プライド月間とは?カナダで何が行なわれる?

監修者 監修者
まどぅー

2014年からカナダ在住。カナダ人同性パートナーと「ふたりママ」として双子を子育て中。LGBTQ+やジェンダーバイアスをブログ「旅するダンサー自由記」にて発信。カナダでダンススタジオ経営&日本語保育園勤務。多様な家族を伝える絵本「かぞくです」作者。

こんにちは、カナダ在住のまどぅーです。

毎年6月にあるプライド月間には、街中がレインボーに染まり、LGBTQ+の権利を啓発するイベントが多く実施されます。

カナダのプライド月間では、どのようなことが行なわれるのでしょうか?

この記事では、カナダのプライド月間について写真付きで詳しく紹介します。

プライド月間とは?

プライド月間とは、LGBTQ+の権利を啓発するイベントが世界各地で行なわれる期間のことです。

世界中の人がLGBTQ+コミュニティをお祝いし、支援する日でもありますね。

プライド月間はいつ?

プライド月間は、毎年6月です。

つまり、毎年6月1日〜6月30日まで、まるまる1か月間がプライド月間になります。

もちろんカナダで行なわれるプライド月間も毎年6月になりますよ。

プライドシーズンとは?

カナダにはプライド月間の他に「プライドシーズン」もあります。プライドシーズンは6月〜9月とされ、プライド月間と同様にLGBTQ+啓発イベントが行なわれます。

プライド月間の英語表記・語源

プライド月間の英語表記は「Pride Month(プライドマンス)」です。

Pride(プライド)とは、直訳すると「誇り」を意味し、Month(マンス)とは、直訳で「月間」を意味します。

日本語で「プライド」というと、「高慢」や「思いあがり」のようなネガティブな意味がありますよね?

この場合の英語のPride(プライド)は、自分自身であることを恥じずに誇りを持つ気持ちが込められています。

そのため、「プライド」という言葉のニュアンスには、ネガティブな意味は含まれていません。

むしろ、今でも差別され続けているLGBTQ+コミュニティの力強さを表現した言葉が「プライド」なのです。

プライド月間のあいさつ

プライド月間に使う挨拶は「Happy Pride(ハッピープライド)」です。

プライドパレードですれ違う人に「Happy Pride!」とよく声をかけられます。

2023年にプライドパレードに行った時の写真

「Happy Pride!」と言われたら、「Happy Pride!」と返すのが正解ですね。

この言葉をお互いに伝え合うと、幸せな気持ちになれますよ。

プライド月間の起源

続いて、プライド月間の起源を紹介しますね。

プライド月間の歴史を語る上で欠かせないのは、「ストーンウォール反乱」です。

1969年にアメリカのニューヨークのゲイバーで警察の踏み込み捜査が行われました。

その時にLGBTQ+当事者が初めて警察に立ち向かい、抵抗運動が起こりました。この事件をのちに「ストーンウォール反乱」と呼ぶようになりました。

カナダでも「ストーンウォール反乱」の影響は大きく、今のカナダのプライドパレードに繋がったとされています。

カナダのプライド月間にはどんなことがある?

カナダのプライド月間には、実際にどんなことが行われるのでしょうか?

街が虹色に染まる

カナダでは、プライド月間になると、街が虹色に染まります

もともとLGBTQ+フレンドリーな国として知られているので、カナダでは普段からレインボーフラッグをいたるところで見かけますが、プライド月間は特に虹色を見かけるようになります。

こちらは、わたしが住んでいる地域で撮影した写真です。

地域もレインボーに染まります

「Pride lives here」とLGBTQ+当事者の存在を全肯定してくれるメッセージが掲げられていますね。

他にもトロントにあるCNタワーがレインボーになったり、LGBTQ+を支援している銀行や薬局などにもレインボーフラッグが掲げられます。

レインボーフラッグが役所に掲げられる

カナダでは、プライド月間になると、役所にレインボーフラッグが掲げられます。

下記は市役所前に掲げられたレインボーフラッグの写真です。

日本でこんな光景は、まだまだ想像できませんよね?

