2021年度のワーキングホリデーの申請には、ジョブオファーが必須となりました。
日本にいるうちから仕事を探すために、英文のレジュメ(履歴書)を作っている方も多いと思います。
また、カナダで大学やカレッジに進学した方で、サマージョブへの応募のために始めて作った、と言う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日本でしたら定型の履歴書に記入していくだけで良いのですが、英文レジュメのテンプレートは多種多様で、迷ってしまいますね。
テンプレートなどを見ると、後ろの方に「Reference(リファレンス)」という項目を見かけると思います。
Reference(リファレンス)って何?
と思われた方も多いのではと思います。
多くの留学関連記事では、
- リファレンスがどんなものか
- 就職には大事
とは言った内容のものを見かけますが、「実際にそれが皆さんの将来のキャリアにダイレクトに影響してくるものだ」と言うところまで突っ込んで紹介していることは少ないと思います。
この記事では、カナダでの就職を考えている全ての方へ「このリファレンスがどれだけ重要か」をご案内させて頂きます。
このページの目次
はじめに
皆さん、せっかくカナダで働くなら、できる限り「イケてる」仕事に就きたいですよね?
給与などの条件だってできるだけ高い方がいいです。
北米には転職が多いと聞いて、カナダ人の就職が「良い条件を求めて場当たり的にあっちへこっちへと移動するようなイメージ」を持っている方が多いかもしれません。
ですが、カナダ人は恐らく皆さんが思っているよりも、かなり忍耐強く、そして良い意味で計画的です。
決して、最初から皆さんがイメージするような「イケてる」仕事に就いているわけではありません。
ボランティア・インターン・エントリージョブなど、ありとあらゆる機会でしっかりとした実績とコネクションを作り、それを糧に次のステップを勝ち取り、着実にキャリアを進めて行く、それが多くのカナダ人のキャリアアップの方法です。
ワーキングホリデーの方の中でも、
- ゆくゆくは現地就職や移民などを考えている
- 既にカナダでの就職は果たしているものの、キャリアチェンジやステップアップ転職を希望している方
などは、こういったカナダ就職の実際を知った上で就職活動を進めて頂きたいと思います。
Reference(リファレンス)とは?
まずReference は、単語としては「参照」という意味になります。
日本語と同様に、「詳しくはこちら」というような意味合いでも使われます。
ですが、就職の場面で使う場合は「推薦」や「経歴の照会(リファレンスチェック)」などという意味で使われます。
応募者は最初に提出するレジュメに、「レファレンス先はこちらです」と記載するのが一般的です。
実際の雇用ステップでは、書類審査の段階で照会することは少なく、面接などを行って候補者を複数絞った上で、企業側が応募者のスキル、過去の仕事ぶりなど、面接では知り得なかった情報を前職の上司などに直接確認することが多いです。
例えば小さな会社の場合は、店長やオフィスマネージャーなどの肩書の方が、直接面接をして、リファレンスチェックをすることもありますし、中~大企業では外部委託したリファレンスチェックのみを代行する会社の担当者が連絡してくるケースもあります。
リファレンスは就職だけではなく、
- ボランティア
- インターンシップ
- アパートの契約
などでも求められることがあり、カナダでは個人の信用をはかる上で重要視されています。
ボランティアの応募などであれば、パーソナルリファレンス(友人・ホストマザーや家主など個人の知り合い・先生など)でも大丈夫ですが、仕事の応募の場合は基本的に、仕事上で関わりのある方に求められます。
一番確実なのは直近/直属の上司ですね。
ただ、転職活動中であることをまだ会社には知られたくない場合などもありますので、その場合は1つ前の上司などにお願いすることもありす。
仕事をどうしても得たいので、「良いこと」だけを言って欲しい!とは皆さんが思うことです。
上司だと悪いことも言われてしまいそうだからと、安易に同僚や近い役職の人を書くのは、逆効果です。
リファレンスとはあなたという人材の「推薦人」になってくれる人ですから、できればそれだけの判断力や経験がありそうな人を書けるのが理想です。
馬が合わない上司、というのはどこの世界にもあるものだと思いますので、会社の先輩にお願いするなども可能ではありますが、マネージャーやスーパーバイザーなどのタイトル(役職)のある方が良いでしょう。
また、会社側も、候補者本人がレジュメや面接で言っていることに加え、実際にその候補者の働きぶりを知っている人に意見を求めたいわけですから、
- 2年以内の直属の上司
- パーソナル(友人など個人的な関係)ではなく仕事で関わった方を2名以上
などと指定されることもあります。
また、合計5名の名前を挙げさせるなどして、そこでプロフェッショナルコネクションがあるかを見るようなケースもあります。
カナダで初の就職でリファレンスを書ける人がいない場合は?
