カナダ留学コンサルタント、RCA 海外留学アドバイザー No.162002
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カナダに留学したら全体に必要な「タックス・リターン(Tax Return)」。
タックス・リターンとは、日本でいうところの確定申告。
全員が対象ではない日本と違い、カナダのタックス・リターンはカナダ居住者の義務です。カナダで働く・働かないにかかわらず、全員が申告しなければなりません。
ですが、日本の確定申告もやったことがなく、「いまいち仕組みがわからない......」と不安に思っている人が多いのでは?
そこで今回は、タックス・リターンとは何か・どうやって手続きをすればよいのかを解説します。
このページの目次
カナダのインカム・タックス・リターンとは
カナダのタックス・リターンとは、日本でいうところの確定申告です。申告をすることで、払い過ぎた税金が戻ってきたり、学費を控除することができます。
注意してほしいのが、カナダに居住した人は全員タックス・リターンをしなければいけない点。収入の有無やビザの種類は関係ありません。※対象者については後程詳しく説明します
また、コロナ禍の失業手当のような、政府からの臨時還付金があった場合も、タックス・リターンをしていなければ補助の対象になりません。
留学生は何らかの形で還付金があることが多いので、自分のためにも、タックス・リターンは必ず行いましょう。
タックス・リターンの種類
タックス・リターンには主に次の2種類があります。
- Income Tax Return:所得税の申告
- GST/HST Return:消費税の申告・控除
インカム・タックス・リターンとは
インカム・タックス・リターン(Income Tax Return)は、日本でいうところの所得税の確定申告の手続き。収入がなかった場合も、「無収入であった旨」を申告する必要があります。
さて、カナダで企業に所属して働いた場合は、日本と同じように、「税金」がお給料から天引きされます。
しかし、この「前もって引かれる税金」の金額は、正確な税額ではありません。
毎月お給料から引かれている税金は、実は会社が想定した税額で、正確な金額は一年の総収入が確定するまではっきりしないのです(少し多めに税額を計算している場合が多いです)。
そこで、一年の総収入が決まった頃(年度が変わる頃)に、給料から引かれた税金と、本来払うべき税金の差額調整を行います。
この税額の差額調整を行う手続きがインカム・タックス・リターンです。
インカム・タックス・リターンをすると、
- 税金を多く払っていた場合: 差額が政府から返金される
- 税金を少なく払っていた場合: 追加で支払う
という形で差額が調整されます。
GST/HST リターンとは
GST/HST とは、消費税のことです。たいていの場合、インカム・タックス・リターンと同時に申告できます。
その年度の収入やステータスに応じて、所定の額が還元されます。留学生は低収入に分類されることが多く、消費税が還付されるケースが多いですよ。
カナダのタックス・リターンの基礎知識
カナダのタックスリターンの基礎知識として、以下のことを説明します。
申告事項と条件
申告事項と条件は以下のとおりです。
対象者
タックス・リターンの対象者は「カナダの全ての居住者」です。
さらに、「居住ステータス」により申請項目や方法が異なります。その年の区分に従って申請をしましょう。
※観光ビザ・学生ビザ・ワーホリビザなど、ビザの種類は関係ありません
※カナダで収入を得ていない場合も、その旨を申告する必要があります
申告年度
1月1日~12月31日を1年とみなします。
例)2016年4月~2017年3月まで1年間カナダに滞在する場合:
- 2016年4月~2016年12月
- 2017年1月~2017年3月
までの2年分の申請が必要になります。
手続き先
カナダ税務局 (Canada Revenue Agency: CRA)
申告期限
申告期限は毎年4月末日まで。期限を過ぎても申告は可能です。
ただし税金を納めることになった場合は、4月末をすぎると延滞利子が発生する恐れがあるので、期日は守るのが無難でしょう。
※一般的に、4月末ギリギリで申し込みする人が非常に多いため、手続きが遅くなるほど還付(納め過ぎていた場合の返金)が遅くなります。早めの手続きをオススメします。
申告・控除対象
タックス・リターンで申告するのは主に以下この項目です。
- 収入(会社に雇われている場合は雇用主からのT4)
