留学と就職‐留学準備‐

留学をする多くの方は、

  • 留学中に、キャリアや就職に役立つ経験や知識を得たい
  • 帰国したら語学力を活かして就職がしたい
  • (働けるビザがある場合)カナダで実務経験を積みたい

と希望されていることでしょう。

この記事では、10年以上留学生の現地での生活や就職の現状を見て来た経験から、まずは世の中の流れと、留学と就職の実際、そして、日本での就職を見据えた留学準備についてご説明させて頂きます。

はじめに

日本に住んでいる皆さんは、2025年問題2035年問題、そして、2045問題について聞いたことはありますか?

かえで

あ!なんか聞いたことあります!

2025年問題

団塊の世代がすべて75歳を迎え、後期高齢者となる年。(全人口の5人に1人、65歳以上を含めると3人に1人に)超々高齢化社会の到来。持続可能性を維持した日本独自の社会保障モデルを考えないといけないと言われている。

2035年問題

団塊ジュニアが65歳以上となる一方で、団塊の世代は85才となり、寿命を迎える年齢に差し掛かる年。介護サービスを必要とする後期高齢者が爆発的に増加すると言われている。

2045年問題

人工知能(artificial intelligence・AI)が自らを規定しているプログラムを自身で改良し、永続的に進化するようになる。ある時点で人間の知能を超えて、それ以降の発明などはすべて人間ではなく人工知能が行うようになり、それ以降の進歩を予測できなくなる(人間がいくら考えても想像ができないレベルに達する)年と言われている。今存在する仕事の多くはAIが行うようになっていく。

最初の2つは日本独自の問題、そして最後の2045年問題は世界が関係してくる問題ですね。

こういった状況を踏まえ、仕事人生はこれまでより長くなる。そして、AIの登場によって今ある仕事はなくなっていく。

だから、仕事や働き方をもっと変えて行こう、という動きは日本では既に起こっていました。

さらにこのコロナ禍でリモートワークなど新しい働き方への動きが一気に加速しましたね。

上記の3つの問題それ自体を考えて欲しい、ということでは全くありません。

何といっても、今日のテーマは「留学と就職」であって、福祉やAIの話ではないのですから。笑

ただ、向こう10年・20年後に起きてくる事柄として知っておいてください。

と言うのも、これから就職や転職を考える若い皆さんは、恐らく、親や先生、先輩や友人などの経験や、経験に基づく意見を聞くことが多いでしょう。

それは間違っていません。

ですが、それは過去の話を元にしています。

ポストコロナの就職や、これからどんな仕事があるかに関しては、明らかに変わるということだけが分かっています、というのが今の現状です。

つまり、親・先輩などの経験やアドバイス自体は参考にはなってもあなたには当てはまらない可能性が高いということです。

まさに今から留学する方、もしくは留学を終えて帰る予定の方は、このことを少し心に止めておいてください。

留学と就職

英語力は就職の役に立たない

最初のトピックに戻りますが、留学を就職や転職の足掛かりにしたい、という方は多いでしょう。

ここで、とっても重要なことなのですが、多くの方が、留学=英語力のアップ=就職の武器になる、と勘違いしています。

先に、身も蓋もないことを言ってしまいますが、英語力それ自体は、ほとんどの場合、就職の(直接の)役には立ちません。

調査によれば、企業が求める人材像の中で重視するのは、ここ15年以上、コミュニケーション能力がダントツのトップ、次いで、主体性・チャレンジ精神・協調性・誠実性などが続きます。

新卒で言うならば、企業が求める資質・能力のトップも主体性・実行力・問題解決能力などが並び、異文化理解力や外国語能力などはほんの申し訳程度にしか挙げられません。

企業が海外で学ぶ留学生に求める資質も、ここでは語学力が出てくるものの、それ以外には、コミュニケーション能力・行動力・国際性・バイタリティーなどが並びます。

その傾向は転職でもほとんど変わりません。

※興味のある方は、リクルート会社や経団連などの出している資料を見てみてくださいね。

英語力それ自体が求められる仕事、例えば通訳や翻訳なども今やどんどんAIに置き換わっています。

そのため、まず、とりあえず英語力(語学力)をあげるための留学はおすすめしません。

かえで

留学は無駄ってことですか?

