法を解説します。
このページの目次
カナダ永住権の仕組み
カナダは積極的に移民を受け入れている国として知られています。
その移民プログラムの条件は非常に多様で
- 英語力
- 最終学歴
- 職歴やジョブオファー(内定)の有無
などなど、プログラムによって条件が異なります。
カナダ永住についての概要は「カナダ永住、移民制度についてのまとめ」で解説しているので、まずはそちらをご覧ください。
その中でも今回のケースで重要なのが Express Entry (エクスプレス・エントリー)と呼ばれる永住制度。
エクスプレス・エントリーは年齢や学歴をスコア化することで、効率よく移民申請できるシステムです。
今回のサンプルケースでもエクスプレス・エントリー制度を活用しているので、カナダ移住に興味のある方はぜひその流れを知っておいてください。
カナダ永住の注意点
移民プログラムは頻繁に更新される
カナダは毎年たくさんの移民を受け入れているとはいえ、その制度は決して安定はしておらず、随時条件が更新されています。
条件が厳しくなったり、新しい制度ができたり、以前の制度が廃止されたり。
効率よく、確実にカナダ移住を目指すなら移民制度の最新情報を把握することが大切です。
先輩のケースは当てはまらない
このため、自分より先にカナダに移住した "先輩" たちによる助言が全く役に立たないことがあります。
なので、
知人が○年前に△△という制度を使ってカナダの永住権を取ったらしい!わたしも同じルートで永住権を取りたい!
と思っても、すでにその制度が廃止になっていたり、条件が変わって申請できない…なんていうケースも少なくありません。
せっかく数年かけて準備したのに、申請するタイミングで制度が変わってしまった
というリスクは常にあるということを理解しておいてください。
(最新の情報を把握するためにも、ぜひ専門家に相談してくださいね!)
30代からのカナダ永住
さてここからは、30代から挑戦するカナダ永住権取得をサンプルケースに沿って解説します。
このケースは2019年3月現在の制度に基づいています。
N・Hさん(仮名、38歳)が家族と移住を目指す
N・Hさんは食品メーカーに務める38歳の男性で、家族は同い年の奥さんと5歳の息子です。
N・Hさん夫婦は二人とも海外旅行が大好きで、世界中の色々な国に旅行に行きました。そしてその旅行先の中でも、カナダのことを特に気に入っていて、いつかカナダに移住したいと考えていました。
N・Hさんはいつか英語圏の大学に留学したいという夢がありましたが、就職して結婚、その後子どもが生まれると、留学の夢の実現がどんどん難しくなると感じていました。
しかし、それでも留学を諦められないN・Hさん。
息子が5歳になったのをきっかけに、カナダ留学にチャレンジすることを決意!
「カレッジに2年間通えれば、その間息子は無料でカナダの公立小学校に通える。カレッジ卒業後、カナダに永住してカナダで息子を育てたい!」
と、奥さんを見事説得。
会社を辞めて、カナダのカレッジに通うことにしました。
N・Hさんプロフィール(カナダ渡航前)
- 年齢(38歳)
- 学歴:4年制大学卒(日本)
- 職歴:食品メーカー営業、15年間(日本)
- 英語力:TOEIC930点
- 家族:妻(38歳)、息子(5歳)
- カナダ滞在歴:なし
専門家はパブリック・カレッジの大卒者向けプログラム入学をおすすめ!
N・Hさんの夢は、実現不可能な無謀なものなのでしょうか?
まずは、専門家の意見を聞いてみましょう!
30代、大卒で職歴あり。
永住を視野に入れているN・Hさんにおすすめの学科は、大学卒業した人に入学資格のある公立カレッジのPost Graduation Diplomaプログラムです。
Post Graduation Diploma (ポスト・グラジュエーション・ジプロマ)プログラムでは学士と修士の中間の学位が取得できます。
4年制大学を既に卒業した人が入学可能なおすすめのプログラムです。
入学の条件はIELTS6.5以上ととても高いハードルなのですが、コツコツと勉強することが好きなN・Hさんは日本でIELTSを受験して見事この条件をクリア。
カレッジの Post Graduation Diploma に入学しました。
家族3人3様に充実した留学生活
N・Hさんのカレッジ生活
カレッジ生活は勉強は大変でしたが、N・Hさんクラスメートに恵まれ、充実した日々を送りました。
N・Hさんは大卒者向けプログラムに在籍しているので、クラスメートも社会人経験のある成熟した大人が多く、とても良い刺激を受けました。
また、N・Hさんのカレッジには Work Experience Term(職場経験期間)という授業がありました。
Work Experience Term とは、1学期間(4か月間)フルタイムで働けるコープ(Co-op)に近いもので、在学中に仕事を経験できる期間のことです。
カレッジのCo-opオフィスからのアドバイスを受け、N・Hさんはカレッジ在籍中に日本の食材を扱う食品の商社で働くことができました。
この商社はN・Hさんを高く評価してくれて、Work Experience Term 終了後もパートタイムで働かせてくれたうえ、カレッジ卒業後はフルタイムのジョブオファーを出してくれると言ってくれました。
奥さんは就労ビザを取って働きました
N・Hさんの奥さんは配偶者就労ビザを取得して、オーガニック専門のスーパーでパートタイムで働いています。
職場にはフィリピン、メキシコなどから来た同年代のママが多く、子育ての相談ができてとても心強かったです。
息子さんはカナダの小学校でのびのび勉強
息子さんは小学校のキンダーの学年に入学しました。
最初は英語ができずに大変でしたが、3か月ほどで慣れ、学校が楽しくなりました。
地域のサッカーチームにも入って、学校以外の友達がたくさんできました。
今では、「ぼくの英語はパパより上手だよ!」と豪語しています。
いよいよ永住権にチャレンジ!
