こんにちは! 発音マニアのヨスです。
今回は発音記号である [ ʒ ] の発音(有声後部歯茎摩擦音)についてです。
日本語の「じ」の子音の発音に似ていますが、同じなのでしょうか?
この記事では [ ʒ ] の発音の仕方、[ ʒ ] の発音のコツなどをくわしく解説します。
[ ʒ ] はどんな音声?
まずは、発音記号の [ ʒ ] の音声を聞いてみましょう。
次のような発音になります。

「ジュー」という音に聞こえますよね。
[ ʒ ] の発音の仕方
では、 [ ʒ ] を発音するときの口の中の「構え」はどうなっているのでしょうか?
[ ʒ ] は、こちらの図のような構えで発音されます。
![[ ʒ ] の発音](https://canada-school.com/english/images/article/sound-zh.jpg)
[ ʒ ] を発音する手順をまとめると次のとおりです。
[ ʒ ] の発音をする手順
- 舌の真ん中より「少し前のほう」と上前歯の「歯茎」の少し後ろをくっつけ、スキマを開ける
- 歯を閉じたまま「ジュー」というスキマ音を出す
[ ʒ ] は、専門的には「有声後部歯茎摩擦音」という発音です。
のどの震え | 有声 |
---|---|
発音される場所 | 後部歯茎 |
発音する方法 | 摩擦音 |
発音のコツ |
|
注意点 |
|
さらに詳しく紹介します。
【のどの震え】[ ʒ ] の発音は「有声音」
[ ʒ ] の発音は有声音であるため、のどの震えがあります。
「のどの震え(声帯振動)」というのは、日本語で言うと「濁点があるかないか?」の違いだと考えると理解しやすいでしょう。
たとえば、日本語の「た」は「のどの震え」のない無声音です。

「た」に濁点が付いて「だ」になると「のどの震え」のある有声音になります(厳密には「た」と「だ」の子音)。
[ ʃ ] を濁らせた音が [ ʒ ]
実は [ ʒ ] の発音は、 [ ʃ ] の発音を濁らせた音になります。
[ ʃ ] と [ ʒ ] の発音は、発音が作られる構えは完全に同じです。
![[ ʃ ]の発音](https://canada-school.com/english/images/article/sound-sh.jpg)
言い換えると、 [ ʃ ] に濁点をつけた [ ʃ ゛] の発音が [ ʒ ] ということです。
唯一の違いが、のどの震えがあるかどうか、つまり声を出すかどうかになりますよ(参考: 英語の清音・濁音)。
【発音される場所】[ ʒ ] の発音は「前舌と後部歯茎」で作られる
[ ʒ ] を発音するときは、「後部歯茎」と呼ばれる場所で作られます。
そのため、「後部歯茎音」と呼ばれます。

では具体的にどの場所を使うのか、「舌」と「上あご」に分けて紹介しましょう。
「舌」のどこを使う?
[ ʒ ] の発音をするときは舌の「真ん中」あたり(前舌)を使います。


舌の中のほうなのに「前」舌という名称はややこしいですが……。
「上あご」のどこを使う?
その前舌を「歯茎(歯茎の根本あたり)」の少し後ろにくっつけます。

口の中の名称についてはこちらをどうぞ。
【発音する方法】[ ʒ ] の発音は摩擦音
[ ʒ ] の発音は、スキマ音である「摩擦音」と呼ばれる音です。
摩擦音は、舌を上あごにくっつけて、舌と上あごの間にほんの少しのスキマを作って発音します。
下の図のようなイメージになりますよ。

このような「スキマ音」を後部歯茎と前舌で作った音声が [ ʒ ] です。
![[ ʒ ] の発音](https://canada-school.com/english/images/article/sound-zh.jpg)
こちらが実際の [ ʒ ] の発音になります。
「ジュー」というような音ですね。
【ポイント】 [ ʒ ] を発音するときのコツ
では [ ʒ ] を発音するときのコツを紹介します。
口を縦長にして「ジュ」と言う
[ ʒ ] の発音は、日本語の「ジュ」に似ています。
ではどう違うのかというと、口を縦長にして開くか、もしくは横長に開くかです。
まずは日本語の「ジュ」の子音である [ ʑ ] を発音するときの口の構えを見てください。
![日本語の「し」の子音 [ ɕ ] を発音するときの口](https://canada-school.com/english/images/article/sound-ji-front.jpg)
上の図のように、口を横に長く開いていますよね?
今度は英語の [ ʒ ] を発音するときの口の構えを見てみましょう。
![[ ʃ ] の発音を前からみたところ](https://canada-school.com/english/images/article/sound-zh-front.jpg)
日本語の「ジュ」よりも唇が丸まっているとも言えます。
スキマを作る範囲は日本語の「ジュ」のほうが広い
今度は口の中でスキマを作る範囲を見てみます。
日本語の「ジュ」の子音である [ ʑ ] を発音するときは、舌を上あごの「歯茎」+「硬口蓋」までの広範囲でスキマを作ります。
![[ ʑ ] の発音](https://canada-school.com/english/images/article/sound-ji.jpg)
上の図のように日本語の「ジュ [ ʑ ] 」を発音するときのほうが、ピンクに塗っている部分が広くなっていますよね?
それに比べ、英語の [ ʒ ] を発音するときは「後部歯茎」だけです。
![[ ʃ ] の発音](https://canada-school.com/english/images/article/sound-zh.jpg)