- ワーキングホリデーで今からカナダに来ようと考えている方
- カナダで初めて就職する方
にとっては、「直近の上司は日本にいる日本人で、英語ができない」という方も多いでしょう。
そうするとカナダ人ということになりますが、「カナダ人のコネクションなんかないのに誰を書けば?」と心配になりますね。
大前提としては
- 可能であればカナダ在住者
- 英語ができる方
を書くのが望ましいです。
「いや、だからこれからカナダの経歴を作りたいんですが!」と思われると思いますが、これは海外初就職の皆さんが経験するジレンマです。
単純に雇用主側の立場に立って考えると、忙しい中複数の方のチェックをするのは大変ですから、「時差無しにぱっと電話で、英語で話せてすぐに回答をもらえる人」の方が雇用主としては楽、というのは予想して頂けると思います。
ただ、明らかにカナダ滞在期間が少ないのはレジュメの経歴を見て分かりますから、無理やりに誰かを仕立て上げる必要はありません。
アルバイトなどの場合は、リファレンスチェックまではしないこともありますので安心してくださいね。
また、求められた場合でも、「カナダでは職歴がないので」と申し出て、パーソナルリファレンスとして
- カナダに来てから知り合った学校の先生
- 年齢が高くしっかりしている英語力の高いクラスメイトに頼む
という方法もあります。
他には、日本の上司に
- 事前にお願いしておくか(「このような問い合わせが来るかもしれませんがその際は教えてください。私の方でお願いしたい回答を準備します。」など)
- 自分で英語の推薦文を作成しておいて、上司にサインだけ頂戴する
といったこともできるでしょう。
「リファレンスがいなければ絶対雇われない」なんてことではないので、まずは面接に呼んでもらい、人となりを見て信用してもらえるよう、レジュメ自体をしっかり作りこむようにしましょう。
リファレンスチェックではどんなことが聞かれるの?
リファレンスは、雇用する側が「この人を雇いたい!」と決める検討材料の1つで、決まりきった形式はないです。
その方法は
- メール
- 会社指定の書面に記載
- 電話で聞き取り
など様々です。
内容に関しても、項目を挙げて細かく聞くところもあれば、「何かこの方のスキル・仕事ぶりについて特筆したいことがあれば教えてください」というように、ざっくりとした質問だけをすることもあります。
リファレンスチェックで高い確率で聞かれる質問
かなり高い確率で聞かれるのが、「Would you like to rehire him/her?(あなたは彼/彼女の再雇用をしたいと思いますか?)」という質問です。
- 辞め方がよくなかった
- 仕事の結果は出していたが上司と反りが合わず反抗的な態度を取っていた
- 同僚との人間関係が悪かった
などの在席時に明らかなマイナス点があると、ここでなかなかYESと言ってもらえないかもしれません。
特に辞め方は大事ですね。
「転職したい」と思うとやはり最後が適当になりがちですので、気を抜かないようにしましょう。
リファレンスチェックのよくある質問
それではReference チェックでよくある質問について紹介します。
①事実関係を確認するもの
- 雇用時期
- タイトル(役職)
- Job Descriptionは何ですか?