家族3人がそれぞれに充実した日々を過ごし、N・Hさんは無事公立カレッジを卒業。
卒業と同時にポスグラビザを取得し、カレッジ在学中にWork Experience Termで働いた食品の商社でフルタイムで就職しました。
カナダの学歴と仕事の内定を手に入れたN・Hさん。
次はいよいよカナダ永住権申請にチャレンジです。
この時点でのN・Hさんのプロフィールは以下のとおり。
N・Hさんプロフィール(永住権申請時点)
- 申請者:N・Hさん(40歳)
扶養家族:奥さん(40歳)、息子(7歳) - 学歴:4年制大学卒(日本)
:Post Graduation Diploma卒業(カナダ) - 職歴:食品メーカー営業、15年間(日本)
- カナダのジョブオファー 食品商社事務(Administrative Officer, NOC1221, 時給$23.50, 週35時間勤務)
配偶者のジョブオファー オーガニックスーパー店員(Food Counter Server, 時給$13.00, 週20時間勤務) - 英語力:CLB7(CELPIP全バンド7)
配偶者の英語力:CLB5(CELPIP全バンド5) - カナダ滞在歴:2年間
どのプログラムで申請?専門家の意見は?
この段階で、はたしてN・Hさんのカナダ移住は現実的なのでしょうか?
英語力、カナダの職歴、カナダのジョブオファーがあるN・Hさんにはエクスプレス・エントリーの Federal Skilled Worker プログラムがおすすめ!
エクスプレス・エントリーの Federal Skilled Worker (FWS、フェデラル・スキルド・ワーカー)は学歴や英語力がある人におすすめのプログラム。
この制度を使えば、カレッジ卒業直後に永住権申請できます。
フェデラル・スキルド・ワーカーに申請するために必要なスコアは470点前後。
N・Hさんは470点に届くのでしょうか?
エクスプレス・エントリーのポイント計算
N・Hさんのポイント計算
- 年齢 45点
- 学歴 119点(3年以上の学位とカレッジディプロマ)
配偶者学歴 8点 - カナダの学歴 15点
- 英語力 64点
配偶者の英語力 4点 - 英語力と学歴による加点 25点
- 英語力と日本の職歴による加点 25点(主任に昇格して以降の8年間が対象)
合計 305点
305点、全然足りないです。
年齢でもらえるポイントが少ないことが、N・Hさんのポイントが伸びなかった原因の一つ。
残念ながら、N・Hさんはエクスプレス・エントリー単体でITAがもらえるポイントを稼ぐことは難しいようです。
途方に暮れるN・Hさん。
そこで、専門家に相談しました。
大丈夫!実は、カナダの永住には移民プログラムの合わせ技が使えるんですよ!
カナダ留学コンパスの有資格の移民コンサルタントが次の手を考えました。
BCPNPとの合わせ技!
カナダの移民制度には、州が独自に行っているプログラムがあります。
それをPNP(Provincial Nominee Program、州政府推薦プログラム)と呼びます。
詳しくは「PNPって?州から移民推薦状をもらって永住権を取得しよう」で詳しく解説していますが、簡単にいうと州が「この人はカナダに必要な人材です!永住権をあげてください!」と推薦してくれる制度のこと。
例えば、プリティッシュコロンビア州のPNP (BCPNP)には、International Graduate(インターナショナル・グラデュエート)という独自のプログラムがあります。
BCPNP International Graduate の申請条件はこちら。
BCPNP International Graduate 申請条件
- エクスプレス・エントリーの申請条件を満たすこと
- カナダの公立カレッジ、大学でCertificate以上の学位を取得していること
- カナダの公立カレッジ、大学を卒業後3年以内に申請すること
- NOCレベルB(専門職レベル)以上の、フルタイム、無期限、のジョブオファーを得ていること
この他にも細かい条件がありますが、主な条件は上記のとおりです。
N・Hさんはこの BCPNP International Graduate の条件を満たしているので、BC州の推薦(ノミネーション)をもらうことができます。
この推薦状があると、なんとポイントシステムで追加の+600点!!
