カナダで進学したり、永住権を取得するために避けて通れないのが、英語力の証明です。
英語力の証明としては、TOEIC・TOEFL・英検などが日本人には認知度が高いですが、もう1つ、全世界的に有名なのはIELTS(アイエルツ)でしょう。
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IELTS(アイエルツ)基本情報の整理
IELTSは、世界で実に350万人以上の人々が受験している英語力の証明テストで、4つの英語スキル(書く・読む・聞く・話す)のレベルをそれぞれテストします。
テスト形式や目的別にモジュールが違うなど少しだけややこしいため、まず基本知識を整理しておきますね。
運営団体が3つある
IELTSは以下の3つの団体が共同開発した英語のテストです。
Cambridge Assessment English ー イギリスのケンブリッジ大学英語検定機構
British Council ー イギリスの公的な国際文化交流機関
IDP Education ー オーストラリアの留学サポート関連事業会社
その中で、日本ではBritish Councilが、長らく英検と共同でIELTSの試験提供を行って来ました。
そして、2016年には、IDP Educationが日本でテストセンターのパートナーシップを締結しました。
そのため、現在は日本ではBritish CouncilとIDP、2つの団体それぞれが同じIELTSというテストを運営しています。
日本語で情報を調べるとそのどちらもの情報が上がって来ますので、混乱してしまう方も多いかもしれませんね。
ただ、共同開発したテストをそれぞれがプロモート(宣伝)して運営しているだけですので、テスト自体の難易度や問題形式は全く同じです。
IDPの方がスピーキングが取りやすい等、口コミや、実際に受けた方の感想などもあるものの、絶対的にどちらが良い・どちらの方が簡単である、というようなことはありませんので、受験者の皆さんとしては、IELTS運営団体ベースで選ぶ必要はありません。
一度British Council(またはIDP)で受けたから、次から他の団体では受けられない、というようなこともありません。
そのため、テスト受験自体は、希望日程と受験地ベースで選べば大丈夫です。
カナダでもBritish CouncilとIDP双方が運営していますが、強いて言えば、IDPのウェブサイト(カナダ)の方が無料の情報やプラクティステストなどのリソースが豊富で見やすいようには思います。
日本のIDPウェブサイトではメールアドレスなどを入力し、利用規約同意をしなければダウンロードできないサポートツールも多いのですが、カナダのウェブサイトはそういった作業が不要な無料ツールが多いためぜひ利用してみてください。
テスト形式が2つある
IELTSには、General(ジェネラル)とAcademic(アカデミック)の2種類があります。
GeneralとAcademicは、内容が全く異なる2つのテストということではなく、一部はオーバーラップしています。
具体的には、
- リスニングとスピーキングは両モジュールで同じ
- ライティングとリーディングの問題が、アカデミックとジェネラルで異なる
ジェネラルは日常生活のための総合的な英語力、アカデミックは勉学のための英語力です。
カレッジ・大学への出願にあたり、アカデミックでのスコアを求められますが、その理由は、このライティングとリーディングにあります。
例えば、日常会話が問題ない中学生を、いきなり大学の授業に放り込んでも成績は残せないでしょう。
なぜなら、原稿用紙2枚程度の作文しかまだ書けない中学生に、3000~5000文字のレポートを書かせるのは難易度が高すぎます。
同じく、中学生の授業であれば、1時間の授業で進むのはせいぜい教科書の2~6ページ程度だと思います。これが、難易度の高い大学の教科書で1日に30ページ~50ページ進む、などという環境でついていくのはまず不可能です。
海外のカレッジ・大学に入るにはこういった環境が待ち受けています。
そのため、教育機関の入学要件としては、必ずアカデミック、そしてその中でも真ん中より少し上、上級のレベルが求められます。(教育レベルにもよりますが、5.5~7.0など)
