2014年からカナダ在住。カナダ人同性パートナーと「ふたりママ」として双子を子育て中。LGBTQ+やジェンダーバイアスをブログ「旅するダンサー自由記」にて発信。カナダでダンススタジオ経営&日本語保育園勤務。多様な家族を伝える絵本「かぞくです」作者。
毎年3月31日は国際トランスジェンダー可視化の日(International Trans Day of Visibility)です。
この日は世界中のトランスジェンダーの方々にとって大事な記念日。
カナダでもジャスティン・トルドー首相が「あなたの命が大事」だと力強く発言し、トランスジェンダーやノンバイナリーの当事者に寄り添いました。
このページの目次
国際トランスジェンダー可視化の日とは?
国際トランスジェンダー可視化の日とは、トランスジェンダーの方たちの人権を守るために、差別の現状を理解し認知度をあげる日です。
国際トランスジェンダー可視化の日はいつ?
国際トランスジェンダー可視化の日は毎年3月31日です。
参考
似ている記念日にはトランスジェンダー認知週間(11/13〜11/19)や国際トランスジェンダー追悼の日(11月20日)もあります。
国際トランスジェンダー可視化の日の英語表記・語源
国際トランスジェンダー可視化の日は英語で「International Transgender Day of Visibility」と表記されます。
日本語では「国際トランスジェンダー可視化の日」または「国際トランスジェンダー認知の日」と訳されますね。
Visibilityは「目に見えること」という意味。つまり、トランスジェンダーの存在を認知する日です。
国際トランスジェンダー可視化の日の創設者
国際トランスジェンダー可視化の日の創設者は、米国のミシガン州出身のレイチェル・クランドール(Rachel Crandall)さんです。
2009年に創設されてから、米国にある「トランス生徒の教育団体(Trans Student Educational Resources)」によって広められています。
日本でもトランスジェンダーの当事者の方がメッセージを出したり、だんだんと広まってきていますね。
国際トランスジェンダー可視化の日: カナダでの出来事
国際トランスジェンダー可視化の日にカナダでも様々なアクションがあったので紹介します。
トランスジェンダーの旗が掲げられる
毎年3月31日にはカナダのいたるところでトランスジェンダーのフラッグが掲げられます。
下記ビデオは、カナダのビクトリアの州議事堂前にトランスジェンダーフラッグが掲げられた様子です。(16分30秒〜)
他にも、官邸や警察署、大学や市役所の前にトランスジェンダーのフラッグが掲げられるんですよ。
政府関係の方や学校の先生も積極的に関わってくれるのは心強いですね。
「当事者である」というだけの理由で暴力を振るわれたり、殺害されたトランスジェンダーの方々もたくさんいます。
国際トランスジェンダー可視化の日は、理不尽な差別問題を多くの人に知ってもらうことも目的のひとつです。
カナダの首相が毎年メッセージを出す
下記は2022年3月31日に、ジャスティン・トルドー首相が「あなたの命が大事」とTwitterでメッセージを発信されたものです。
日本語に訳したものもご覧ください。
トランスジェンダーおよびノンバイナリーのカナダの方々へ
あなたは大事です。あなたの命は大事です。私たちは、国際トランスジェンダー可視化の日、そして日々、あなたが本当の自分として人生を送れるように取り組んでいきます。あなたは価値のある存在に他ならないのです。
さかのぼると、ジャスティン・トルドー首相は2016年からトランスジェンダー可視化の日にほぼ毎年メッセージを出していました。
トルドー首相は2015年からカナダ首相を務めています。つまり、就任した翌年からアライを表明している計算になりますね。
アライとは?