フェデラル・スキルド・ワーカー申請に必要なポイントが470点程度なので、600点が加算されたら、一気に合格に近づきます!
BCPNP International Graduate 推薦はもらえる?
とはいえ、BCPNP International Graduate の申請に必要な最低条件を満たしても、本当にBC州の推薦がもらえなければ意味がありません。
BCPNP International Graduate 自体は200点満点のポイントシステムで、95点程度の得点が取れれば、申請のための招待状がもらえます。
では早速、BCPNP International GraduateでN・Hさんのポイントを計算してみましょう。
N・Hさんのポイント計算(BCPNP IG)
- ジョブオファー 30点
- 見込み世帯年収 21点(見込み年収$56,290)
- 過去の職歴(日本) 15点
- 学歴 19点
- 英語力 18点
合計 103点
103点、十分見込みあります!
過去半年程度のBCPNP International Graduate 申請許可の最低点の推移を見ると、103点あれば、ほぼ確実に申請できます。
N・Hさんの場合、
- N・Hさんのジョブオファーの給与が高い
- 奥さんも働く予定で世帯の見込み年収が高い
- 日本でのオフィスワーク経験をカナダでのジョブオファーに直接関連する就労経験としてカウントできた
- カナダでPost Graduate Diplomaのプログラムを卒業、カナダの学歴を最高学歴としてカウントできた
この条件が重なり、ポイント伸ばすことができたのです。
BCPNPは年齢がポイントの対象にならないので、30歳を過ぎてからのカナダ永住権チャレンジの心強い味方です。
あとは慎重に手続きを進めるだけ!
あとは英語力、職歴などを裏付ける資料を添付して、BCPNPに申請をします。
資料に誤りや不足がなければ、3か月程度でBC州の推薦状(ノミネーション)を受けることができます。
BC州のノミネーションを受けると、エクスプレス・エントリーのポイントに600点が加算され、エクスプレス・エントリー申請に有利になります。
その後はフェデラル・スキルド・ワーカーに申請し、ノミネーションや必要書類を提出します。
また、このタイミングで、カナダ政府指定の健康診断を受けたり、日本と過去に6か月以上滞在した国の無犯罪証明等を揃える必要があります。
エクスプレス・エントリーのITA(申請の許可)を受け取ってから申請を完了するまでに60日間しか時間がありませんので、必要書類の準備を前もってしておきましょう。
必要書類や提出期限などは「カナダ永住方法:エクスプレス・エントリーとは?」も参考にしてください。
永住権の申請が完了したら、申請に誤りや不備がなければ6か月程度で承認され、永住権が取得できます。
こうして、N・Hさんと家族は念願のカナダに移住することができたのです。
30代からのカナダ永住:まとめ
最後に、N・Hさんがどのようにしてカナダ永住権にたどり着けたのかをまとめます。
N・Hさんの強み
- 日本でのNOCレベルB(専門職)相当の就労経験があった
- 日本の就労経験に直結する職種のジョブオファーを得られた
- 自分と配偶者両方が英語力でポイントを稼げた
- 自分と配偶者両方が働いて見込み年収でポイントを稼げた
- 最高学歴となる大卒者向けプログラムで公立カレッジに留学した
30歳を過ぎてからの永住権取得は、年齢でポイントが稼げない分、他の要素でポイントを稼がないといけません。
ポイントを稼げる要素は、学歴、職歴、英語力です。
そのためには、その人に適した留学プランや家族の状況を考慮し、最適な移民プログラムを活用する必要があります。
事前にしっかりとプランを立てて、そのプランを確実に遂行すれば、カナダ永住権取得も夢ではありません!
まずはカナダ留学コンパスの無料相談をご利用ください。
あなたの条件を細かく考慮し、永住権取得に向けた最適なプランを提示します。
カナダ留学コンパスといっしょに、永住権をぜひとも勝ち取りましょう!
免責
ビザ申請、永住権申請の手続きや規定、ルールはカナダ移民局が予告なく頻繁に変更しています。
そのため、こちらのサイトに記載してある情報を元に何らかの判断を行う際には、弊社にご相談いただくか、カナダ移民局のウェブサイト等をきちんとご確認ください。
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カナダに入国するためにはビザが必要だよ! こちらの記事も参考にね。