ILACはなぜ破産したのか?背景とカナダ留学業界の現状を解説【2026年】

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末永 真一

カナダ留学コンサルタント、RCA 海外留学アドバイザー No.162002
カナダ在住20年以上のカナダ留学専門家。カナダ留学情報を発信するTwitterアカウントはカナダ以外も含む留学ジャンルでフォロワー数1位(1万人以上)、月間最大インプレッションは400万を超える。現在までサポートしてきた生徒数は4000人以上。

2026年9月18日(金)の夜、カナダ最大級の語学学校ILAC(International Language Academy of Canada)が、ウェブサイトで破産の申立てと全授業の即時停止を発表しました。

在校生と入学予定者をあわせて、1,000人以上の留学生が影響を受けたと報じられています。

約30年の歴史を持ち、日本人留学生にもよく知られていた学校が、なぜ突然閉鎖に至ったのでしょうか?

この記事では、ILACの破産の背景と、カナダ留学業界で今起きていることを解説します。

出典:The PIE News/CP24

なお、カナダ留学コンパスを通じてILACにお申し込みいただいていたお客様への対応状況は、こちらでご報告しています。

ILACの破産の概要

まず、ILACの破産の概要をまとめます。

  • 2026年9月18日:ILACが破産を申し立て、全キャンパスで授業を即時停止
  • 破産管財人:KPMG Inc.
  • 影響を受けた学生:1,000人以上と報道(在校生と入学予定者の合計)
  • 2026年9月19日:カナダの語学学校の業界団体Languages Canadaが、ILACの学生を加盟校へ振り替える救済措置(eCAP)を発表

記載されている「破産管財人」とは、破産した会社に代わって財産を管理し、債権者への配当などの手続きを進める人です。

今後の返金などの手続きは、ILACではなく管財人のKPMGを通じて行われます。

また、救済措置の「eCAP」は、お支払い済みの授業を、Languages Canadaの他の加盟校で最後まで受けられるようにするための制度です。返金制度ではありません。

eCAPの詳しい内容や、カナダ留学コンパスのお客様への対応は、こちらのページにまとめています。

ILACとはどんな学校だったのか?

破産の背景を見る前に、ILACがどれほど大きな存在だったのかを振り返ります。

カナダ最大規模の語学学校

ILACは1997年にトロントで設立された私立の語学学校です。

2005年にはバンクーバーにもキャンパスを開き、どちらのキャンパスにも1,000人以上、世界90か国から学生が集まっていました。

客観的に見て、カナダ国内で最大規模の語学学校のひとつだといえるでしょう。

ILACの特徴

  • 国籍バランス:特定の国籍に偏らないよう、繁忙期には国籍ごとに入学を制限し、多国籍の環境で学べるようにしていました。
  • 大学・カレッジへの進学(パスウェイ):カナダ全土の85以上のカレッジや大学と提携していました。ILACで所定のレベルを修了すると、英語試験のスコアなしで提携先に進学できる仕組みです。

教育の内容については評価の高い学校でした。

今回の破産は、授業の質に問題があったからではありません。後述する経営環境の急な変化が主な原因と考えられます。

強みは「カレッジ卒業→ポスグラ→永住権」へのパスウェイ

ILACの最大の強みは、公立カレッジへのパスウェイでした。

パスウェイとは、語学学校で所定のレベルを修了すると、英語試験のスコアなしで提携先のカレッジや大学にエスカレーター式に進学できる制度のことです(参考:パスウェイとは?)。

ILACのパスウェイ提携校リスト(2026年8月31日版)には、カナダ国内の大学・カレッジ106校が掲載されており、そのうち94校にILACのパスウェイで進学できました。

特にオンタリオ州では、英語で学べる公立カレッジ22校すべてが提携先に入っています。

公立カレッジへのパスウェイの数は、カナダの語学学校の中で最も多く、毎年、数千人の留学生がILACを経由して公立カレッジへ進学していました。

では、なぜこれほど多くの留学生が公立カレッジへの進学を目指したのでしょうか?

