カナダ留学コンサルタント、RCA 海外留学アドバイザー No.162002
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多文化主義を掲げるカナダは、様々な人種・民族で人口が構成されています。
多様な文化が共生する「モザイク社会」のロールモデルとして、世界からも注目されるカナダ。
人種の割合から人種差別まで、カナダの人口についてお伝えします。
カナダの人種について
カナダはそもそも、イギリスとフランスからの移民によって形成された多民族国家です。
それだけでなく、1971年には、世界で初めて「多文化主義(multiculturalism)」を国の政策として導入しました。
経済成長の基盤として、移民を積極的に受け入れる政策も掲げており、カナダ国内の民族情勢は年々多様化しています。
カナダは違いがあって「も」ではなく、「違いがあるからこそ」強くある
トルドー首相の言葉
多文化が分断することなく点在し、グラデーション状に共生・共存する様は「モザイク」と呼ばれ、「人種のるつぼ」であるお隣アメリカと区別されます。
カナダの人口
まずは、カナダの総人口を確認しましょう。
カナダの人口は、約3,699万人(2021年カナダ統計局推計、日本の人口の1/3以下)です。
ロシアに次ぐ、世界第2位の広い国土(998.5万平方キロメートル、日本の約27倍)に比べて、極端に少ないですね。
人口密度にすると、1平方キロメートルに3.7人しかいません!
日本の平均人口密度は329.7人(東京は6,399.5人!)/km2なので、いかに国土に比べ人口が少ないのかが分かりますね。
カナダの人種構成
カナダの文化は、ファースト・ネーションと呼ばれる先住民と、ヨーロッパからの開拓移民(入植)に加え、アジア系やその他の移民の影響を受け、多様な文化が入り混じって形成されています。
カナダ全土の人種の割合としては、大半を占めるヨーロッパ系白人が約70%、アジア系(南部)が約7.1%、中国系4.7%、先住民6.1%、黒人が4.3%となっています。
また、毎年25万人以上の移民を受け入れているカナダでは、非白人(racialized groups)の人口は年々増加傾向にあります。
難民の受け入れにも積極的で、最近ではウクライナ難民、以前にはシリア難民を、世界でもいち早く受け入れたことでも話題になりました。
2021年では、移民のうち約69.3%が非白人と答えました。
特に、バンクーバーやトロントなどの大都市部では、移民の割合が高くなっています(移民の95.3%が都市圏在住)。
エリアにより異なる民族構成
さらに詳しく見ていくと、人種・民族の構成は都市によって異なります。
トロントのあるオンタリオ州では、アジア南部・中国・黒人系が非白人クループで最大となっています。
同様に、バンクーバーのあるブリティッシュコロンビア州では、中国・アジア南部系、ケベック州では、黒人・アラブ系がグループの多くを占めます。
The portrait of racialized groups varies across regions. For example, the South Asian, Chinese and Black populations are the largest groups in Ontario, while the largest groups are Black and Arab people in Quebec, Chinese and South Asians in British Columbia, and South Asians and Filipinos in the Prairies.