対してジェネラルは、移民申請の際に広く利用されますが、移民申請の際に最低限満たさなくてはならない英語要件としては4.0から7.0と幅があります。
現在、この記事をご覧になっている方は、留学(語学・進学)を目指されている方がほとんどだと思いますので、まずはアカデミックを勉強して頂けば間違いありません。
※レベルに関しては後に少し詳しく説明しますね。
受験形式が2種類ある
- ペーパー(紙)
- コンピューター
上記2種類の方法があります。
ブリティッシュカウンシル(英検)のIELTSでは、従来、紙ベースのみでしたが、2020年の3月からCD IELTSとしてコンピューターベースの試験も導入されました。
とは言え、受験日や会場の関係でどうしても、というのでなければ、コンピューターを選択されることをおすすめします。
理由は明確で、TOEFLなどでもペーパーベースからコンピューターベースに移行しているのが時代の流れで、これからペーパーが再度主流になることはほぼ考えられないこと、そして、コンピューターの方が結果が出るのが早いからです。
ペーパー:13日程度
コンピューター:3-5日程度
日本のIELTSでは、「慣れた形式で受けられる」と紙ベースのメリットが挙げられていることもありますが、特に、進学から移民を考えている方の場合、どうせどこかで(多くの場合カナダで)、IELTSのGeneralまたは、Celpip(オンラインのみ)などを受ける必要が出て来ます。
後々、慣れない形式で、さらに全て英語での試験指示で受けることになるのであれば、最初からコンピューター形式に慣れておいた方が絶対に楽です。
また、コンピューターベースのIELTSでは、4スキル全て同日に受験が終了します。
ブリティッシュカウンシル(英検)の、ペーパー(紙)ベースの試験では、2DAYとの記載のある日程を選択すると、スピーキングは翌日受験になります。
結局どの英語資格がいい?
もし、カナダ留学や進学を考えているけれど、現時点で特に英語資格を持っていない、まだ具体的な勉強を始めていないのであれば、IELTSをおすすめします。
「まずはTOEIC」とおっしゃる方が多いですが、TOEICは、ビジネス英語の実用能力をはかる試験で、実はそもそも日常会話でも、アカデミックでもありません。
日本の就職ではやはりまだまだ重要視されますし、留学Before⇒Afterを見るために受けておかれるのはとても価値があることだと思います。
ただ、TOEICはSpeaking/Listeningモジュールの設定もあるとはいえ、多くの方は、従来型のReading/Listeningのみの勉強を想定されています。
直接的にカナダ留学や進学の準備という意味合いでは、4つのスキル全てを学ぶテストの方が間違いなく英語力をまんべんなく強化することができると言えるでしょう。
続けて、同じアカデミック英語としてはTOEFLがありますね。
元々日本の英語教育は、アメリカ英語を取り入れて発展していますから、アメリカで開発されたTOEFLは教材も多くあり、身近に感じる方も多いと思います。(ちなみにTOEICも同じ開発元です)
今、既に勉強してスコアが出ている方が取りやめてしまう必要はありません。
ただ、特に進学を目指す方の場合、将来的に移民目的で、IELTS(General)または、Celpipの受験が必要になります。その場合、最初からIELTSをしていれば、半分は同じトピックですから取っつきやすいですよね。
カナダでの留学や進学の検討を開始し、「とりあえず」でまず1つ選ぶ場合は、やはりIELTSがおすすめです。
参考
進学のための英語テスト ⇒ デュオリンゴ(Duolingo)英語テストを徹底解説します!
移民申請 ⇒ カナダ永住に必要な英語スコア、CLB指標を徹底解説!
合わせてこちらも ⇒ CELPIP(セルピップ)について
IELTSのスコアについて
試験結果は、点数ではなく、得点をバンドスコア(レベル帯)に換算して表されます。
(出典:公益財団法人日本語英語検定協会‐日本版受験者向け情報パンフレットより)
各スキルが1.0~9.0までの、0.5刻みで表され、Overall(全体)としてのバンドスコアが出ます。
どのくらいあればいいの?