その理由は、その先にある卒業後の就労と永住権です。

日本人にとって非常にハードルの高い「カナダ永住権」まで、次のようなルートによってたどり着けていたのです。

永住権までの道筋

  1. ILACで英語を学ぶ
  2. パスウェイで公立カレッジに進学する
  3. 卒業後、卒業後就労許可(ポスグラ/PGWP)を取得してカナダで働く
  4. カナダでの就労経験をもとに永住権を申請する

公立カレッジを卒業するとポスグラを取得しやすく、そこから永住権にもつなげやすい。

この道筋があったからこそ、多くの留学生が高い学費を払ってでも公立カレッジを目指しました。

つまり、公立カレッジへの進学は永住権を得るための手段として大きな需要があったのです。

ピーク時:年間35,000人、カレッジ・大学への送り出しは年間6,000人以上

ILACはこの需要を取り込み、公立カレッジと組んで自社のキャンパスに学生を集めるモデルで大きく成長しました。

2019年には投資ファンド(PEファンド)が出資し、拡大のペースはさらに上がります。

ILACは非上場の企業のため、売上高は公表されていません。

ただし、公開されている数字から、事業の規模を読み取ることができます。

2022年ごろのILACは、オンライン校(ILAC KISS)を含めて年間35,000人以上の学生を抱え、年間6,000人以上の修了生をカナダのカレッジや大学に送り出していたと紹介されています。

2023年には、オンラインのパスウェイ課程(ILAC KISS)だけで16,000人以上が修了し、そのうち7,000人以上がカナダ国内の提携校へ進学しました。

ILACがパスウェイの「送り出し役」として、どれほど大きな存在だったかがわかります。

In 2023, over 16,000 diverse students graduated from the ILAC KISS pathway program and more than 7000 of those went on to pathway partner institutions across Canada.

(カナダ留学コンパスによる訳:2023年には、16,000人以上の多様な学生がILAC KISSのパスウェイプログラムを卒業し、そのうち7,000人以上がカナダ全土のパスウェイ提携校へ進学しました。)

Introducing New ILAC KISS Global Pathway Partners | ILAC

公私連携(PPP)でも、2023年夏にFanshawe Collegeと開設したトロントのキャンパスには、開設時点で約1,200人の留学生が在籍していました。

The International Language Academy of Canada (ILAC) and London-based Fanshawe College, recently celebrated the grand opening of a new campus in downtown Toronto currently serving more than 1,200 international students from 29 countries around the globe.  

(カナダ留学コンパスによる訳:インターナショナル・ランゲージ・アカデミー・オブ・カナダ(ILAC)と、オンタリオ州ロンドンに拠点を置くファンショー・カレッジは先ごろ、トロントのダウンタウンに新キャンパスを正式に開設しました。現在、世界29カ国から集まった1,200人以上の留学生がここで学んでいます。)

Fanshawe College and ILAC Open New Toronto Campus | ILAC

こうした需要の中心にいたのは、カレッジ進学と就労、永住権を目指すインドからの学生でした。

ILACの創業者で元CEOのJonathan Kolber氏は、破産後のインタビューで、インドからの学生の急増を「津波」と表現し、対応が難しかったと振り返っています。

【ILAC倒産の背景1】カナダ政府の「ダブルパンチ」で需要が消えた

ILACは破産の理由として、過去3年間にカナダの国際教育分野で「規制が大きく変わったこと」を挙げています。(出典:Schools On Air)

そもそも、なぜカナダ政府は急激なルール変更に踏み切ったのでしょうか。

その背景には、留学生の急激な増加とそれに伴う社会問題がありました。

カナダでは2020年代前半に留学生が急増し、学生ビザ(就学許可)の保有者は一時100万人を超えました。

しかし、この急激な人口増加が、深刻な住宅不足や家賃高騰の一因だと言われるようになります。

さらに、一部の教育機関が不適切な方法で留学生を集めていることも社会問題化しました。

こうした事態を重く見たカナダ政府は、2024年1月22日、留学生の受け入れに関して次の2つの制限を発表したのです。

学生ビザの発給数に上限(キャップ)を設ける

カナダ政府による1つ目の制限は、学生ビザの発給数に上限を設けたことです。

2024年の発給枠は約36万件に制限され、前年(2023年)と比べて約35%もの大幅削減となりました。

具体的には、ビザの申請条件として「PAL」と呼ばれる州政府の証明書の提出が必須になりました(参考:「PAL」について)。

PALとは?

