カナダの祝日「真実と和解の日」とは?別名はオレンジシャツデー

カナダの「真実と和解の日」は、先住民迫害の歴史を知り、和解を進めるためのものとして2021年から法廷祝日となりました。

実は、カナダ政府によって非道な文化的ジェノサイド(大虐殺)が行われていたことがきっかけとなってできた日です。

この記事では「真実と和解の日」とはどんな日なのか、何をすべきなのかを紹介します。

カナダの先住民同化政策とは?

まず最初に「カナダの先住民同化政策」についてお話しします。

カナダの祝日「真実と和解」の日は、先住民同化政策がキッカケとなって作られたからです。

カナダでは、1830年ごろから1990年後半まで先住民同化政策が行われていました。

先住民同化政策とは?

先住民の伝統文化や言語を奪い、非先住民(主に白人ヨーロッパ系)の文化や慣習を強制的に行わせること。

先住民の子どもを無理やり親元から引き離し、各地の寄宿学校(Residential School)で生活させました。

校内では、母国語を話すことや民族の文化活動を行なうことを禁じ、多くの先住民の子どもたちを虐待していた事実が明らかになったのです。

驚くことに、カナダ政府が制度化したものなんですよ……。

国によってそんな政策が遂行されていたなんて、ショックで言葉になりません。

「カナダの先住民寄宿学校で215人の遺体が発見された」というニュースは、2021年に日本でも大きく報道されましたが、実際に対象になった子どもは15万人以上と言われています。

先住民同化政策の場所となった学校は130か所以上です。亡くなった子には3歳の子も含まれていたそう……。

215人の遺体が発見された2021年は、カナダ各地で子どもの靴やぬいぐるみを並べて追悼する動きもありました。

カナダはもともと先住民の住んでいた地。私自身、カナダに移民してきた者として本当に考えさせられる出来事です……。

何世代にも及ぶ非道な政策によって、たとえ生存者として寄宿学校から地域に戻ることができても、地域にとけ込めなかったり、PTSD(心的外傷ストレス障害)を抱えたり……。今でも苦しんでいる方がたくさんいます。

数年前にブリティッシュ・コロンビア州にある刑務所で行われた演劇を見に訪れた時、収容されている多くは先住民だったのが印象的でした。

この悲劇的な政策から、薬物やアルコール中毒に走ってしまう原因になった人もいることを知り、本当に心が痛んだのを覚えています。

カナダの祝日「真実と和解の日」とは?

悲劇的な政策の後、2021年に法廷祝日として定められたのがカナダの祝日「真実のと和解の日」です。

先住民同化政策によって寄宿学校から戻らなかった子どもたちを追悼し、生存者の声を聞き、敬意を示す日です。

祝日とは、本来ならお祝いする日ですが、「真実と和解の日」は痛ましい歴史を振り返ることで和解へのプロセスとし、後世に語り継いでいくために制定されました

カナダの祝日「真実と和解の日」はいつ?

カナダの祝日「真実と和解の日」は、毎年9月30日です。

カナダの祝日「真実と和解の日」は英語でなんという?

カナダの祝日「真実と和解の日」は、英語で「National Day for Truth and Reconciliation」と言います。

別名はオレンジシャツデー

「真実と和解の日(National Day for Truth and Reconciliation)」は、別名として「オレンジシャツデー」とも呼ばれます。

なぜでしょうか? 実は、9月30日はもともと「オレンジシャツデー」という日(法廷祝日ではない)でした。

そこに「真実と和解の日」が、オレンジシャツデーと同じ日に定められたのです。

9月30日はオレンジシャツを着て敬意を表す日として浸透しているのですが、なぜオレンジなのでしょうか。

明るいオレンジ色を着る背景には、こんな出来事が関係しています。

当時6歳だった先住民のフィリス・ジャック・ウェブスタッドさんは、1973年に寄宿学校へ連れて行かれました。

寄宿学校に到着すると、フィリスさんは着ていたオレンジ色のシャツを剥ぎ取られたのです。

フィリスさんは生存者として、今でもこの話を後世に伝えてくれています。この出来事から毎年9月30日はオレンジ色のシャツを着るようになったのです。

真実と和解の日(National Day for Truth and Reconciliation)にブリティッシュ・コロンビア州で開催されたPowwow(パウワウ)というイベントでは、多くの人がオレンジ色のシャツを着て参加していました。

カナダの祝日「真実と和解の日」には何をするの?

カナダの祝日「真実と和解の日」には具体的に何をして過ごすのでしょうか。

同じ悲劇を繰り返さないように私たちにできることをまとめたので紹介しますね。

【1】差別があった歴史を学び振り返る

カナダの祝日「真実と和解の日」に行なうことの1つめは、追悼することです。

もちろん追悼するだけでなく、先住民族迫害の歴史をしっかりと振り返ることも重要なので、カナダ政府公認サイトTruth and Reconciliationの団体のウェブサイトでも資料がまとめられています。

また、9月26日から9月30日は、Reconsiliation Week(和解の週)とされていて、地元の先住民のコミュニティや各自治体や大学などでも勉強会が行われます。

