カナダ留学コンサルタント、RCA 海外留学アドバイザー No.162002
カナダ在住20年以上のカナダ留学専門家。カナダ留学情報を発信するTwitterアカウントはカナダ以外も含む留学ジャンルでフォロワー数1位(1万人以上)、月間最大インプレッションは400万を超える。現在までサポートしてきた生徒数は1万人以上。
最近、カナダの留学エージェント界隈である事件が起こりました。その内容は次のとおりです。
- 留学を予定している方が留学エージェントに連絡するも音信不通に
- 留学エージェントから返金される予定のお金が戻ってこない
実は弊社は、この問題となっている留学エージェントの代表と面識があり、2023年5月ごろから相談に乗っていました。
この件に関してSNSなどでは不確定な情報やうわさもあるため、弊社が把握している範囲で状況を説明します。
今回の問題のあらまし
今回の問題のあらましを説明すると、話題になっている留学エージェントの「資金繰り」が悪化したことで、生徒へのサービスを提供できなくなったということ。
留学を予定している生徒が、以下のような被害を受けてしまったようです。
- 留学エージェントから学校に学費が支払われない
- 留学エージェントからホストにホームステイ費用が支払われない
- 不審に思ったお客様がその留学エージェントに返金依頼しても期日に返金されない
留学エージェントは、生徒から預かったお金を留学先の学校やホームステイ先に支払います。ところが、預かっているその金が足りなくなったため、学校やホームステイ先に支払いができなくなりました。
その話がうわさとなって流れ、不審に思ったほかの生徒からもキャンセルが殺到し、どうしようもない状況になってしまったそうです。
実は弊社は、このエージェントと4年前に時期は業務提携をしていたことがあります。業務提携は当初に約束した報酬が先方より支払われないことが続いたため、短期間で解消しましたが。
ただし、それ以降もこのエージェントの代表とは情報交換などのやり取りは定期的にしており、その縁で今回の件についても「相談がある」とのことでお話を伺いました。
相談内容は融資の依頼でした。
未払い学費などの支払い期限が迫り、既存の留学生に迷惑がかかるとのことで「融資をしてほしい」という内容です。
弊社は今までのお付き合いと、既存の生徒様へ悪影響が出ないようにするために、できるかぎりのサポートをすることを申し出ました。
そこで、まずは本来の負債額を明確にして、きちんとした会社再建計画プランを立てましょうとオファーをしました。
ところが、弊社から「融資の条件」として依頼した書類が準備できず、情報共有をしていただいた売上、負債額などにも多数の誤りが見受けられていたのです。
その内容の確認をしている矢先に「同時並行で相談していた別の留学エージェントから融資などのサポートを受けることになりました」と連絡がありました。
ちなみに、弊社の代わりにサポートをすることになった会社はカナダ現地の老舗の留学エージェントです。私共も尊敬している、昔から知っている方がオーナーなので、安心して融資交渉をやめました。
今回の情報まとめは、この融資依頼の際に当事者から共有された2023年5月~6月の情報をもとにしています(2023年12月時点の情報ではありません)。
問題の原因は?
では、今回の問題が起こった発端はなんだったのでしょうか?