各州の政府が発行する「受け入れ確認書」のようなものです。

カナダ政府から各州へ、さらに各州から各学校へと定員枠(配分枠)が割り振られます。

この仕組みにより、たとえ学校から合格(入学許可)をもらえても、その学校にPALの空き枠がなければ学生ビザを申請することすらできません。

結果として、受け入れたくても学生を受け入れられない学校が相次ぐことになりました。

「ポスグラ」の条件の硬化

カナダ政府による2つ目の制限は、ポスグラ(卒業後就労許可)の条件が大幅に厳しくなったことです(参考:ポスグラについて)。

ポスグラとは

カナダの大学・カレッジなどを卒業した留学生が、卒業後にカナダで働くための就労許可です。

公私連携プログラム(PPP)の修了生が、ポスグラの対象外になりました。

PPPとは

PPP(Public-Private Partnership/カナダ政府の表記では curriculum licensing agreement)は、公立カレッジのプログラムを、提携する私立校のキャンパスで教える仕組みです。

さらに2024年9月の見直しにより、2024年11月1日以降に学生ビザを申請した場合、公立カレッジの卒業生も、人手不足が長く続く職業に関連する分野でなければポスグラを取得できなくなりました。

たとえば、留学生に人気のあったビジネスやマネジメント、ホスピタリティ、保育といった分野では、カレッジを卒業してもポスグラが取得できなくなっています。

パスウェイの需要がほぼなくなった

カナダ政府による、この2つの制限は、ILACの事業モデルを直撃しました。

ILACを直撃した2つの制限

  • ポスグラが取りにくくなった → PPPはポスグラの対象外になり、公立カレッジでも分野と語学の条件が加わった。カレッジに進んでも、卒業後に働けるとは限らない。「カレッジ卒業→ポスグラ→永住権」という道筋そのものが揺らいだ
  • 学生ビザの発給数が制限された → カレッジに進学したくても、そもそもビザが下りない

永住権を見すえてカレッジを目指す留学生にとって、パスウェイを使う理由がなくなりました。

この「ダブルパンチ」により、ILACの看板だったパスウェイの需要は、ほぼなくなったと言ってよい状況になりました。

制限の狙いは、問題のある教育機関の排除でしたが、影響は業界全体にかかりました。

まじめに教育を行ってきた学校も、学生募集で大きな打撃を受けてしまったのです。

数字で見る需要の急減:留学生数は2年で約3分の1減少

ルール変更の影響は、数字にはっきり表れています。

カナダ移民・難民・市民権省(IRCC)の統計では、学生ビザ保有者数は次のように減っています。

2024年12月末約92.8万人
2025年12月末約69.1万人
2026年6月末約63.3万人

2024年末から約1年半で、およそ3割の減少です。

新たにカナダへ到着した留学生は、2026年1〜6月で約22,400人でした。

2024年の同じ時期に比べると8割以上減っています。学生ビザ申請の不許可率も上がり、2025年には半数を超えました。

語学学校の業界全体でも、学生は大きく減りました。以下の表は、Languages Canada加盟校の変化です。

項目2019年2025年増減(2019年比)
学生数150,112人81,636人約46%減
学生週数約150万週約79.9万週約47%減

また、直近のデータとなる2024年から2025年にかけても、学生数は13%減、学生週数は19%減となっており、引き続き減少傾向にあることがわかります。

オンタリオ州では、私立カレッジへのPALの配分がゼロになりました。

PPPのような私立キャンパス経由の進学ルートは、ビザの面でも締め出される形になりました。

語学学校の収入は学生数に比例しますが、校舎の賃料や講師の人件費といった固定費はすぐには減らせません。

新しい学生がここまで急に減ったことが、経営を大きく圧迫したと考えられます。

【ILAC倒産の背景2】事業拡大の直後に制度が変わった

ILACには固有の事情もありました。

2019年に投資ファンドのONCAPが経営に参加してから、ILACは事業の拡大を進めてきました。

ONCAP was attracted to ILAC due to its: (i) market-leading position in Canada and globally recognized brand; (ii) excellent culture focused on the student experience; (iii) track record of market-leading growth; (iv) strong and committed management team; and (v) attractive cash flow characteristics.

