シリーズにて、
- 留学と就職‐就職準備‐
- 留学と就職‐北米の就職活動について知ろう‐
と繋げて来まして、今回は、自己実現と自己分析についてご説明いたします。
はじめに
コロナ禍で大学生や就職(転職)活動を経験する若い皆さんは、学業もオンラインで受けないといけなかったり、留学や旅行など予定していた楽しいイベントが延期になったりと、大変な思いをされた方も多いでしょう。
ただ、就職に関して言うならば、追い風と言えるのかもしれません。
というのも、今まで企業が作って来た当たり前が当たり前でないことがコロナで起き、リモートワークなど働き方にも大きな転換点を迎えています。
その中で新入社員として入る皆さんの場合、これまでと同じことしろ・マニュアル通りにやれと命じられることは少ないと予想できます。
ポストコロナの会社作りを新たに構築していく世代となれるはずです。
ただ、留学準備の所でお話した通り、AIの発展に伴う臨界点は2045年に訪れ、今ある仕事の多くが姿を消すと言われています。
ですから、どの仕事に就くかではなくて、どう働くか・なぜ働くか、に焦点を当てた就職活動が非常に重要になって来ます。
また、現在の同時翻訳・通訳機能の発展は目覚ましく、英語が話せる・使えることそれ自体はスキルとしてのレア度が低くなっています。
英語×(かける)何をあなたの武器として行くかも考えておかないと、働き続けることは難しくなっていくでしょう。
今日の記事での内容は少し抽象的ですが、ぜひ皆さんの中でどう働くか・なぜ働くかを掘り下げて考えてみる機会としてください。
自己実現とは?
マズローの自己実現論と留学
あまりに有名ですので知っている方も多いと思います。
アメリカの心理学者のマズローが人間の欲求を5段階の階層で説明したものです。
自己実現論とキャリアはよく語られるトピックですので興味のある方はぜひ書籍などでも詳しく読んでみてください。
ざっくり説明しておきますと、
- 生理的欲求・・・食事・睡眠・排泄など生きて行くための本能的な欲求
- 安全欲求・・・戦争や外的不安のない、健康で安全な生活をしたいという欲求
- 社会的欲求・・・集団に所属したい、という欲求
というまず、根源的な欲求が人間にはあります。
その次の段階として、社会的に、または所属する団体で認められたいという承認欲求というものがあります。
近年は、SNSとこの承認欲求がセットで語られることが多いですね。
留学を考える方は20代や30代の方が多いと思いますし、留学により、大学やアルバイト、現在の職場など、元々属している集団(※社会的欲求は第3階層)から本来は強制的に離れることになります。
ですが、そもそも、社会的欲求の所を上手に満たすことができていないと、
- 不安だから日本人と一緒にいる
- 友だちと同じ留学プランにする
- 友人や先輩、大学やエージェントお勧めの留学先にそのまま決める
と、属していること・みんなと同じの安心感の枠から抜け出すことができません。
でも皆さんは違いますよね。
1人で決めて、1人で留学を頑張ろうと思って今この記事をご覧のはずです。
となると、次の段階(※第4階層)である、留学や語学学習を通してより成長し承認欲求を満たしたい、という欲求が心にはあるでしょう。
でもこの欲求はなかなか扱いが難しく、承認欲求に絡む留学の失敗は多くあります。
- 留学している自分・カナダにいる自分をSNS等で発信することに忙しくしていて、帰る直前になってふと英語が身についていない、ことに気づいた
- 他の人の留学と比べてしまい、あれもこれもと手を出して一貫性のない留学になってしまった
- 英語力の高い他の日本人を見て、モチベーションが下がってしまう
他人からよく見られることに重点を置いてしまう、他者と自分を比べたり、集団の中の自分の位置に一喜一憂する・・・。
就職を見据えた留学準備の所でもお話しましたが、なぜ私はこの留学に来ているのかの軸をきちんと考えておかないとブレブレの留学になってしまいます。
承認欲求は、人生を通して付き合っていくものですので、全く迷わない・人と比べないことは難しい、と割り切って大丈夫です。
ですが、後の自己分析の話に繋がりますが、自分の頭の中にもこういう段階を踏んだ欲求があるのだと知っておくことで、心の準備ができるのではないでしょうか。
そして、実はそれが就活・転職活動にも繋がります。
自己分析が甘いまま就活をすると途中で方針がブレブレになりますし、仮に運よく就職が決まっても満足できません。
そして、なんとなくキャリアップ・キャリアチェンジをしたいと資格を取ってみたり、別の国への留学を検討したり、別の言語に手を出してみたり、という自分探しの旅を延々してしまうことになります。
だからこそ、留学を1つの練習と考えて、しっかり準備をしてください。
留学を経験したあなたは、より良い就職活動ができるはずです。
自己実現の欲求とは?