などがこれに当てはまります。
レジュメで経歴を随分盛っているような場合は、ここでばれてしまいます。
②スキルについて回答させるもの
- 強み/弱み
- 仕事の質
- コミュニケーション能力
- コンピュータースキル
- 業界知識
などをそれぞれ1~5で評価をつけてください、というような一覧リストで回答させることが多いです。
③社会人としての適性を確認するもの
あなたの会社に在籍中に
- 何か問題行為を起こすなどしていますか
- 遅刻や早退
- 勤務態度はどうでしたか?
などが当てはまります。
④本人の申し出内容の裏づけを取るようなもの
一例としては、「なぜあなたの会社を辞めたのですか?」などがそれに当てはまります。
⑤上司同士の申し送り
「応募者の管理上について、何かアドバイスはありますか?」といった内容になります。
リファレンスチェックで共有されない情報
ここまで見てくると、
上司同士で「私」に関する情報が全部やり取りされてしまうなんて、なんだか怖い。個人情報じゃないの?
などと思われた方もいるかもしれません。
実際その通りで、「リファレンスチェック」という名の元に何でもかんでも聞き取って良いものではありません。
例えば
- 人種
- 宗教
- 年齢
- 性別
- 婚姻ステータス
- 障害の有無について
- 犯罪履歴について
などの、こういったセンシティブな内容は、そもそも面接では聞いてはいけないことになっています。
日本の履歴書には、年齢・扶養家族の記載欄がありますので、それと同様に、「Female」「23 years old」などの情報を記載される方がいらっしゃいますが、実は記載義務は一切ありません。
リファレンスチェックという名目で過去の職場に連絡し、「〇〇さんは、女性ですか、男性ですか?結婚しているのですか、子供はいますか?」などという内容を聞かれることはありません。
また、法律で禁止までされているわけではありませんが「給料をいくら渡していましたか?」というような待遇に関する質問は避けるべきともされています。
「前の上司が意地悪で、私に不利益なことを言うこともあるんでしょうか?」と心配される方がいらっしゃいますが、問い合わせてくる相手も面接や雇用を何度か経験したそれなりのポジションの方のはずです。
前の上司がリファレンスチェックの場で
- 主観的な意見
- 本来触れるべきでない情報
を仮に言った場合、その上司のプロフェッショナルとしての姿勢が疑われますから、それほど心配しなくて大丈夫でしょう。
リファレンスはどう大事なのか?
ここまでを見て来て、カナダの就職ではリファレンスが一般的で重要なステップだと言うことが分かって頂けたと思います。
ではそれがどう、皆さんの仕事探しや移民、将来に繋がって行くか、という所です。
まず、分かりやすい所で言うと、2021年のワーホリは、仕事が事前決定になりました。
日本から仕事を探すのはなかなか大変ですし、とにかくワーホリのビザを取りたい!という気持ちが先行してしまって、「仕事が決まればどこでもいいや!」という気持ちにもなってしまいそうです。
ただ、ここまでの前提を聞いて頂くと、「まぁ、とりあえず決めて、働き出してから気に入らなければ辞めたらいいや」という考えは危険だ、と分かって頂けると思います。
ワーキングホリデーの最中に
- ボランティアをやってみたい
- できれば継続して現地で働きたい
- シェアハウスではなくアパートを借りたい
というように、事あるごとに「リファレンス」が必要になって来ます。
最初の一歩からきちんと積み上げるつもりで、慎重に就職先を選んでくださいね。
また、特に、いわゆる「バックレ」的にアルバイトを辞めてしまうのは絶対に辞めておいた方がいいでしょう。
日本からワーキングホリデーや移民のご相談を頂く際に
- 日系企業ではなく、カナダ企業に応募したい!
- 経験はあるので、わざわざカナダで進学などせず、自分が今日本でしている職種にそのまま勤めたい!
