カナダで、Web開発者やデザイナーとして働きたいという人は多いです。
そして、そんな目標を持つ人の間では、カナダへのIT留学が注目されています。
でも、「未経験」の状態でも挑戦できるのか? 日本での関連学位や職歴がなくても問題ないのか?という疑問をお持ちではないでしょうか?
そこで今回は、カナダIT留学で未経験からコープ留学でWeb開発者を目指し、その道を諦めたというMEZさんにインタビューを行いました。
この手のインタビューでは「就職や永住権取得に成功した人の声」が取り上げられがちですが、現実にはMEZさんのように惜しくも目標を達成できない人もいます。
MEZさんには、IT留学の苦悩やどんなことに失敗したかについて体験談をうかがってきました。同じキャリアを目指す人は、ぜひ参考にしてくださいね。
※ 対談は2023年10月に行われたものです。
カナダ留学コンサルタント、RCA 海外留学アドバイザー No.162002
カナダ在住20年以上のカナダ留学専門家。カナダ留学情報を発信するTwitterアカウントはカナダ以外も含む留学ジャンルでフォロワー数1位(1万人以上)、月間最大インプレッションは400万を超える。現在までサポートしてきた生徒数は1万人以上。
海外在住ライター
カナダ在住30代ライター&30代から留学しWeb Dev諦めた人。留学や仕事に関するBlog運営。26歳位の人生に悩む女性を応援するため、自分がキャリアや留学で迷走した経験を発信中。
きっかけはX(旧ツイッター)の投稿
末永
そもそもMEZさんをお呼びしたのはX(旧ツイッター)での投稿がきっかけでしたね。
MEZ
はい。末永さんが未経験でIT留学を考えている方からの質問に回答されていたのを見つけまして。
その方は「知識や職歴がないけれど、IT留学に興味がありカナダで就職したい。でも難易度がどれくらいかわからない」というお話をされてました。
それを見て「この方は昔の私みたい! 何か伝えたい!」と思い、末永さんのポストを引用する形で以下のようにつぶやいたんです(ツイートURLはこちら)。
末永
それで、私がMEZさんの書かれた体験談の記事を拝見し、インタビューでもっとお話を伺いたいなと思ったんです。
こういった失敗談を公開されている方はめずらしく、これから留学される方なら詳しく知りたいお話でしょうから。
MEZ
お話をいただいたときは本当にびっくりしました(笑)。同時に、とてもありがたいオファーをいただけてうれしかったです。
おっしゃるように、私みたいな体験談ってあまり話したがる方はいないけれど、割と起こりうることなので。
私は一度、カナダの公立カレッジを退学していますが、クラスメイトでも途中で退学してしまった方は何人かいます。
でもそういった現実は、留学前にはなかなか見えない部分なんですよね。
だから我々と同じように、卒業や就職ができずに後悔する人を減らしたいなって思っています。
末永
おっしゃるように、IT留学やコープ留学で残念ながら途中退学されたり、就職をせずに帰国される方がいらっしゃるのは事実です。
ですので、ぜひ今日はその体験を詳しくお話してもらい、他の留学生へメッセージを届けていただければと思います。
MEZさんの日本での経歴とカナダ・コープIT留学のきっかけ
末永
はじめに、MEZさんの日本でのご経歴や留学のきっかけをお聞かせ願えますか?
日本での経歴
MEZ
日本ではいくつか職歴があるのですが、直近では大学に4年間勤務しており、留学関係の部署にいました。職種的には事務系ですね。
末永
そうでしたか。IT系の業務はされていたんですか?
MEZ
していません。WordPressを使ったホームページの更新作業をしたことはありますが、テキストを書き換える程度で更新にコーディングの知識は不要でしたし。
なので、プログラミングに関しては勉強どころか、ちょっとした業務でも体験したことがないです。
末永
本当にプログラム関係の経験がゼロだったんですね!
MEZ
はい。大学で所属していたのはコンピューターサイエンスや情報処理系の学部ではありませんでしたから。
そもそも学生時代は公務員を目指していて、Web開発者という職業すら知りませんでした(笑)。
IT留学のきっかけ
末永
なるほど。でもそこからWeb開発者を目指してカナダに留学することになったわけですよね。
そのあたりの経緯を教えていただけますか?
MEZ
もともと海外で暮らしてみたいという漠然とした憧れがありました。
短期じゃ海外の「暮らし」はわからないから、長期で行きたいなと。
それで留学できる機会を伺っていたのですが、気づいたら30代になっていて。
末永
なぜカナダにされたんですか?