留学を検討中の方で、ビジネスなど英語での専門プログラムを受講したいと希望されている方は多いでしょう。
これらのクラスの、最低受講基準はIELTSで5.0程度(または5.5)とされていることが多いです。
いわゆる「英語ができる/日常会話が問題ない」という基準の目安としては、ここを目指してみましょう。
さらに、上を目指し、カレッジ・大学への進学の場合、「Overallが6.0や6.5」という条件に加え、さらに、各バンドが5.5~6.0を下回らないことなどが英語の要件となっていることが多いです。
これはつまり、Readingだけが突出していて8.0だったが、Speakingは苦手で5.0だったというように、スコアにムラがある場合は、例えOverallでスコアを満たしていても要件を満たさないという意味です。
TOEIC目安スコアの注意
前項で少し触れましたが、日本では勉強しやすいReading/ListeningをメインとしたTOEICを勉強しつつ、IELTSへのスコア換算表でご自身のIELTS予想スコアを立てている方もいらっしゃると思います。
5.5~6.0レベルはTOEICですと600~780換算で、これは日本で勉強しても十分に到達できるレベルです。
ただ、日本人の場合、Reading/Listeningでスコアをけん引し、Overallをクリアしているが、「どうしてもどうしてもSpeaking/Writingが毎回足りない!!!」というように苦労される方が非常に多いです。
また、語学学校の専門コースを受けるための事前レベルチェックでも、スピーキングを含む4スキルを見ることがほとんどなため、TOEIC目安としては達していたが、総合的に見た結果、受講レベルには達していないとされた、というケースも多いです。
カナダで専門コースの受講や進学を目指す場合は、TOEICはあくまで目安と考え、早々に、4スキルのIELTS対策の勉強に切り替えることをおすすめします。
IELTS受験について
※今回はコンピューターベースのものに絞ってご案内します。
IELTSは前述の通り、以下の4つのスキルで構成されています。
- リスニング
- リーディング
- ライティング
- スピーキング
コンピューターベースのテストでは、1人1台のコンピューターが割り当てられ、ヘッドフォンを利用して受験します。
テストしか受験できないように設定されていること、着席してからもしっかりと指示がありますので、ウィンドウを間違って消してしまった、音が聞こえない、マウスが使えないなど、個人のパソコンでは起こり得るエラーはまず起きません。
パソコンには詳しくないという方、コンピューター形式の受験ははじめて、という方も安心してくださいね。
また、スピーキングについては面接(対面)方式を採用しています。
特に初めての方はパソコンに向かって話しかけるのが慣れない、と言う方も多いですが、安心してください。
また、初めて受験される方は、IELTS-IDPが出しているビデオを見てみることを強くおすすめします。
当日焦らずに済みますよ!
それでは、各パートを見て行きましょう。
リスニングパート
試験時間:30分
問題:全40問
試験パート:4つ(各1度だけ)
パート1:2人の人物による日常会話
パート2:日常生活におけるトピックを1人が話す(モノローグ)
パート3:複数の人物(最大4名)の会話
パート4:大学の講義など学術的なテーマに関するモノローグ
下のバーに、現在どこの問題をしているかが表示されます。
焦ってしまい別の問題にカーソルを合わせるミスは意外と多いため、常に確認しておくといいですね。
また、残り時間も表示されます。
じっくり考えているうちに次の画面に移ってしまったということのないよう、こちらもよく確認ください。
回答の方法ですが、選択肢から選ぶものやチャートを完成するものがありますが、単語を書き入れるものがあります。
せっかく単語が聞き取れていても、スペルが間違っているとスコアとなりません。
普段から、スペルチェック機能を使って、実際に「書く(タイプする)」練習をしておくことをおすすめします。
リーディングパート
※アカデミックとジェネラルで問題が異なります。
試験時間:60分
問題:全40問
試験パート:3つ
アカデミック:学術的なトピックについての3つの長文。図形やグラフなどから読み取る必要がある場合、注釈付きで専門用語が使用されている場合もある。
