2014年からカナダ在住。カナダ人同性パートナーと「ふたりママ」として双子を子育て中。LGBTQ+やジェンダーバイアスをブログ「旅するダンサー自由記」にて発信。カナダでダンススタジオ経営&日本語保育園勤務。多様な家族を伝える絵本「かぞくです」作者。
LGBTQ+当事者の方たちに寄り添い、支援する人たちのことをアライ(ally)というのをご存知でしょうか?
アライ(ally)が増えることで多様性が広まり、より多くの方が社会で生きやすくなっていきます。
LGBTQ+フレンドリーとして知られるカナダのアライ事情はどうなのでしょうか。
この記事ではカナダのLGBTQ+アライ事情と活動事例をご紹介します。
このページの目次
LGBTQ+のアライとは?
LGBTQ+アライとは、LGBTQ+の人たちに寄り添い支援する人のことを言います。積極的に啓発したりアクションを起こして活動する人のことも含まれますね。
アライ(ally)は味方や仲間を意味する英単語が由来。
「アライ」だけでも十分に意味が伝わることも多いですが、「LGBTQ+ アライ」と言われることが多いです。
類語もあります!!
アライの類語で「LGBTQ+フレンドリー」という言葉もあります。LGBTQ+をオープンに迎え入れる状態や環境を表すときに使われます。
カナダのLGBTQ+アライ事情について
2005年から婚姻の平等が法的に実現されたカナダのLGBTQ+アライ事情を紹介しましょう。
カナダで「アライ」という言葉はどのくらい浸透している?
カナダで「アライ」という言葉はどのくらい浸透しているのでしょうか。
カナダでは、国営の公共放送局でLGBTQ+に関連するニュースは報道されています。その中で「アライ」も使われているので、ほとんどの人が認知している言葉でしょう。
また、カナダで暮らしていると、いたるところでレインボーを見かけるんです。
レインボーフラッグはLGBTQ+の尊厳と多様性をあらわす社会運動のシンボル。
LGBTQ+アライを表明するために、個人でレインボーバッジをつけている人もいますよ。
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自分からアライと名乗ってもいいの?
ここ数年、カナダでは「わたしはアライです(I am an ally)」と自ら名乗ることはあまりしません。
アライはアイデンティティとして名乗るものではなく、その瞬間の行動をあらわすものと認識されているからだそうです。
学校や会社の自己紹介などで、相手にどうしてもアライであることを伝えたい時は以下の2つのフレーズを使うのが好ましい表現です。
- 「わたしはアライになることをめざしています。(I aim to be an ally)」
- 「わたしはアライになれるように努力します。(I strive to be an ally)」
多くの人が異性愛者かつシスジェンダー前提の環境で育ってきているので、アライと名乗るには知識が必要であり、継続的に学びアクションを起こしていく必要があるんですね。
シスジェンダーとは?
シスジェンダー(cisgender)は、出生時に割り当てられた性別と性自認が一致している人のこと。
カナダでは、「アライです」と言葉で表現する以上に、LGBTQ+の人たちに寄り添い、実際に行動をしていくことがアライへの第一歩と考えられています。
カナダ政府がアライになる方法を示している
カナダ政府のウェブサイトには「LGBTQ+アライになる方法」が社会に周知されるように明確に指針されています。
次項では、カナダ政府が示している「アライになる方法」を紹介しますね。
カナダ政府が示している「アライ」になる方法の例
では、カナダ政府が示している「LGBTQ+アライになる方法」を3つのカテゴリーに分けて紹介します。
人称代名詞を共有する
カナダ政府は、LGBTQ+アライの行動のひとつとして、自分の人称代名詞(she/he/theyなど)を共有することを促しています。
「男性だから」または「男性に見えるから」という理由でhe/himを第三者が使ったり、その逆で「女性だから」または「女性に見えるから」という理由でshe/herを使うことは、ミスジェンダリングに繋がる可能性があるのです。
ミスジェンダリングとは?
相手が自認する性別(性自認)とは異なる扱いをすること。トランスジェンダーやノンバイナリーへの差別のひとつになります。
ミスジェンダリングを防ぐためにも、自分の人称代名詞(she/he/theyなど)をあらかじめ伝えることが大事なんですね。
たとえば、電子メールの末尾に自分の署名の後にカッコ書きで(she/her)と記載したり、
自己紹介で「わたしの人称代名詞はthey/themです」と伝えたりします。
By sharing your pronouns, you can help people use more inclusive language and create space for others to share their pronouns if they feel comfortable.