承認欲求の次の段階にある(※第5階層)が自己実現の欲求です。
自分らしく生きたい、何か自分にしかできないことをやり遂げたい、という欲求です。
今すぐ達成できるものではなく、あなたが今からの人生で、自分は何がしたい人間なんだろうか?と考えて行くことが重要です。
多くの社会人・大人も、承認欲求、そして自己実現の欲求と戦いながら、悩みながら人生を送っています。
冒頭で、あなたの「英語×何か」の武器を考えましょう、とお伝えしましたが、英語ができることや、海外留学経験者が、それ1つで「私にしかできないこと」である時代ではない、というのは恐らく皆さん同意するでしょう。
ただ、それは決してマイナスの意味ではありません。
人材としての価値を考える時に、100人に1人のスキル×100人に1人のスキル⁼1万人に1人の価値という考え方があります。
まず、就職または転職に先駆けて、語学というスキルを得た、その後は次に掛け合わせるスキルを探していけばいいのです。
留学において、私は何がしたい人間なんだろうか。
就職・仕事で、私は何を達成したいんだろうか。
こういった問いを踏まえて、大きな所で、私は人生で何をやり遂げたいのだろうか、という所に繋がっていきます。
ですから、このシリーズで繰り返す通り、自己分析、つまり、私はどういう人間なのだろうか、という所を突き詰めて考えることが必要になって来ます。
友だち・先輩・親・先生・留学エージェント/転職エージェントは、ここの答えはくれません。
ですから、留学を就活にしっかり結びつけるために、就活で役立つ留学生活を送るために、自己分析は欠かせません。
転職と留学
ここまで読んで、今既に何がしかの仕事について転職を考えている方は、「マズローも知っている。キャリアの考え方も知っているし、新卒の就活の時に自己分析はやったので私は関係ない。」と思われるかもしれません。
「その上で、今のキャリアに掛け合わせるものとして、留学・カナダ進学を選んだのだ」とおっしゃる方もいるでしょう。
ただ、それでも、留学はキャリアップやキャリアチェンジの魔法のチケットにはならないことはぜひ今一度意識しておいてください。
留学は大きな投資となるため、帰国後の転職について、その投資をすぐに回収できるような年収アップを期待する方も多いですが、実際にはそうならないことも多くあります。
元の業界や業種と似たような所に就くこともあれば、実務ブランクもありますし、年収レベルは据え置きとなることもあります。
ですから、新卒の方と同じく(但しそれよりは、社会人経験を経たため、より深く)、私は仕事で何を実現したいのか、の考え方が重要です。
特に、就活時のミスマッチで今の会社でのやりがいが見つけられないでいる方(=社会的欲求がうまく満たせていない方)は、何か変わるだろう、という安易な留学希望では、結局の所、承認欲求もやはり満たされず、自己実現はできず、何も変わらないかもしれません。
性格的な自己分析に加え、今の自分のスキル・職歴の棚卸しをすることも重要です。
今の仕事や会社が嫌だから、英語を身に付けて、ないし留学で何かを学んで、キャリアアップ・キャリアチェンジという動機は、今あるものに目を背けている・現実逃避的な考え方です。
留学と就職‐北米の就職活動について知ろうで見て来た通り、北米式のキャリア観は既に日本にも入って来ています。
今あるあなたの社会人としてのスキルが、5人に1人が持ってるもので希少価値がない所に、留学で5人に1人レベルの英語力を得てもたった25人に1人の価値しかありません。
- 私の人材としての武器は何か
- それに何をかけることで自分の人材としての価値が高まるか
というキャリアデザインの意識がなければ、エントリーレベルのポジションで長いキャリア人生の大半を使ってしまうことにもなりかねません。
今できること・できないことを見つめ直すのは、胸がざわざわする、気持ちの悪いことですが必ずやってみましょう。
自分ひとりで難しければ、転職エージェント・キャリアコンサルタントなどプロの手も借りましょう。
自己分析について
なぜ働くのか
「お金を稼ぐため」それは事実です。
しないと食べていけないから・・・と答える方もいるでしょう。
大学生の方で、「社会人になるなんて、うわー最悪」と思っている方もいるでしょうし、転職活動中ではあるものの「もう仕事なんかしたくないよ」と思っている方もいるでしょう。
でも世の中にはなぜか「仕事大好き!」と言ってイキイキと働いている人がいるのも事実。
やらないといけないことではありますが、人によって仕事のモチベーションは異なります。
できるだけマッチングをして、自分に合いそうな仕事や会社を見つける助けになるのが自己分析です。
アメリカのキャリアの研究者である、Donald E Superは、個人にとって重要な仕事の価値観を研究し、14に定義づけています。
- 能力の活用:自分の能力を発揮できる
- 達成:良い結果が生まれたという実感を持てる
- 美的追求:美しいものを創り出せる
- 愛他性:人の役に立てる
- 自律性:他からの命令や束縛を受けず、自分のチカラだけでやっていける
- 創造性:新しいものや考えを創り出せる
- 経済的報酬:たくさんのお金を稼ぎ、高水準の生活を送れる
- ライフスタイル:自分の望むような生活を送れる
- 身体的活動:身体を動かす機会を持てる
- 社会的評価:社会に広く仕事の成果を認めてもらえる
- 冒険性:わくわくするような体験ができる
- 社会的交流性:いろいろな人と接点を持ちながら仕事ができる
- 多様性:多様な活動ができる
- 環境:仕事環境が心地よい
あなたが仕事をイメージする時、どこに重きを置きますか?