ジェネラル:日常会話・仕事に関連したトピック、雑誌・新聞記事など。
リーディングも同様で、下部のバーで現在の問題の箇所を確認できます。
分からない問題があれば残しておいて、戻ってくることもできます。
右クリックを使って、画面上でメモ・ハイライトができる機能もあるため、普段、紙ベースのテキストはペンを片手に線を引きながら読む癖がある方も似たような読み方をすることができます。
アカデミックのリーディングのトピックで、例えば生物・文学・歴史などで人によっては「やった!日本語で知ってる!」ということもあり得ると思いますが、一度先入観を捨て、しっかり読み込んでください。
動画内にもあるように、True/Falseの問題で、「(当該文章内では)説明されていなかった」という回答もあり得るため、常識の範囲や知識に任せて答えて間違うこともあります。
「該当の内容はどの段落で説明されていたか」という質問など、後から文章を読み返す必要も結構ありますので、恐らく初心者の方には、制限時間内に全ての問題に答えること自体が難しいかもしれません。
ライティングパート
※アカデミックとジェネラルで問題が異なります。
試験時間:60分
課題:2問(タスク1では最低150語以上・2で250語以上)
アカデミック:グラフや表を分析して客観的な説明を入れる。課程や手順を説明する(タスク1)。進学を目指す学生に適したある主張や問題に対してのエッセイを書く(タスク2)。
ジェネラル:与えられた状況に対し、問い合わせ・立場を説明する手紙やメールを書く(タスク1)。一般的なトピックについての見解や問題についてのエッセイを書く(タスク2)。
上部に残り時間が出るのは他のパートと同様です。
最低書かなければいけない単語数(文字数ではありません)がありますので、それを下回らないように書き進めてください。
コンピューターベースの場合、下部に単語数はカウントされますので、自分で数える必要はありません。
また、手書きと違ってコピー & ペーストが使えますので、書いた後に文章を動かして構成を後から変えるということも可能です。
また、英語でのエッセイライティングの方法を学んだことがない、と言う方は事前に必ず準備をすることをおすすめします。
日本語でも、小論文では、「論拠を元に筋道を立てて説明して意見を述べる」という文章の組み立てが評価されますよね。
ライティング=ただ書くこと、ではないため、エッセイとして評価されるための文章の組み立て方、よく使われる単語などを知っておくだけで、減点を避けることができます。
スピーキングパート
試験時間:11-14分
試験パート:3つ
パート1:自己紹介や日常生活に関する質問(4-5分)
パート2:スピーチ(3-4分)
パート3:ディスカッション(4-5分) ※2と3はトピックが繋がっています
ライティングでは、最低〇〇文字以上という縛りがありましたよね。
審査官が、あなたの英語力を判断するにはその材料が必要だ、と言う点がスピーキングの最大の注意点だと思います。
というのも、日本人の方は、「失敗したくない」という思いから、簡潔に答えすぎてしまう傾向にあります。
ベラベラとまとまりなくしゃべり続けるのもダメですが、一方で、しゃべらなさすぎるのもスコアが低く出る原因です。
パート2では、1つのトピックについて1分準備し、最大2分話すことが求められます。
やってみると分かりますが2分話し続けるというのは結構大変です。
ライティングと同様、英語のスピーキングテストを受けたことがない、という方は、1分間、2分間など時間をはかり、1つのトピックについて話す練習を事前に行うことをお勧めします。
最初のパート1は、IDの確認などを兼ねているため、少し気を抜いてしまいそうですが、スピーキング=ただ話すことではありません。
短い時間の中で、自分の語彙力、文法知識、発音、そして、文章の構成力などをしっかりとアピールできるように話す意識が重要です。
まとめ
いかがでしょう。
英語の試験について、イメージは整理できましたでしょうか。
留学のクラス分け、専門クラスやプログラムの受講、キャリアカレッジへの出願、カレッジや大学への出願、さらに移民まで、カナダでは「あなたの英語力はどのくらい?」と証明しないといけない機会が多くあります。
テストの目的・性格が異なるため、その時々に合わせて必要な英語資格の勉強をしていきましょう。
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