念のため説明しましたが、「舌の位置は……」と意識しなくても、口を縦に開くことを意識して「ジュ」と言えば [ ʒ ] になりますよ!
歯を閉じて発音する
[ ʒ ] を発音するときは、歯を閉じて発音しましょう。次の図をご覧ください。
![[ ʃ ] の発音を前からみたところ](https://canada-school.com/english/images/article/sound-zh-front.jpg)
こんな感じで [ ʒ ] を発音しているときは、「歯が閉じること」を知っておきましょう。

歯を閉じることで、窓のスキマ風の音のようなシャープな音になります。
「舌」と「歯茎」とのスキマで作られたスキマ音に、さらに歯を閉じたことで作られる「歯」と「歯」の間のスキマ音をプラスした音とも言えます。
息を強く吐く
あと、 [ ʒ ] を上手く発音するポイントは息を強く吐くことです。
「ジュー!」と摩擦させる音を、「大げさかな?」と思うぐらいの勢いで言ってみてください。
日本語の「じゃ行」を [ ʒ ] で言ってみた音声があるので聞いてみてください。
日本語の中で [ ʒ ] の発音をしても通じますが、「ジュッ!」という音が強く聞こえますね。
【確認】[ ʒ ] の発音の注意点
では、[ ʒ ] の発音をするときの注意点を紹介します。
日本語の「ジュ」と混同しない
日本語の「ジュ」の子音 [ ʑ ] と混同しないようにしましょう。
先述したように、日本語の「ジュ」よりも口を縦に開けて発音すれば [ ʒ ] の発音になりますよ。
![[ ʒ ] の発音を前からみたところ](https://canada-school.com/english/images/article/sound-zh-front.jpg)
図のように、唇が少し丸まり突き出ているとも言えます。
今度は、[ ʑ ](日本語の「じゃ行」の子音) と [ ʒ ] を発音したので、聴き比べてみてください。

最初に日本語の [ ʑ ] を言ったあと、英語の [ ʒ ] と言っています(これを2回繰り返している)。
破擦音 [ d͡ʒ ] と非常に似ている
今回紹介している [ ʒ ] の発音は、破擦音の [ d͡ʒ ] の発音と区別ができないレベルで似ています。
ただしこの区別ができなくても問題ないため、そこまで気にする必要はありません。
念のため、[ ʒ ] と [ d͡ʒ ] を比較した音声を用意しました。

摩擦音 [ ʒ ] を発音したあとに、破擦音 [ d͡ʒ ] を発音しています(これを2回繰り返し)。
母音をつけて「ジュ」と言わない
[ ʒ ] だけを発音するときに「ジュ」の発音にならないように気をつけましょう。
日本語の「ジュ」には「う」の発音、つまり母音が入ってしまいます。
子音は「音」、母音は「声」ということも知っておくと発音がよくなります。
日本語で [ ʒ ] が使われる例
[ ʒ ] の発音は日本語では使われません。
[ ʒ ] のあとに「あ・い・う・え・お」をつけて、「ʒa行」を発音してみました。

日本語の「じゃ行」と同じように聞こえますが、じゃっかん「シュ」という音が強く聞こえますよね?
実際のところ、同じような音なので英語圏の人に日本語の「じゃ」の発音をしても通じます。でも、どこか「なまっている」ように聞こえてしまうのです。
では、「じゃ行」と「ʒa行」の発音記号をまとめました。
じゃ行 | ʒa行(日本語にはない) |
---|---|
じゃ [ ʑa ] | * [ ʒa ] |
じ [ ʑi ] | * [ ʒi ] |
じゅ [ ʑɯ ] | * [ ʒɯ ] |
じぇ [ ʑe ] | * [ ʒe ] |
じょ [ ʑo ] | * [ ʒo ] |
「う段」を [ u ] ではなく、 [ ɯ ] と書いているのは、こちらのほうが日本語の「う」の発音に近いからです(参考: 日本語にある2種類の「う」について)。
ちなみにこちらの2つの記事も読んで、日本語の「ざ行」と比較すると、より理解が深まります。
まとめ
今回は英語にある発音 [ ʒ ] について紹介しました。
この発音は日本語の「じゃ行」の子音 [ ʑ ] と似ていますが別物です。
日本語なまりの発音でも通じますが、ぜひ練習して英語の [ ʒ ] が発音できるように練習してみてください。
こちらは関連記事です。