社会人になってから、または、やってみないとわかんないよ、と思うかもしれませんが、就活を振り返る時、多くの社会人が
もっと自己分析や業界研究をきっちりやっておけばよかった、と言います。
ぜひ時間を取ってやってみてくださいね。
どんな会社で働きたいのか
組織や仕事の考え方で大きく分けて4種類の人材に分かれていると言います。
- 組織コミットメント:組織への忠誠心
この仲間とともに目標を達成したい、仲間のためには少々の犠牲も厭わない、という気持ちの強い人材 - ジョブコミットメント:職務への献身
お客様への貢献、より高いクオリティの実現にとことんこだわる人材 - キャリアコミットメント:自己成長欲求・健全な野心
よい上司の下につきたい、自分の願うポスト(配属や昇格)に就きたい、という欲求が高い人材 - ミッションコミットメント:価値観への共鳴・使命感の共有
自分の仕事が命を使うにふさわしいかどうか、社会問題の解決や人類の進化、より快適な暮らしや喜びの提供に貢献しているか、ということを重視する人材。
※参照:「組織論再入門」野田稔著
昔は、「商社や海外営業部などで世界を股にかけてバリバリ働きたい!」とか、「成果を出してしっかり給料も稼ぎ、評価されたい」というような希望が多かったのですが、近年は、「社会や人の役に立ちたい」という、ミッションコミットメント重視の仕事探しを考える方が増えたそうです。
皆さんはどうでしょうか?
面接の際は、「志望動機」を聞かれます。
もちろん面接はあなた自身が審査される機会でもありますが、応募の前にあなたがその会社との相性が合いそうかの判断が必要です。
そもそも合わない会社に、無理やり作った偽物の志望動機で臨むようでは時間がもったいないですからぜひ、ここもよく考えてください。
自己分析ツール
これを1つ1つ考えて行くのは大変ですが、新卒・転職者ともに、多くの自己分析ツールが出ています。
ぜひ、複数のツールを試してみてくださいね。
特に、転職者の方は、「新卒の時にもうやったし・・・」とおろそかになりがち。
転職者用のツールや、適職診断なども多く出ています。
とは言え、自己分析や適職診断で出るあなたの性格や、向いている仕事については、100%絶対これだ!という答えが出るわけではありません。
多くの方が、「ふ~ん、こんなもんか」「まぁ、だいたい知ってたけどね」という答えを得ることでしょう。
ノートを作ってみようだとか、ワークショップだとか色々な自己分析の方法がありますが、自己分析にはどれだけ時間をかけたらいいとか、ここまでやれば十分といったような目安はありません。
ただ、大事なことは、前項でも言った通り、自己分析が甘いと仕事を探している最中に目移りしてしまう上に、基準がないので結局どこのどんな仕事に自分が合うのか分からず、迷走しがちです。
さらにその事前段階にあたる留学でも、やっぱり英語が・・・、インターンシップしないと・・・、いやいや留学経験が・・・、せっかくなのでボランティアを・・・と、迷走してしまいます。
そうすると、人事担当者が一番嫌う面接本をそのまま暗記して来たような無個性の求職者が出来上がってしまいます。
ただ、当然ですが、あなたという人が、本来、無個性(=アピールする魅力がない)なわけはありません。
どんな人にも必ず良い所・苦手な所があるのに見失ってしまったので、会社(面接官)が求めそうな自分を演じてみた結果、無個性になります。
自己分析は、迷走しないように軸となる所を作る作業と考えましょう。
最後に
いかがでしょうか。
留学は時間もお金も、非常に大きな投資です。
そして、多くの方にとって仕事とは1日の3分の1を占める、非常に大きなファクターになるはずです。
そして、仕事やその成果を通じて自己実現をしていく方も多いでしょう。
となれば、留学をできるだけこれからのキャリアにがっちり繋げて行き、その投資を回収できるとより充実した生活ができるのではないかなと思います。
カナダ留学を検討している皆さんが、日本で、投資に見合った良い就職というリターンが得られるようお手伝いしています。