アライとは、味方を表す英語「ally」が由来。LGBTQ+当事者たちに共感し支援する人のこと。
下記は2016年3月31日の国際トランスジェンダー可視化の日に発信されたもの。
以下は日本語訳です。
本日、トランスジェンダー可視化の日に、私たちはカナダと世界中のトランスジェンダーの人々の生活と業績を祝います。
国のトップの人がこんなふうにアライでいてくれることに感激です。
ジェンダー平等を担当する秘書が声明文を発表
ジェンダー平等を担当する政務次官のケリー・パッドン氏が国際トランスジェンダー可視化の日を記念して声明を発表しました。
2023年に発表された声明文の一部を紹介しますね。
“Visibility matters. Everyone deserves to see themselves and their contributions represented in our communities. And yet, so many transgender people continue to be marginalized and discriminated against.
Parliamentary secretary’s statement on Transgender Day of Visibility
訳すと「可視化が大事です。誰もが自分自身と自分の貢献を私たちのコミュニティで表現する権利があります。それでもなお、非常に多くのトランスジェンダーの人々が疎外され、差別され続けています」になります。
“The reality is that we are all different, which makes us stronger as a society. Attempts to erase the existence of trans people and to block their participation in society is the basis for transphobic discrimination — and, too often, violence.
Parliamentary secretary’s statement on Transgender Day of Visibility
訳は「現実には、私たちは皆異なっており、それが社会として私たちをより強くしています。トランスジェンダーの人々の存在を消し去り、社会への参加を阻止しようとする試みは、トランスフォビア差別の根底にあり、暴力の原因にもなっています」です。
政府の要職についている方が差別に対してハッキリとNoを示す姿勢に勇気付けられますね。
“This is also why our government continues to reduce barriers and improve services for transgender, non-binary and Two-Spirit people. And we will continue to listen, because the perspectives of those with lived experience matters.
Parliamentary secretary’s statement on Transgender Day of Visibility
こちらを訳すと「これが、私たちの政府が、トランスジェンダー、ノンバイナリー、トゥースピリットの人々のための障壁を減らし、サービスを改善し続けている理由でもあります。そして、生きた経験を持つ人々の視点が重要であるため、聞く姿勢を続けます」になります。
トランスジェンダーだけでなく、ノンバイナリーやトゥースピリットの方々のことも言及していました。すでにさまざまな性があることは当たり前として認識されていますね。
ノンバイナリー/トゥースピリットとは?
ノンバイナリーとは自身の性自認・性表現に女性とも男性とも当てはまらない、当てはめたくない人のこと。トゥースピリットとはカナダや北米の先住民族の女性と男性の精神を持つ人のこと。
カナダの図書館にトランスジェンダー関連本が置かれる
カナダの図書館にはLGBTQ+の関連本が置かれていましたよ。
ティーン向けのコーナーにも置いてありました。
一部の国では公立学校や図書館でLGBTQ+をテーマにした本は禁書となっている国もあり、大きな議論を呼んでいます。
しかし、カナダでは積極的にLGBTQ+をテーマにした本を図書館や学校で扱い、正しい知識を広める動きがあります。
インクルーシブな環境を作るために社会全体で取り組んでいるんだなと感じますね。
国際トランスジェンダー可視化の日まとめ
LGBTQ+の中でもトランスジェンダーの自殺率は高いと言われていますが、国際トランスジェンダー可視化の日を通して、さまざまな取り組みが行なわれているカナダ。
カナダでは学校や職場、地域社会のあり方はトランスジェンダーの方々が暮らしていることを想定されています。
トランスジェンダーの自殺率は?
University of Ottawa Department of Epidemiology and Community MedicineのMila Kingsbury氏らは、トランスジェンダーおよび性的マイノリティの自殺リスクを同年齢者と比較。トランスジェンダーの若者の自殺念慮リスクは約5倍、自殺企図リスクが約8倍であることを明らかにしました。Suicidality among sexual minority and transgender adolescentsより
可視化という言葉は当事者のカミングアウトを促すものではなく、差別がある現実の改善に国全体でしっかりと向き合いながら、命が大事であることや共に生きていることを伝える日。
首相みずから声をあげたり、必要であれば制度を整えたり、積極的に学校や公共施設で正しい知識を広めていることが、多様性を尊重した国を作っているのではないでしょうか。