- その他すべての収入(自営業や副収入など)
- カナダ国外に保有する資産(年度内に一度でも保有額が$100,000(約1千万円)を超えた場合)
- 無収入の場合はその旨を申告
また、次のような項目を控除できる可能性があります。
- 学費(政府指定の公立・私立大学)
- 家賃(領収書が必要)
- 薬代など医療費
- 寄付金
- 定期券代
控除には領収証が必要です。必ず取っておきましょう。
返金時期
申告してから数週間〜2か月程度で返金されます。
ワーホリや学生のように、アルバイトが中心で収入が多くない人は、返金を受けるケースが殆どです。
還付額は多ければ、数百ドルから千ドル近くになる人もいます。
※返金を受けられる場合、申請してから約4週間~6週間ほどで返金小切手が指定の住所に郵送されます(申請をした時の住所宛)。また、小切手ではなく、カナダの銀行口座に返金を依頼することもできます。
その他、低所得者、未収入者には、GST(連邦消費税)とPST(州消費税)の一部還付がありますので、学校に通っていただけで全く働いていない学生にもお金が戻ってきます。
提出書類
次に、提出しなければいけない書類をチェックしましょう。
T1 General
T1 General とは、タックスリターンの申告フォームです。
これに必要項目を入力して郵送します。
1月末頃から郵便局や税務署、ドラッグストア(郵便局の出張所がある店)などで配布されます。
T4=源泉徴収票
T4とは、前年度に働いた会社から受け取る源泉徴収票です。
年が明けると、会社は前年度に働いていた人(たとえ短期であっても)の収入総額や天引き(源泉徴収)した内容をまとめた書類を用意する義務があります。
この書類がT4です。
カナダで就労した方は、勤務先に必ず請求をしましょう(業務委託などの場合、自営業とみなされT4が出ない場合もあります。こちらも契約時に確認してください)。
T4 をもらわなかったら?
毎年1月〜2月末日までに、企業は昨年度に働いた全従業員のT4を計算して、必ず政府に提出します。
2月が過ぎてもT4が手元に届かない場合は、単に会社があなたに渡してないだけと思われます。
忘れずに確認しましょう。
※期限内に提出しないと会社はペナルティが課せられるので、必ず入手できるはずです!
その他追加書類
その他の追加書類については州によって異なります。
一般的に
- SINナンバー(お持ちの方)
- 交通費
- 医療費
- 引越し費用
- 学費(政府指定の公立校のみ、大学やカレッジ)
- 家賃(オンタリオ州の場合)
などの証明書類(レシートなど)も添付すると、返金額が増える事があります。
現住所以外(日本も含む)へ郵送をしてもらう場合は、その申告用紙として T1132も必要です。
返金を振込にて受け取る場合は、カナダの銀行口座が必要です。
なお、通常ESLの学費は対象外ですが、大学・専門学校等のPost-Secondary Programの学費は控除対象となります。T2202Aという書類を学校から受け取り提出してください。
申請手順
タックス・リターンの大まかな申請手順はこちら:
- T4などの必要書類を入手
- 申請フォームに必要事項を記入
- 追加書類などがあれば添付
- カナダ税務局(CRA)にオンライン申請または郵送
これで手続きは終了です。
タックス・リターンの郵送での申請の流れ
では、タックス・リターンの郵送での申請の流れを細かくみていきましょう。
また、申請後はどのようにして通知が来るのかも説明します。
① 申請書類の収集
まずは
- T4(源泉徴収票)
- T1 General (申請書キット & ガイド)
の2つを入手します。
T4 は、前年度(1月1日~12月31日)にカナダで働いた場合、会社から送られてきます。これは2月末日までにもらえます。
T1 General は1月終わりごろから郵便局か税務局で配布されるので、入手しておきましょう。
② 申請書の作成→申請(2~4月)
T1 General (申請書キット)には多くの種類の用紙が入っていますが、その中の該当する用紙に記入しましょう。
T4などの提出書類とともに4月末日までに申請します。
T4などの提出書類は、一般に2段になっています:
- 1段 → 提出用
- 2段目 → 自分の控え
なので、自分の控えは保管しておきましょう。
多くのワーホリは T4しか提出書類が送られてきません(申請者の状況によります)。
その場合、提出しなければならない書類は一般に
- T1 General
- Schedule 1
- Form 428