直接の原因は、一部の生徒の返金依頼に安易に応じてしまったことです。それが発端となり、五月雨的に返金依頼が生じ、それにもすべて応じたため運営資金がショートしました。
預かっていたお金がなくなってしまったことで、予定していた支払い(学校やホームステイへの支払い)ができなくなったというわけです。
端的に、代表の「経営」や「経理」に関しての認識が甘かったのがそもそもの原因だと言えるでしょう。
留学エージェントにとっては、お客様からお預かりする資金=売上ではありません。なぜなら、お預かりする資金から学費やホームステイ代などを払う必要があるから。
つまり、現時点で銀行残高に100万ドルあったとしても、会社の運営で使えるお金はそのうちの10〜20%ということもあるのです。
ところが、継続して売上があると感覚が麻痺してしまいます。実際に使える以上のお金を支払いに充ててしまう場合もありえます。
過去には同様の事例として、2008年9月に「ゲートウェイ21」が、2010年7月には「サクシーオ」という留学会社が、2017年3月には旅行代理店の「てるみくらぶ」が同じような状況におちいり、売上を運営資金として使い、資金ショートして結果的に倒産しています。
話を戻して、今回の事件を起こした留学エージェントの代表はとても人当たりがよく「困った留学生がいたら、できるかぎり助けよう」というスタンスの方です。
日本の不登校児に対し、カナダの教育制度を導入しての支援など、ほかの会社では真似ができない留学サポートをされていました。業界内でも信頼を経ており、15年以上運営していました。
ただ、今回の事件は代表の「人がよすぎたこと」が仇となってしまったのです。
それが、ある生徒への返金でした。
その生徒から返金の依頼がありましたが、留学エージェント側には責任がなく、契約上は返金をしなくてもよいケースでした。ところがこの代表は生徒のためを思い、返金してしまったのです。
「そんな理由でも返金ができる」といううわさはあっという間に広がり、返金依頼が殺到し、結果的に資金がショートしてしまいました。
先述しましたが、その「返金」に使われるお金は、まだカナダに留学していない生徒から預かっているお金です。
つまり、代表が目先で困っている人を助けようとしたばかりに、結果的にほかの大勢の留学生たちに迷惑をかけてしまっている状況だと言えます。
もちろん、代表に責任が一切ないわけではありません。
よく言えば、生徒の対応に精いっぱいつくそうとするマインドの方。悪く言えば、計画性がない、経営センスのない方と言えるかもしれません。
毅然とした態度で、契約に基づいて対応すればいいところを、私情を持ち込んで対応したがゆえに結果的にそれ以外の留学生に迷惑をかけてしまいました。
今後どうなるのか?
現時点(2023/12/14)でも、この留学エージェントのWEBサイトはまだ閲覧できる状態です。
事業自体を閉じるという話は2023年5月時点で伺っていたので、すでに新規の問い合わせは受けていないはずですが、詳しくはわかりません。
すでにこの留学エージェントを通じて学校やホームステイに申し込んでいる生徒の場合は、学校やホスト側が無償で受け入れたり、減額して受け入れるという動きが一部ではあったと聞きました。
一部の留学生に対しては、融資を引き受けた別の留学エージェントが対応に当たっているようです。
ただし、今でもまだ問題が解決されていない、返金をされていない留学生が一定数はいる模様です。
留学エージェントはどうやって選べばいい?
今回の事件を見てきて、留学エージェントの立場として皆さんにお伝えしたいことがあります。
それは、留学エージェントを選ぶときには注意してくださいということ。
たとえば、次のような「雰囲気」で留学エージェントを選ぶ方も多いでしょう。
- 検索したときに一番上に出てきたから
- インスタの投稿がおしゃれだったから
- 留学エージェントのランキングの記事で1位だったから
雰囲気だけではなく、「今現在、その会社に活気があるか」を見てください。これが重要です。
今回の留学エージェントの話ではありませんが、次のような話は弊社のお客様からも耳にします。
よく耳にする話
- 連絡しても返事が遅い
- 連絡内容に間違いが多い
- 依頼したことをおぼえていない
- 担当者がマニュアルに載っている内容以外の現地情報を知らない
- 申し込むまでは頻繁に連絡がきていたが、支払いを終えた瞬間にピタッととまった
- 留学先に到着後まったく連絡が取れない
依頼した留学エージェントがこのような対応だった場合は、会社の組織として未熟なこともあるので注意が必要です。
ではどういう点を見ればいいのかというと、以下の点です。WEBサイトでチェックしてください。
- 会社のサービス内容は明瞭か?
- どんな思想の会社なのか? 何を大切にしているのか?
- 本社はどこなのか? 現地情報をどれだけ把握しているのか?
- どんな人が働いているのか? スタッフの紹介ページ(スタッフ写真)があるか?
- 賑わっているのか? 最近の「生徒の体験談」はあるか?
- 最近どんな学生が留学しているのか?
- Googleレビューに低評価コメントは多くないか?(※ 具体的でないコメントの場合は関係者によるステマ投稿である可能性も)
とくにWEBサイトにある体験談の新鮮さや、現地でのセミナーやイベントの様子は要チェックです。現地でサポートをしているかしていないかが着実にわかります。
今回問題になった会社もウェブサイトの情報が古いうえ、担当者からの連絡も来ない、もしくは遅いことが多かったそうです。
詳しくはこちらの記事もご覧ください。
まとめ
留学には高額なお金が、少なくとも100万円以上のコストが発生します。
安さだけで選びたくなる気持ちもわかりますが、それ以上に「安心して任せられるか」を吟味することに関しては手を抜いてはいけません。
きちんと実態がわかり、信頼できるエージェントにぜひご相談ください。