- ワーホリはもう取れない年齢だが、日本から現地企業に就職し、ワークビザの取得をサポートしてもらいたい
という希望をよくお聞きします。
それがなかなか難しいとお答えせざるを得ない理由の1つとしてやはり、カナダの雇用主から見た時に「リファレンス先(=カナダの職歴)がない」という点があります。
日本で外資系の会社や日本/カナダ双方に支店のある会社に勤めているなどし、英語でのリファレンスが可能などの場合は別ですが、経験や技術・スキルの「裏づけ」がない外国人と、カナダ国内にそういった裏づけが取れるリファレンスがいる人の2択なら、わざわざリスクを取って前者を雇用する雇用主は非常に少ないと言えるからです。
以前、「カナダ就職と永住権取得の理想と現実」の記事でもご紹介しましたが、カレッジ生や移民の方は転職等へのステップとして、最初はエントリージョブ、もしくは条件が自分の理想ではない仕事に就くこともあるます。
その際に
- たかだか、バイトだし
- 移民できる職種だからやるけど、とりあえず取れるまでの腰掛け
などどは考えてはいけない、ということもこの記事で分かって頂けたのではないでしょうか。
適当にそこそこの仕事しかしていなかった場合(少なくとも上司にそう見えていた場合)、いざ「やりたかった仕事 」「理想の条件の職種」に出会って応募し面接を通過しても、最後の最後でつまづいてしまう可能性があります。
特に、あなたが良い条件だ!と魅力に感じるような仕事は、恐らく他の多くの方もやりたい!と思う仕事でしょう。
雇用主側からそこからできるだけ優秀な方を選びたい、と考えるのは当然です。
自分の既に変えられない事実(職歴・学歴など)に、プラスの情報を載せてくれるリファレンスの存在は、決して無視できませんね。
リファレンスにおける工夫
リファレンスは、特に日本語の訳からは「推薦」とあるため
- 「私にとって良いことを言ってくれるものだ」と誤解
- 「前の上司がレファレンス先になるのは義務だ」
と思いこんでいる方も多くいらっしゃるようです。
これは、カナダ人向けの就職アドバイスとしてもよく言われることですが、「相手にお願いせず勝手にリファレンス先として記載するなどは失礼にあたる」のでしないようにしましょう。
また、その方の就職を決める大事や役割でもありますので、必ずしも受けてもらえるとは限りません。
関係を大して作っていなかった上司にリファレンスをお願いしたら「断られた」と言うようなケースもあります。
なので、
- 「今」の雇用主との関係は大事にしておく
- パフォーマンスレビューの際に次のステップや展望があれば口にしておいてオープンな状態にしておく
などの工夫も必要です。
もっと言うと、可能であれば
- 面接ではこのような内容を話したい
- 自分のどのような点を押して欲しい
突っ込んだお願いができると理想です。
直属の上司とは毎日顔を突き合わせて仕事をしているため、なかなか手放しで転職を喜んでもらえないこともありますよね。
また、同じ業務の先輩上司の場合は、見る目が厳しくなってしまうこともあるかもしれません。
そのような場合のために、業務上のやり取りのある他部署の責任者や、取引先の役職者などとの関係を作っておくと良いかもしれません。
最後に
多くの方が、「いつかは「カナダ企業」でバリバリと(できれば良い条件で)働きたい!」と考えていると思います。
それを叶えるために、私たちは「学歴」や「ビザ」などの点でお手伝いします。
これらはもちろん必要ですが、一番大事なのは「あなたがカナダで積み重ねた人間関係と実績(=リファレンス)」です。
今の職場やポジション、上司を踏み台にするためには、文字通り「踏みつける(義理を欠く)ようなやり方」「利用するような意識」ではいけません。
カナダでの就職は1つ目から(それが仮にボランティア・インターンや短期のものであっても)「後にリファレンスチェックを受ける」つもりで一生懸命こなしてください。
その自分の頑張りや、その時の上司や同僚との関係が、後で大きな力となって自分の未来のキャリアを後押ししてくれます。