- Form 479
- T4
となります。
書類をすべてを申請書キットにある封筒に入れ、カナダ税務局(CRA)に郵送すれば手続きは完了です。
③ 申請後について
申請書を送ってから4週間~6週間後に、査定通知 (Notice of Assessment)が郵送されます。
これで納税額が確定します(締切間際に申請した場合、さらに時間がかかる場合があります)。
また、査定通知には払い戻し金の小切手が同封されています。
申請の際、銀行への振込み(Direct Deposit)を希望した場合は小切手ではなく指定口座に直接振り込まれます。
タックス・リターンのさらに詳しい内容に関しましては、Canada Revenue Agencyの情報を参考にして下さい。
タックス・リターンはオンラインでもできる
実は、タックス・リターンはオンラインでも簡単に申請ができます。
推奨するソフトウェアを使えばどれで手続きをしても同じです。
ソフトウェア一覧はこちらのページをご覧ください:
File your taxes online: Certified tax software
いずれのサイトも簡単に使えると思います。(どれも無料で使えますが、役に立ったと思ったら開発者に寄付も出来ます。
普通のインカム・タックス・リターンの場合は1時間もかからずに手続きできます。
タックス・リターンにおける注意点
タックス・リターンにおける注意点をまとめます。
タックスリターンは全員が行うもの
繰り返しますが、タックスリターンの手続きは、基本的には全員がしなければならないものです。
また、手続きは翌年の4月末までに行いましょう。
税金を支払う場合は期日に注意
前年に納めた税金と、確定した実際の税額で差額計算した結果、税金を少なく納めていたことが分かったら、足りない分の税金を追加で支払わないとなりません。
その場合、4月末までに追加分を払わないと滞納状態となり、利子が加算されていくのでご注意ください。
滞納がない場合は、4月以降に申請をしても問題はありません。
2年前、3年前の申告し忘れた分もまとめて申告する事が可能です(滞納があると利子がつきます)。
日本での収入はどうなる?
日本での収入はどうなるのでしょうか?
たとえば、カナダ滞在中に日本の企業から委託を受けて日本円での収入があった場合、カナダのタックス・リターンとは別に、日本での確定申告が必要になる場合があります。
収入額やその他の条件にもよりますので、次の章でご紹介する、日本語での対応が可能な代行サービスや、日本の税理士さんに相談しましょう。
なお、日本に不動産や株式など、$100,000(約1千万円)以上の資産を保有している場合は、「Foreign Property」の申告が必要です。
また、留学前の日本での収入も申告の必要があります。
初めてカナダでタックス・リターンをする際に、前年度の収入を申告する欄があるので、指示に従って入力しましょう。
タックス・リターンの代行サービスもある
インカム・タックス・リターンの申請を行う場合、代行サービスを使うのもおすすめです。
申請は慣れると問題ないですが、はじめての方には難しいと思われます。
書類手順が理解できたとしても、個人個人のケースは千差万別です。
たとえば、
- 日本に配偶者がいるか?
- 交通費を支払ったか?
- 医療費は?
- 引越しをしたか?
- 州をまたがって引越ししたか?
- 家賃は申請できるのか?
- 日本で収入があった場合はどのように申告するのか?
......など確認事項が多いです。
業者を利用することで、正しい手続きをしてもらえ、自分で申請するよりも多くの返金があるかもしれません。
このようなメリットから、代行サービスの利用を検討してみるのもいいかもしれません。
バンクーバー近郊の日本語対応可能なインカムタックスリターンサービス業者は以下のとおりです。
インカム・タックス・リターンの手続きは早めに行おう
今回は、カナダの確定申告「タックス・リターン(インカム・タックス・リターン)」についてまとめました。
重要事項をおさらいしましょう。
まとめ
- インカム・タックス・リターン=所得税の確定申告
- タックス・リターンの対象者は「カナダの全ての居住者」
- 申告年度は前年の1月1日~12月31日
- 申告期限は4月末日(税金を納める場合は遅れないように)
- 郵送・オンラインで申請可能
日本で確定申告をやったことがない人は不安だと思いますが、手順を踏めば大丈夫です。
期限は4月末までですが、慣れていないと時間がかかるため、できるだけ早めに行うといいでしょう。