【2】オレンジシャツを着る

カナダの祝日「真実と和解の日」に行なうことの2つめは、オレンジ色のシャツを着ることです。

オレンジ色のシャツには「Every Child Matters(どの子どもも大切)」というメッセージが書かれています。

学校でも歴史を学び、オレンジ色のシャツを着て登校します。

ただし、オレンジ色のシャツを買う場合は、先住民の方や先住民の団体がデザインしたものを選びましょう。

そうすることで、先住民のアーティストや企業を支援することになり、かつて壊された文化や伝統の価値を取り戻し、和解を促進することに繋がるのです。

先住民族でない人種の方が作ったオレンジシャツは、全く関係ない人たちがお金儲けのために作ったものなので「誰から買うか?」は大切です。

【3】イベントへ参加する

カナダの祝日「真実と和解の日」に行なうことの3つめは、イベントに参加することです。

9月30日は各地で先住民による様々なイベントが開催されます。

そのひとつがPowwow(パウワウ)と呼ばれるイベント。

パウワウとは先住民のコミュニティで開催される、歌ったり踊ったりする集会です。

実際に参加してきましたが、ものすごい数の人が集まっていました。

各ブースでは先住民の方が作ったアートやドリームキャッチャー、オレンジシャツなどが販売されていました。先住民の方が作ったものを購入するのも今私たちができることです。

こちらの写真はティピテントです。円錐型のテントで先住民の方が移住式のお家として利用しているもの。

中では子どもたちへ絵本の開き読みが行なわれていたり、歴史をお話ししてくださいました。

Every Child Matters(どの子どもも大切)と書かれたステッカーも配っていました。

先住民の方がデザインしたタトゥーシールもありました。

会場の真ん中では先住民の方の伝統的なダンスが披露されます。小さな子どもも堂々と踊っていましたよ。

寄宿学校ではこうした民族ダンスを踊ることも禁じられていたんですよ。剥奪されても、歌い踊り継がれてきたことに胸が震える思いになりました。

人が多すぎて真正面から写真を撮ることができなかったのですが、踊りや歌にたくさんの歓声がありました。

現在のパウワウは楽しんだりお祝いをするだけでなく、亡くなった子どもたちへの追悼の時間が設けられていました。

こうしたイベントに参加することで、生存した先住民の方の声を聞けます。家に帰れなかった子どもたちを偲び、学びに変えていくことがとても大事になります。

【4】先住民の方の言語を学ぶ

カナダの祝日「真実と和解の日」に行なうことの4つめは、先住民の言語を学ぶことです。

パウワウのイベントブースでは、先住民の方から言語を学ぶクラスがあることも紹介されていました。

一体なぜ、先住民の言語を学ぶことが大事なのでしょうか?

それは文化を取り戻すためです。

寄宿学校に強制的に入れられた時、子どもたちは自分の言語を話すことも禁じられていました。

もし言語が消滅してしまったら、文化も消滅していきます。

カナダには70以上の先住民の言語が存在すると言われています。もし地元の先住民コミュニティに言語クラスがある場合はのぞいてみてくださいね。

【5】バノックを食べる

カナダの祝日「真実と和解の日」に行なうことの5つめは、先住民が作るバノック(banonok)を食べることです。

パウワウのイベントではバノック(banonok)が売られていました。

下記写真がバノックです。揚げパンのようなものですね。

バノックを食べるために、フードトラックの前にはたくさんの人が並んでいました。

当時、狩猟と漁業を禁止されてしまった先住民は、新しい食べ物を食べることを強制されました。

小麦粉と油など利用可能な資源だけを使って、バノックを作るようになったと言われています。

今ではバノックは先住民の代表的な食として伝わっています。

バノックを自宅で作ることもできますが、先住民の方が作ったバノックを購入して食べることが先住民の方へのサポートになりますよ。

【6】保育園では実話を元にした絵本を読む

カナダの祝日「真実と和解の日」に行なうことの6つめは、先住民差別の歴史を伝える絵本を子どもたちと読むことです。

同じ悲劇を繰り返さないために、幼い頃から歴史を伝える必要があります。

保育園や幼稚園では、カナダの先住民同化政策に関する絵本を毎年読みますよ。

「With Our Orange Hearts」という絵本は、オレンジシャツを剥ぎ取られたフィリスさんの実話絵本です。

幼い子でも読めるように、文章が繊細に表現されているので、幼児さんから読めます。

図書館でも先住民の歴史を学ぶ本のコーナーが設置されているので、ぜひチェックしてみてくださいね。

まとめ

この記事ではカナダの祝日「真実と和解の日」について書きました。

こんなにおぞましい出来事が1990年後半まであったなんて、本当に耐え難いものがあります。

カナダ政府は謝罪し補償金を支払いましたが、先住民の差別問題はまだ解決したとは到底言えず、これからも正しい歴史の認識を広め、後世へ語り継いでいくことが求められていきます。

この悲惨な歴史を後世に伝え、学び続けていきたいです。

執筆者 執筆者
Megumi

カナダ在住ベテランWEBライター。
カナダでの長期滞在・オーストラリアでの語学留学などの豊富な海外経験をもとに、海外生活・英語学習に関する記事を500記事以上執筆。
カナダではカレッジ進学やCo-op留学もしているので、その実体験に基づいた記事が得意。

過去には英会話講師として生徒の英会話力アップ・英検/TOEICスコアアップをサポートした実績や、大学の留学アドバイザーとして700名以上を海外に送り出した実績もある。

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