MEZ
カナダだと、Co-opビザやセカンドワーホリ(ROワーホリ)など、30代になってからも長期滞在できるオプションがあると知って。
むしろ他の国にはそういうオプションがないから、カナダしかないと思って選びました。
末永
Web開発者になろうと思った理由はなんですか?
MEZ
正直なところ、Web開発者になりたいという確固たる理由はありませんでした。
まず、カナダに長期滞在したいという思いがあり、かつリモートで場所を選ばず働ける仕事を探していました。
その中で見つけたのがWeb開発者という道ですね。
特にバンクーバーには、IT系のスタートアップが多く、未経験でも比較的挑戦しやすいと聞いていたので。
Web開発者を目指すと決めてからは、独学でHTML/CSS/JavaScriptの勉強を始めました。
MEZさんのカナダ・コープIT留学生活
末永
それでは、カナダに来てからのIT留学生活についても教えていただけますか?
MEZさんのカナダIT留学のあゆみ
MEZ
まず、以下のような流れで留学しました。
表にもあるとおり、2つのカレッジに通いました。
1つめは公立カレッジのダグラスカレッジ。2つめが現在通っている私立のコーナーストーンカレッジ(CICCC)です。
末永
なんと、2校も通われたんですね!
ダグラスカレッジについて
末永
まずダグラスカレッジのお話からお伺いしましょうか。
最初はオンラインで学ばれていたというのは、コロナ禍の影響ですか?
MEZ
そうです。当時は渡航のタイミングが難しい時期で、最初の学期(2021年5月〜8月)は、日本からオンラインで受講し、2学期目(2021年9月〜)は現地で対面授業に参加する予定でした。
末永
しかし、渡航されてすぐ(2021年9月)にダグラスカレッジを退学されたんですね。
それはなぜですか?
MEZ
はい。理由は2つあります。
1つはカレッジの授業が予想以上に大変だったこと。
大学で留学関係の部署にいたのもあり、なんとなく海外大学の授業のつらさは理解していたつもりでした。
しかし、実際に体験してみると想像以上で。
日本でオンライン授業を受けていたため、時差のせいで朝1時くらいから授業を受けていたのもありますが。
毎週のように小テストがあるし、それぞれ成績も維持しないと単位を落とすので、授業を受けていない時間も部屋から一歩も出ずに勉強や課題に追われていました。
1回の講義でテキスト50ページ分くらい進むので予習も欠かせません。
それでも結局ひとつ単位を落としちゃって、再履修になりました。
再履修は無料じゃないので、追加で650ドルくらい支払って......。
末永
それは大変でしたね。
1日のほとんどの時間を勉強に費やしたにも関わらず、単位を落としてしまうなんて。
私もSEの経験があるので、最初がとにかく大変というのはよくわかります。
MEZ
「大変」という言葉では語り尽くせないほど大変でした。
それからもう1つは学費の問題もありましたね。
予算ギリギリで留学したので、空き時間にアルバイトしないと学費が払い続けられない状況だったんです。
しかし、先にいったとおり授業以外はすべて勉強にあてないと単位を落としてしまう。
だから「もう無理だな、退学するしかないな」という結論に至りました。
末永
たしかに、MEZさんのように予算ギリギリで留学しようとされる方はいらっしゃいますね。
留学前にエージェントなどを利用しご相談されなかったのですか?
MEZ
留学エージェントは利用していました。カナダ留学コンパスさんではないのですが。
ただ、あまりじっくり相談はしませんでしたね。
「Web開発者を目指していて、公立カレッジでプログラミングを学びたい……」的な感じでご連絡したら、候補のカレッジをいくつかご紹介いただき、そこからダグラスカレッジを選びました。
エージェント側からも深く質問されるわけではなく、淡々と学校が決まっていった感じです。
コーナーストーンカレッジ(CICCC)について
末永
なるほど。そしてダグラスカレッジは退学し、次にコーナーストーンカレッジを見つけられたんですね。
そちらについても利用していたエージェントには相談したのですか?
MEZ
しましたね。といっても、カレッジを退学する手続きをお願いしたのと、次に私の残りの予算で行けるカレッジはあるか問い合わせた程度ですが。
そこでコーナーストーンにもWeb開発を学べるコースがあると聞き、ちょうど同年の11月から入学が可能と聞いたので手続きしました。
末永
コーナーストーンの授業や、通ったご感想はいかがでしたか?