いいえ、もちろんそんなことは全くありません。

留学の目標を、語学力のアップにだけフォーカスし過ぎない目線が重要という意味です。

もし語学だけにフォーカスしてしまうと、3カ月留学した人より6か月、6か月より1年、1年より2年、長く英語を学んだ人なんて山ほどいます。

ですから、限られた期間での留学の場合、それ以外の何かを持って帰る意識を持つことが重要です。

留学体験はエピソードの1つ

留学=英語と即結び付けてしまいがちですが、それを一旦排除すると他に何が見えてくるでしょうか。

実は、留学には語学の勉強以外に付随する体験がたくさんあります。

前項で企業が求める資質を挙げましたね。

企業が面接などで見たいのは、あなたがいかに英語ができるようになったかではありません。

  • あなたが留学という経験を通してどんなことを学んだか
  • 留学というエピソードトークを通して、あたなたがどんな人だと分かるか

そして、それが先ほどの求める資質とどうつながっているか、です。

留学に行けば、程度の差はあっても英語力は絶対に確実に伸びます。

でもそれが全てではないことはお伝えした通りですね。

つまり、留学したら就職に有利なのではなくて、留学エピソードを就職に有利になるようにデザインしなければいけないのです。

英語資格のスコアは努力の証明

よくあるご質問に、「留学の後、TOEICはどのくらいあればいいでしょうか?」ないし、「TOEICはやっぱり受けた方がいいのでしょうか?」というものがあります。

その答えを私の言葉ではなく、ある日本の会社の人事の方お二人のコメントで答えさせて頂きます。

「1次や2次だと若手だけど、選考が進むと面接に入るのは、海外経験や英語ができない年配社員ということも多い。そうなると正直IELTSとか言われても分からないので、TOEICなどみんなに分かりやすい指標があると、なるほど勉強したんだな、とすぐ分かってもらえますね。」(30代)

「TOEICで600~700のスコアが履歴書に書いてあると、なぜわざわざ書いたのかな?と思う。留学をしていて、海外経験を面接でアピールするのに低いスコアでは逆にマイナスの印象を抱いてしまうよね。」(40代)

お金と時間をかけて獲得したために多くの方が武器としたい語学力ですが、面接や選考の場では、TOEICスコアなどに集約できてしまいます。

逆に言うと、語学力についてのエピソードは面接で語るほどのものではなく、留学しました・頑張りましたは、TOEICで最低でも750以上、できれば800~900あればある程度証明できます。

日本の英語教育を受けて来た方で、大学生の休学留学(つまり新卒)でTOEIC800以上は実際に多くの方が取って帰っています。

あなたにできない道理はありません。

スコアに関しては目標を高く持ってください。

留学の成果としてはできるだけ高いスコアを取る一方で、別のエピソード作りに力を入れてください。

英語ができる人に仕事を教えるより、仕事ができる人に英語を教えた方が早い

これが企業側の本音です。

多くの方が、留学をしたので「留学経験を活かせる仕事」や、「語学力を使う仕事」につきたいと考えます。

しかし、(仮に日系の企業に就職することを考えると)企業側からしてみれば、英語を使わせるために人を雇うわけではありません。

あくまでしてほしいのは、その会社での仕事です。

企業の目線は、仕事ができそうな人かどうか、これに尽きます。

そんなことわかってるよ、とおっしゃるかもしれません。

ですが、留学の目的として例えば、「将来的に海外駐在なども経験してみたいから、英語力をつけて、海外支店がある会社に応募する」というような希望は多いです。

ただ、実際にカナダで駐在をしている日系企業の方からお話を聞くと、

「いや、英語は苦手で・・・。学生時代の留学経験?ないですよ。」

「英語は、一応社内の規定があるので勉強して、TOEICで700くらい取りましたよ。入社時?いやー大学の時に受けたのはいくつだったかなぁ。」

という声が上がります。(もちろん、帰国子女の方・海外でMBAを取っている方などもいますので全員ではありません)

中には、「入社時に海外支店なんて話はなかったんですよ。希望もしてないし。それが、マネージャーってことで自分が行けと言われて。勘弁してほしいですよ。」

なんて話も。

今海外支店がある会社かどうか、入社時に英語力があるかは、実はあまり関係なかったりします。

結局の所、チャンスは社内でしっかり成績を上げている優秀な社員に巡って来ます。

ますますもって、留学のアピールポイントは語学力ではないことが分かります。

皆さんの武器は何ですか?

しっかり考えてみましょう。

かえで

武器と言われても・・・。

そうですよね。特に新卒の方はまだこれと言える知識やスキルはないため、悩んでしまいます。

でも、ここで最初の前置きにも繋がるのですが、正直な所、コロナを経て全てがひっくり返ってしまい、今までの働き方や成功体験が吹っ飛んでしまったのが現在です。

企業の担当者も、会社も、世の中がどんな風に動いて行くかなんて実際の所は分かりません。

ここで、企業が求める資質の中に挙げられているものをもう一度思い出してみましょう。

コミュニケーション能力・主体性・問題解決能力・チャレンジ精神・・・つまりは、コロナでひっくり返った世の中を、一緒に乗り切ってくれそうな人材ということです。

ここに留学を就職に結びつけるヒントがありそうです。

就職を見据えた留学準備

なぜ?の意識

コロナ前ですが、企業の担当者の方が「最近妙に海外旅行経験の多さをアピールする学生が増えた気がするね。でも、なんでそれをしたの?と聞くと答えられなくって。あれ、自己PRで流行ってるのかね?」とおっしゃっていたことがあります。

バックパッカーをしたので、適応能力があります!

留学をしたので、行動力があります!