カナダでは、市役所のSNSにもプライド月間をお祝いするコメントが掲載されます。

市長がLGBTQ+コミュニティへ向けたスピーチをすることもありますよ。さすが多様性を尊重した国カナダです。

首相が毎年メッセージを出し旗掲揚式に出席する

カナダでは、プライド月間になると、首相が必ずメッセージを出します。

毎年欠かさず、LGBTQ+コミュニティへの尊厳を語るんです。

下記は2023年のプライド月間にX(旧Twitter)にトルドー首相が出したメッセージになります。

日本語に訳したものもご覧ください。

あなたの性的指向、性自認、性表現が何であるかは関係ありません。あなたは愛される価値があります。あなたは尊敬に値します。あなたは大切にされています。そして政府として、今年のプライド シーズンだけでなく、一年を通じて皆様をサポートし続けます。ハッピープライド!

そしてプライド月間になると、毎年オンタリオ州にあるオタワの国会議事堂で掲揚式が行われます

トルドー首相のすばらしいところは、メッセージを出すだけでなく、レインボーフラッグの掲揚式(旗を掲げる式)にも出席することです。

次の動画は、2023年のプライド月間に行なわれたレインボーフラッグの掲揚式での映像です。

トルドー首相だけでなく、ジェンダー平等を担当する大臣マルシー・イエシ氏も出席していますね。

国のトップの人たちがこんなふうにLGBTQ+アライでいてくれることに感激です。

参考

ジャスティン・トルドー首相はプライド月間だけでなく、トランスジェンダー可視化の日にも毎年メッセージを出しています。

学校もメッセージを出す

カナダでは、プライド月間になると、学校もLGBTQ+をサポートするメッセージを出します。

下記は、バンクーバー島にあるピアソンカレッジという学校がプライド月間に出したメッセージ。

日本語に訳したものもご覧ください。

ピアソンカレッジは、敬意を持ったコミュニティであり、あらゆる種類のハラスメント、いじめや差別を容認せず、あらゆる問題を防止、教育、支援するためにメンバー間の尊重と同意のコミュニティを築くカレッジです。

プライド月間の一番の目的は、LGBTQ+の権利の尊重と、差別をなくすこと。

上記のように、カナダでは、身近な場所からLGBTQ+コミュニティへメッセージが出されるので、LGBTQ+当事者は安心して暮らせるし、非当事者は「性の多様性」に触れることができるでしょう。

学校でLGBTQ+教育がある

カナダでは、地域にもよりますが、プライド月間になると、LGBTQ+教育およびSOGIインクルーシブ教育を授業で取り入れます。

私の住むBC州では、2016年から人権規約が更新され、LGBTQ+教育およびSOGIインクルーシブ教育を行なうことが義務付けられました。

では、具体的にどのような教育が行われるのでしょうか。

カナダ政府のサイトで例があがっていました。

  • 数学の問題で使われる人称代名詞にsheやheだけでなくthey/themを使う
  • 異性カップルの親だけでなく、同性同士の親が教材に出てくる

社会は異性愛しか想定されていないので、上記のようにLGBTQ+当事者が教材に出てくることによって、生徒が互いの違いを理解し尊重することに役立ちます。

他にも、カナダ政府のサイトでは、「多様性を重視し、プライドを心からお祝いし、LGBTQ+のスタッフ、学生、その家族を愛と誇りを持ってサポートする」とハッキリ書かれていました。

「差別がある現実の改善には、教育が大事である」と国全体でしっかりと認識しているんだと感じました。

詳しくはカナダ政府のサイトへ

Minister’s statement for Pride 2023 in K-12 education

本屋・図書館にLGBTQ+の関連本が置かれる

プライド月間になると、本屋さんや図書館にプライドコーナーが設置されます。

積極的にLGBTQ+関連本を置くことで、正しい知識が広まっていきますよね。

上の画像は、地域の小さな図書館にあったプライドコーナーです。

プライド月間にカナダで開催されるイベント

カナダでは、プライド月間にどんなイベントが開催されるのでしょうか?

まとめたので紹介しますね。

プライドパレード

プライド月間に開催されるイベントの1つめは、プライドパレードです。

世界各地でプライドパレードが開催されますが、もちろんカナダでもプライドパレードがあります。

プライドパレードとは?