MEZ
授業内容はよかったですね。フロントエンドエンジニアになる、基礎的な知識がカバーされた内容で初心者でも抵抗なく学べます。
私が通っていたのはWeb and Mobile App Development(WMAD)というコースだったのですが、先生方は現役のエンジニアやデザイナーの方で、熱心に教えてくださいました。
クラスメイトもモチベーションが高い人が多かったので、一緒に切磋琢磨して学んでいましたよ。
ただし、座学(1年間)だけで就職できるレベルになるかというと、厳しいですね。独学は必須です。
末永
現地就職やインターンシップのサポートについてはいかがでしたか?
MEZ
特別に手厚い印象はないです。就職やボランティア情報を流してくれるSlackチャンネルはありますが、それでもみんな応募するから倍率は高いですし。
どちらにしても、学校のサポートを受け身で待っていても何も起こらないので、ミートアップに参加したり人脈を広げるなど自分からもアクションを起こさないと就職は難しいです。
座学終了後について
末永
そこからWeb開発者としての就職を諦めるに至った理由も教えていただけますか?
MEZ
現在はまだCo-op期間(インターンシップ期間)なのですが、簡単にいうと永住権を取るという目的だけのためにこのキャリアを歩むのがつらくなったからです。
Co-op期間に、カナダ現地でWeb開発のボランティアをしたり、日本のフリーランスの仕事を請け負い、実際に働いてみた後に出した結論です。
働いた期間が短いので、人によっては「もっと粘れば?」って思うかもしれないですが(笑)、決断に後悔はないです。
キャリアを諦めるに至った気持ちの流れや、Web開発者として実際に働いてみた感想は私のnoteにかなり詳しくまとめたので、気になる方はぜひそちらも読んでみてください。
詳しくはこちら
末永
現在は何をされているのでしょう?
MEZ
これまでの職歴を活かした仕事をしています。
30代ですが、ROワーホリビザも取ったのでしばらくカナダにはいられます。
カナダで暮らすこと自体は好きなので、こういった失敗談や経験談を発信しながら、これから留学に挑戦する方をサポートして行きたいとも考えています!
カナダ・コープIT留学で失敗した原因は?
末永
MEZさんは「カナダIT留学での失敗談」ということでnoteなどの発信活動をされていますが、具体的にはどのあたりが失敗だったと考えますか?
【カナダIT留学での失敗①】学校選び
MEZ
やっぱり学校選びですね。
早く渡航したいという思いに気を取られて、エージェントから渡されたリストからすぐ行ける学校を選んでしまいました。
末永
たしかに、本来であれば渡航前にじっくりとカウンセリングを受けられるとよかったですよね。
ちなみに弊社であれば、お客様に言われたとおりの学校をマニュアルどおりに紹介することはないです。
カウンセリングで留学の動機や目的などをじっくりお聞きしています。
MEZ
留学の動機や目的をじっくりとですか……。
残念ながら私が利用したエージェントでは、そこまで深いカウンセリングはなかったです。
末永
実際のところ、お客様ご本人すら留学の動機や目的があいまいだったりするんですよ。
そこを間違って認識していると、ご本人に合わない学校を紹介してしまうことになりかねません。
MEZさんのご体験の場合、まさにそれが本当に起こってしまったんでしょうね……。
MEZ
そのとおりだと思います。
まったく経験のない私が、軽い気持ちでITのカレッジに行きたいと言っていたのですから。
ただ、これだけは誤解してもらいたくないのですが、ダグラスカレッジがダメだったという訳ではないです。
カレッジによってカリキュラムは結構違うし、授業の難易度も変わるらしいので、「ITの素人には難しい」という事実を知っていれば違う選択が取れたのかもな……という話で。
【カナダIT留学での失敗②】予算・計画が甘かった
MEZ
それから予算・計画が甘かったのも、IT留学での失敗です。
とにかく予算ギリギリで留学するのは危険だと思いました。
お金がないと、勉強どころじゃないんですよ。当たり前ですけど。
ストレスもすごいし、食費も節約するから健康にも悪いし。
末永
現地に着いてから、すぐアルバイト先が見つかるとも限りませんしね。
予算には余裕を持ったほうがいいです。
MEZ
あとは計画の甘さですね。特に学習計画。
先ほどもいったように、とにかく早く渡航したくて、自分の語学力で入れる学校を選んでしまいました。
よくよく考えると、もうIELTSを勉強したくなくて、なら今のスコアで行ける学校でいいかと思ってしまったんですよね。
けっきょく現地についてから困るのは自分なので、しっかり学習計画を立てて、時間がかかっても英語の学習を継続させればよかったです。
【カナダIT留学での失敗③】留学エージェントの使い方
MEZ
それから、留学エージェントの使い方も失敗の原因だったと思います。
私は留学エージェントを使っていましたが、十分に相談しきれていませんでした。
自分であらかた計画を決めていて、留学エージェントには「この通りに進むように手配してください」って手配のみお願いした感じ。
学校はどこも同じだろうと思っていたし、留学エージェントは単に手続きを代行してくれる場所っていう認識だったんですよね。
でも末永さんのお話を聞いて、コンパスさんのようなカウンセリング重視の留学エージェントもあると知りました。
もっと賢い利用方法があったんだろうなと後悔していますね。
末永
そうですよね。早く出会っていればよかった……。
「学校はどこも同じだろうと思っていた」というお話ですけど、実際はそうではないんですよ。
本来は、現地エージェントならそういったリアルな現地情報は持っているべきですし、そういう情報こそお客様に積極的にシェアして差し上げるんですけどね。
MEZ
本当にもっと早くコンパスさんを知りたかったです!