カナダ留学コンパスによる訳:ONCAPは、ILACの以下の点に魅力を感じ、今回の投資に至りました。(i) カナダ市場を牽引する地位と、世界的に認知されたブランド力、(ii) 学生の体験を第一に考える素晴らしい企業文化、(iii) 業界トップクラスの成長実績、(iv) 強固で熱意ある経営陣、(v) 魅力的なキャッシュフロー特性。

ILAC Education Group | ONCAP

看板商品であるパスウェイの需要が冷え込んでも、拡大のために抱えた大きな固定費は、すぐには減らせませんでした。

ILACの拡大と制度変更の時系列

  • 2020〜2021年:Georgian College、Fanshawe College などの公立カレッジと提携し、PPP事業を拡大
  • 2023年:Fanshawe College と共同で、トロント中心部に大型キャンパスを開設。同じ年に語学学校の Tamwood を買収
  • 2024年1月:学生ビザの上限とPGWP制限が発表される

大型の投資をした直後に、PPPのプログラムが卒業後就労許可の対象外になったのは「大きな痛手」としか言いようがありません。

その後、オンライン校の拡充などで立て直しを図りましたが、市場の縮小に追いつかなかったとみられます。

破産時:負債1億3,500万ドルに対し、手元資金は約800万ドル

破産を申し立てた時点で、ILACの負債は1億3,500万ドル強(約145億円)にのぼっていました。

これに対し、手元の現金は約100万ドル、有価証券は690万ドル(7億6千万円)しかありませんでした。

管財人のKPMGは、担保を持たない債権者=ほとんどの学生への返金は、現時点では見込んでいないとしています。

ILACだけの問題ではない:業界全体に広がる影響

ILACが破産を申し立てる4日前の2026年9月14日には、国際的な語学学校チェーン EC English が、カナダを含む7か国の全25校を閉鎖すると発表しています。

オンタリオ州では、公立カレッジでもプログラムの停止や人員削減が相次いでいると報じられています。

今回の件は1校の経営の失敗というより、カナダの国際教育業界全体が縮小している中で起きた出来事だと言えます。

出典:The PIE News/CP24

これからカナダ留学を考えている方へ

カナダ留学業界は、これから確実に厳しい時期を迎えると感じています。

今回の件で、「大手の学校なら安心」とは言い切れなくなりました。

これからの学校選びは、規模や校舎の見た目だけでは判断できません。

どこが運営母体なのか、どのような経営戦略を描いているのかなど、学校の「中身」を見極めることが、これまで以上に重要になります。

とはいえ、学校の現場の担当者レベルでは見えない部分が多いのも実情です。

だからこそカナダ留学コンパスは、これまで通り各校のオーナーと直接顔を合わせて対話を重ね、自信を持ってご紹介できる学校だけを厳選してまいります。

留学される方ご自身も、語学学校を選ぶときは次の点を意識してください。

語学学校を選ぶときのポイント

  • Languages Canada 加盟校を選ぶ
    加盟校が閉校した場合は、今回のようにeCAP(学生を加盟校へ振り替える救済措置)の対象になります。
  • 長期間の授業料を一括で前払いするリスクを知る
    長期の申し込みには割引がある一方、閉校したときのリスクも大きくなります。支払いの時期と金額は、その両方を比べて決めましょう。
  • 専門家に相談する
    WebやSNSなどの情報だけに鵜呑みにするのではなく、留学エージェントなどの専門家にも相談しましょう。

留学生の受け入れは厳しくなりましたが、カナダ留学そのものができなくなったわけではありません。

「カナダで学びたい」と願う方がいる限り、カナダ留学コンパスは、一人ひとりの留学が「行ってよかった」と心から思えるものになるよう、全力でサポートを続けてまいります。

学校選びや今後の留学計画で不安な点があれば、お気軽にご相談ください。

執筆者 執筆者
末永 真一

カナダ留学コンサルタント、RCA 海外留学アドバイザー No.162002
カナダ在住20年以上のカナダ留学専門家。カナダ留学情報を発信するTwitterアカウントはカナダ以外も含む留学ジャンルでフォロワー数1位(1万人以上)、月間最大インプレッションは400万を超える。現在までサポートしてきた生徒数は4000人以上。

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