LGBTQ+の文化を讃えるパレード。LGBTQ+やLGBTQ+アライが共に歩き、自分自身であることを誇りを持ってお祝いするイベント。

カナダではさまざまな地域でプライドパレードが行なわれ、参加者は年々増えています。世界各国から集まってくるほど。

わたしも家族で毎年プライドパレードに参加します。

カナダで最も大きいと言われているのはトロントプライドパレードです。

Pride Torontoによると、2023年のパレード参加者は、20万人の行進者と220万人の観客で大盛りあがりだったそう。

犬のプライドパレード

プライド月間に開催されるイベントの2つめは、犬のプライドパレードです。

「犬のプライドパレード」というのは、犬好きのLGBTQ+とLGBTQ+アライの飼い主が集まって、犬といっしょに散歩するイベント。

犬がレインボーの洋服を着ていて可愛いですよ。

英語では、「The Big Gay Dog Walk(ビッグ・ゲイ・ドッグ・ウォーク)」や「Pride Pet Parade(プライド・ペット・パレード)」と呼ばれています。

犬のおやつが商品に含まれていたり、犬のファッションショーや芸コンテストがあり、盛り上がりますよ。

ちなみに優勝すると、500ドルの犬のおやつがもらえるんだとか!(地域や年による)

飼い犬と楽しめるプライドパレードなんですね。日本にはないので、参加してみると面白いです。

ドラァグクイーンやドラァグキングの絵本読み

プライド月間に開催されるイベントの3つめは、ドラァグクイーンの絵本読みです。

ドラァグクイーンとは?

ドラァグクイーンとは、派手なメイクと女装でステージ上で踊ったり歌うゲイのパフォーマーを主に指します。また、異性装した女性はドラァグキングと呼ばれます。1960年から1970年にかけてLGBTQ+の権利運動でも重要な役割を果たしのがドラァグクイーンやドラァグキングです。

文字通り、ドラァグクイーンが子どもたちに絵本を読んでくれる人気イベントになります。

英語では「Drag Queen Story Hour(ドラァグクイーン・ストーリー・アワー)と呼ばれます。

子どもたちも楽しそうに絵本を聞いていました!!

ドラァグクイーンは長年の間、迫害され続けています。目立つ存在なので差別の対象となりやすいからです。

残念なことに、現在も差別がゼロとは言い切れないでしょう。

そんな社会の圧力にも屈せずに自分自身を表現するドラァグクイーンの姿は、子どもたちに自己表現の大切さを教えてくれます。

ドラァグボールゲーム(野球大会)

プライド月間に開催されるイベントの4つめは、ドラァグボールゲーム(野球大会です。

英語では「Drag Ball Game」と表記されます。

カナダのビクトリアで毎年行われているドラァグボールゲーム(野球大会)は1993年に始まったとされています。

当時、ドラァグパフォーマーのコミュニティでは、エイズにより多くの仲間を失ったことに悲しんでいました。

仲間が亡くなった現実や政治のことを考えないで「何か楽しいことをしよう」と計画し始まったのが、野球大会です。

野球大会を開催したおかげで、徐々にLGBTQ+コミュニティ内でも元気になる人が増えてきた歴史があります。

今ではこのドラァグボールゲーム(野球大会)に毎年最大1,000人の観客が集まるんですよ。

プライド月間に開催される人気イベントのひとつです。

プライド・イン・ザ・ワード(PRIDE IN THE WORD)

プライド月間に開催されるイベントの5つめは、「プライド・イン・ザ・ワード(PRIDE IN THE WORD)」です。

「プライド・イン・ザ・ワード(PRIDE IN THE WORD)」とは、簡単にいうと、文学パフォーマンスです。

LGBTQ+の作家たちが言葉と詩で朗読パフォーマンスします。

朗読パフォーマンスで観客の反応がいい場合、自分の作品を出版できる可能性も広がるそうなんです!!

題材はやはり、LGBTQ+コミュニティについて書かれていることが条件だそう。

観客として行くのも、朗読パフォーマーとして参加するのも面白そうですね。

カナダのプライド月間まとめ

この記事では、カナダのプライド月間についてまとめました。

カナダのプライド月間は、プライドパレードが大きなイベントです。

また、犬のプライドパレードやドラァグボールゲーム(野球大会)など、日本にはないLGBTQ+イベントもありましたね。

どんな性別でも性的指向でも安心して暮らせるのがカナダ。

ぜひ、カナダのプライド月間を思う存分楽しんでくださいね。

それでは最後に、Happy Pride(ハッピープライド)!!

執筆者 執筆者
まどぅー

2014年からカナダ在住。カナダ人同性パートナーと「ふたりママ」として双子を子育て中。LGBTQ+やジェンダーバイアスをブログ「旅するダンサー自由記」にて発信。カナダでダンススタジオ経営&日本語保育園勤務。多様な家族を伝える絵本「かぞくです」作者。

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