Here are a few situations where you can choose to share your pronouns:
Being a 2SLGBTQI+ Ally
- in email signatures
- in team and organizational charts
- when introducing yourself to new colleagues or in meetings
実際のカナダ生活でも、自分の人称代名詞を共有することが至極当然になってきて嬉しいです。
ちなみにわたしの人称代名詞は(she/they)です。
わたしのように「she/they」や「he/they」など、2つの人称代名詞を持つ人も多くいます。
下記写真は、カナダのサーニッチ市で開催されたプライドで配られていた人称代名詞バッジです。バッジをつけて自分の人称代名詞を知らせる方法もあります。
すべての性別を含む表現を使用する
相手が望む「人称代名詞」がわからない場合は、すべての性別を含む表現を使用するようにカナダ政府は呼びかけています。
When you are not certain of someone's pronouns, or when you are addressing a large group of people (in person, virtually or in writing), use language that is inclusive of all genders.
For example:
Being a 2SLGBTQI+ Ally
- Use someone's first and last name instead of gendered titles (Mr., Mrs., Ms., Miss) wherever possible.
- Use they/theirs instead of he/his or she/hers or his/hers (in documentation, during presentations, etc.).
- Use partner/spouse instead of wife/husband or boyfriend/girlfriend.
箇条書きの部分を和訳すると次のとおりです。
- 敬称(Mr.、Mrs.、Ms.、Miss)の代わりに相手の名前を使う
- 人称代名詞(he/his/she/hers)または(his/hers)の代わりに、they/theirsを使う
- 妻/夫や彼氏/彼女の代わりに「パートナー」や「配偶者」という言葉を使う
特定の性別に偏らない表現を能動的に使うことで「アライ表明」ができるわけなんですね。
声をあげる
カナダ政府が推奨する3つ目の「LGBTQ+アライになる方法」は、声をあげることです。
差別や排他的な行為を見たり聞いたりした時は声をあげ、LGBTQ+コミュニティを支援することを勧めています。
By speaking up when you hear or see discrimination and exclusionary behaviour, you are standing in support and solidarity with 2SLGBTQI+ communities and contributing to a safer workplace for all.
Examples of discriminatory and exclusionary behaviour include:
Being a 2SLGBTQI+ Ally
- demeaning jokes
- offensive or stereotypical remarks
- exclusionary comments and expressions
- content in documents or learning products that is sex and gender-restrictive
屈辱的なジョークや排他的なコメントや発言、性別やジェンダーを制限する文書やコンテンツには積極的に声をあげることが大事だと書かれています。
このようにLGBTQ+アライになる具体的な方法をカナダ政府のウェブサイトで発表していることで、勇気づけられる当事者も多いのではないでしょうか。
また、LGBTQ+アライになる方法が明確にされているので、当事者以外の人もアクションが起こしやすいですよね。
法的保障があるのはもちろん、国全体でLGBTQ+アライを表明しているのは本当に心強いと感じます。
カナダで暮らしていると、性別や性的指向に関わらず安心して暮らせる社会を作るために、国がロールモデルになっているんだなと実感しますよ。
わたしがカナダ生活で実際に感じたアライの方からの行動
冒頭で述べた通り、カナダでは自ら「アライ」と名乗る人はほとんどいません。
そのため、日常で「アライ」という言葉を聞くことはあまりないですが、アライの方に出会うことはあります。
たとえば、子どもを通わせている幼稚園の先生が、子どもたちに絵本を読んでいたときのことです。
絵本に登場した「お父さんとお母さん」という文章を「おうちの人・家族の人」に表現に変えて読んでくださったのです。
わたし自身、同性同士で子育てをしており、子どもたちは母親がふたりいる家庭で育っています。
自分自身が「ふたりママ」として子育てしていく過程において、我が子たちは必ずと言っていいほど、お父さんがいる家庭を想像されるんですよ……。
ほとんどの絵本でも「お母さんとお父さんが揃っている家族像」のみが描かれている中で、わたしたちのような家族の存在を含む表現を使って、子どもたちに絵本を読んでくださったのは本当に感謝しています!!
この幼稚園での出来事は、カナダ政府の「すべての性別やジェンダーを含む表現を使用しましょう」というアライ声明文にも通ずると思いました。
カナダのLGBTQ+アライ事情まとめ
この記事ではカナダのLGBTQ+アライ事情についてまとめました。
カナダでは、首相のジャスティン・トルドー氏がプライド月間に「Happy Pride!」と発信しプライドパレードに参列したり、国際トランスジェンダー可視化の日に「あなたの命が大事」だと力強く発言します。
国全体でLGBTQ+アライになる方法を示してくれるだけでなく、首相自身がアライなんですよね。
もちろん、カナダに差別がまったくないわけではないですが、国全体の取り組みのおかげで多様な社会への実現に向かっています。
カナダのLGBTQ+については別記事にまとめているので、こちらも合わせてお読みくださいね。
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