X(旧ツイッター)でも、あんなに真摯に発信されている留学エージェントはないと思いますし。
もう一度カナダIT留学をやり直すなら?
末永
MEZさんは「もう一度留学をやり直すなら、こうする!」というプランはありますか?
MEZ
もちろんあります! 何度も後悔と妄想を繰り返してました(笑)。
もう一度やり直せるなら、こういうプランで留学したいです。
MEZさん案:留学やり直しプラン
- 関連職種でアルバイトして貯金→職歴を作り1〜2年後カナダに渡航
- 現地のことを熟知する留学エージェントに早期から相談
- 英語の学習も早期からスタート
末永
これは、未経験でIT留学をする方全員に知ってほしいプランですね。
MEZ
本当にメガホンを持って皆さんに叫びたいです(笑)。
未経験でIT留学したいと思っている人は、まず日本で1年か2年、職歴を作ってから渡航してください。
「今すぐカナダに行きたい」と思っているわけではないなら特に。
正社員になるのは日本でも難しいと思うのでまずはアルバイトで。
若い方で、ある程度独学で勉強した後なら仕事は見つかりやすくなります。
末永
そもそも、基本知識がゼロの状態なのに、カナダでそれを英語で学ぶなんてハードルが高すぎますからね。
MEZ
おっしゃるとおりです。
カナダからフリーランスで日本のWeb開発の仕事をしてる友達は多いですが、フリーランスはある程度全体の仕事の流れを知っている前提で進むので未経験だとハードすぎます。
リモート仕事も増えてはいますし見つかりはしますけど、経験が浅いうちは日本で通勤できる仕事を探した方が圧倒的にラクですよ。
末永
カナダでは即戦力が求められますからね。
MEZ
いくらカレッジで実践的に学んでも、職歴がなければ見向きもされない......みたいなことがありますしね。
とはいえこれは私の一例なので、正解はないんですけど。
その時期のカナダでの就職難易度、その人のキャラクターや学習意欲、留学のゴールにもよると思うので、ぜひ一度現地のことをよく知る留学エージェントに相談してほしいです。
これからカナダIT留学する人へメッセージ
末永
最後に、これから未経験でIT留学する人へメッセージをお願いします。
MEZ
「なんとなく永住権が取りやすそうだから」という条件のみでこの仕事を選ぶのはやめた方がいいです。
海外でWeb開発者になるまでは相当な勉強が必要ですし、なってからもしばらくはずっと勉強です。
実際の仕事内容をできれば経験者に聞いて、自分が本当にキャリアチェンジができそうか考えてください。先ほどいったように、できれば実際に日本で働いてから。
それから、早い段階で留学エージェントにも相談してみることですね。
エージェントもたくさんありますが、私の経験上、現地のエージェントのほうが新しい情報を持っているのでそちらがオススメです。
留学するのも、決断するのも、責任を持つのも自分自身ですが、いいエージェントに出会えれば、強力なサポーターになると思います。
留学もキャリアチェンジも決して簡単なものではありませんが、諦めずに挑戦を続ければ最終的にはご自身の納得のいく道が見つかると思います。
実際に未経験でエンジニアやデザイナーとして海外就職している人はいるわけですし。今回は失敗例ってことで話してますけど希望はあるんです。
どうか、あなたらしさを忘れずに頑張ってくださいね!
カナダに入国するためにはビザが必要だよ! こちらの記事も参考にね。