こんなエピソード作りに、留学・海外経験はとても便利に見えますが、人事担当者としては聞き飽きているのも事実。

ここ数年の就職活動では、「コロナ禍での留学」や、ワーキングホリデーが取れなかったことから「コープ留学」は、恐らく企業担当者は山ほど聞くことになるでしょう。

そのため、残念ながらそれ自体は他の方との差別化にはなりません。

最初に留学に興味を持った動機が、就活のためや周りの影響でもかまいません。

でも、あなたはなぜ、留学をする(した)のですか?

の答えは、行く前、そして後には、しっかりと答えられるようにしておいてください。

学校はどこでもいい

あくまで就職という目線で考えた場合、どの学校で学んだかは企業の採用担当者は一切興味がありません。

(※留学としては、皆さんに合う学校かどうかを見極める必要がありますから、もちろんどこでもいいわけではありません。学校選びはぜひ担当カウンセラーと納得いくまでしてくださいね。)

もっと言うなら、語学学校か、キャリアカレッジか、なんてことさえも実際にはよく分かりません。

ですが、前項と同様、「どう選んだか」「なぜその学校にしたか?」は大事にしてください。

  • 有名だったから
  • なんとなく
  • エージェントに言われたから
  • 安かったから

このような理由には、主体性がありませんよね。

例えば、カナダの有名大学の附属語学学校を希望される方は多いですが、一方で、有名大学の語学プログラムは、より上達が早く、ネームバリューも高いということはありません。

人事担当者がカナダとオーストラリアとアメリカとイギリスと中国の上位3位大学を全て把握している、なんてことはありませんから、名前に頼るのは意味のないことです。

留学の際の学校選びは、プランニングの大きな部分を占めるもの。

その選び方・情報収集の仕方は、そのまま、就職活動時の企業探しにも繋がります。

大手企業だから・なんとなく・良い会社だと就職課で言われたから・内定が出たから・・・。

ただ、就職の時は、学校のようにアプリケーションを送れば入れてくれる、ということはなく、選考される立場になります。

留学も1つの練習だと思って、必ず自分で、納得いくまでしっかりと、調べてみてください。

資格はいらない

同じくよくある留学前のご質問に、「カナダで資格を取りたいのですが」というものがあります。

ないし、学校プログラムでも、「それは資格ですか?」と、資格にこだわる方は日本人に多いように思います。

特に転職の方の場合は、わざわざ行くのだから何か形になるものをと思われると思いますが、企業が人材に求めているのは、「資格」ではありません。

いずれにせよ仮にカナダで資格を取っても、ほとんどのものはそのまま右から左に日本では使えません。

※例外的にJ-Shineなど日本の認定資格対策の授業が、カナダで取れる、というようなことはあります。

特にキャリアプログラムや進学の場合は、英語(時には日本語)で、プログラム内容については資料があります。

内容をよく読み、何を学ぶのか、ということを中心に選ぶことで、今度は逆に、「英語で何を学んできたのですか?」「なぜ、そのプログラムを学ぼうと思ったのですか?」に自分なりの回答が用意できるようになるはずです。

Don't burn your bridges.

「橋を燃やすな」とは文字通りの意味ですが、来た道が戻れないよう燃やして落としてしまうことから、縁を切る余計な敵を作るというような意味合いで使います。

日本語には旅の恥は搔き捨てという言葉があるため、それと大きな対比になりますね。企業が求める資質の中に、コミュニケーション能力誠実性という言葉がありましたね。

そして、企業は結局仕事ができる人が欲しいのです、とも言いました。

仕事ができる=個別の能力が高い、ではありません。

上司や同僚・後輩や取引先ともきちんとした関係を維持して組織の中で仕事を円滑に進めて行ける人を企業は求めているわけで、それは、組織という性格上、とても自然なことです。

ですが、カナダという外国に来て、普段のコミュニティから離れると、旅行と同じように掻き捨てタイプになる方は結構いらっしゃいます。

現地アルバイトをバックレた、ホームステイ先で好き勝手なふるまいをした、支払いなどをぶっちぎった、そんな留学経験を経て、就活でコミュニケーション能力をアピールするのは難しいですよね。

参考

ワーホリやコープでの仕事探しに必要なリファレンスとは?

多くの方にとっては、全く新しい環境に一人で飛び込むという経験は人生の中でもはじめてか、数回目のことでしょう。

この時に出会う人たちの扱い方は、社会人として新たな人間関係を構築する時の態度と似たものになります。

同じくコミュニケーション能力を高める練習だと思って接してみてください。

実際、「仕事を紹介してもらった」「良い条件のシェアハウスを引き継がせてもらった」「教科書や留学役立ちグッズを安く譲ってもらった」なんて話も非常に多くあります。

まとめ

いかがでしょう。

少し長くなりましたが、就職を見据えた留学準備について、少しイメージができたでしょうか。

シリーズでお話できたらと思いますので、また次回を楽しみにしておいてください。

留学は大きな投資ですよね。

カナダ留学を検討している皆さんが、日本で、投資に見合った良い就職というリターンが得られるよう、カナダ留学コンパスではお手伝いしています。

執筆者 執筆者
Merumo

カナダオンタリオ州在住。カナダ歴13年の経験をもとに、オンタリオ州の生活情報や留学情報をアップデートしていきます。

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