https://www150.statcan.gc.ca/n1/daily-quotidien/221026/dq221026b-eng.htm
カナダでは様々な民族が入り混じって暮らしているので、エリアにより風習や食文化が異なることさえあります。
日本人の割合
なお、総人口に占める日本人の割合は、2021年時点で0.3%(約9.9万人)となっています。
そして、そのうちの過半数(59.2%)は、カナダ生まれの日系カナディアンです。
「カナダの大都市=日本人」が多いと誤解をする方がいまだに多いですが、トロントもバンクーバーも、全住人のうち日本人の占める割合は1%もありません。
カナダの人種差別について
海外に行くと日本人・アジア人への差別が多いと心配される方は多いようですね。
インターネット上には「良い情報」も「悪い情報」もあるので、いったいどれが正しいのか迷うはず。
端的に言えば、カナダに差別はほとんどありません
ここからは、カナダに21年以上住んでいる私が、カナダの人種差別について紹介します。
カナダに人種差別はほとんどない
カナダでは、「多分化・多様性」の推進が、国の政策の基盤となっています。
そのため、あらゆる差別はタブーであり、恥ずかしい行為という感覚が根付いています。
元々の、おおらかでフレンドリーな国民に加え、移民で国が成り立ってきたという歴史的背景もあるでしょう。
教育現場においても、意識的・無意識的なバイアスなどの理論をはじめ、「多文化を受け入れ尊重するとはどういうことなのか?どう行動すべきか?」について繰り返し考える機会が設けられています。
「みんな違うのが当たり前」という方針で、特に若い世代では、肌の色や宗教などの違いで特別な意識をもつ子どもも少ないように思えます。
また、セクハラをはじめ従業員が差別的な行為をした場合は、即解雇は当然のこと。
ひどい場合には、不買運動や店舗閉鎖にまで発展します。
それだけ、カナダ人は「多様であること」に誇りを持っており、他者を違いにより排除する考え方には徹底的に反対する意識が強いと言えます。
カナダにおいて、人種・肌の色・宗教・使う言語・性的指向(ゲイかどうか)などで差別されることは非常に少なく、留学生にとっても住みやすく居心地の良い国なのです。
カナダはLGBTQ+フレンドリー
差別を嫌うカナダでは、性的指向についても非常にオープンな環境が整っています。
ほとんどの公的書類の性別欄には男女以外の選択肢があり、同性婚をはじめとした権利も法律で保障されています。
始めてカナダを訪れた方は、街中で手をつないで歩く同性カップルの多さに驚くかもしれませんね。
個人の意思・人権を尊重する風潮が非常に強く、LGBTQ+に限らず、一般にマイノリティーとされる人々にも、非常に寛容で暮らしやすい国です。
差別はゼロではない
いくらカナダが多様性の寛容な国とはいえ、差別が全くないわけではありません。
非常に残念なことですが、人種や指向に関する差別は存在します。
大雑把に言うと、都市圏ほど多文化に寛容で、田舎のコミュニティは排他的になる傾向があります
日本でも、東京都心部では外国人が珍しくありませんが、地方では溶け込むのが難しいですよね。
例えば、ほぼ白人で構成されているコミュニティでは、やはりアジア人は目立ちます。
コロナパンデミックにおいては、アジア人を狙った事件も発生しました。
しかし、それに対する周囲の反応は「差別する方がおかしい」というのが圧倒的。
実際に、カナダ政府も「反アジア系人種差別」に対する対策を講じており、「いかなる形であっても容認できない」と述べています。
Racism, in any form, is unacceptable and has no place in Canada.
Addressing anti-Asian racism|カナダ政府公式サイト(英語)
万が一そのような事態に遭遇してしまったときにも、警察も「ヘイトクライムは許されない」という毅然とした態度で対応します。
実際のケース:イスラム系移民反対のデモの結果は?
ここで、カナダで実際に起こった、象徴的な出来事もご紹介しましょう。
IS(イスラム国)による世界同時多発テロが頻発している時期のことです。
人権について特に敏感なバンクーバーでも、「イスラム教信者の移民の受け入れを反対するデモ」が企画されたのです。
普段から人種差別とは、ほど遠い国なので、どのくらいの人がデモに参加するのかと気になっていました。
しかし、フタを開けてみれば、デモ参加者はたったの28名。
それに対し、「「イスラム反対デモ」に対して反対するデモ」の参加者は4,000人以上という結果に。
Thousands of people came out to Vancouver City Hall Saturday afternoon in support of an anti-racist demonstration countering a previously planned rally against immigration.
CTV Vancouver News
つまり、「イスラム系移民受け入れ反対!追い出せ!」という主張に対し、約143倍もの人々が「差別をするな!みんなで一緒に暮らしていこう」と立ち上がったわけですね。
このエピソードだけを見ても、カナダがどれだけ差別に対して敏感かが如実に分かりますね。
まとめ
カナダとは、多様な人種・民族が協力し合って成り立っている国です。これからも、多様性はますます広がっていくでしょう。
多文化を尊重し、受け入れるカナダで、他者をリスペクトしつつ自分らしく生きるとはどういうことか、体感してみてくださいね。