発音記号 [ l ] について

ヨス

執筆者

アメリカ留学で言語に興味を持ち、日本語教師の資格をとる。メディアなど掲載多数。著書は2冊。一般的には学ばない「日本語の音声」を学ぶことで英語の発音を習得し、独自の英語の発音習得メソッドを持つ。→ ヨスについてはこちら

今回は発音記号である[ l ]の発音(歯茎側面接近音)についてです。

この「L(エル)の発音」には、わたし自身が20歳でアメリカに行ったときに苦労した経験があります。

その後、完全にマスターして、どうやったらうまく発音できるかを独自に考えて記事にしました。

この記事では[ l ]の発音の仕方[ l ]の発音のコツなどをくわしく解説します。

[ l ]はどんな音声?

まずは、発音記号の[ l ]の音声を聞いてみましょう。

次のような発音になります。

おそらく、こちらのような反応をする人が多いのではないでしょうか?

いや、これは「エル」の発音じゃないだろ! 唸ってるだけだろっ!?

でも、これは本物の[ l ]発音です。詳しくは後述しています

[ l ]の発音の仕方

では、[ l ]を発音するときの口の中の「構え」はどうなっているのでしょうか?

[ l ]は、こちらの図のような構えで発音されます。

[ l ]の発音
[ l ]の発音

[ l ]の発音をする手順をまとめると次のとおりです。

[ l ]の発音をする手順

  1. 舌先を、上前歯の歯茎にくっつける
  2. 舌先は歯茎から離さず、のどの奥から「ウ〜」という唸り声を出す
  3. 舌先を離す

「エルの発音ができない!」という人が多い理由は、日本語には存在しない発音だからです。

日本語の「ら行」に置き換えて発音してしまうのですが、それではまったく通じないんですよね(←体験談)。

[ l ]は、専門的には「歯茎側面接近音(しけいそくめんせっきんおん)」という発音です。

のどの震え有声
発音される場所歯茎
発音する方法側面接近音
発音のコツ
  • 舌先を歯茎にくっつける
  • 舌の両サイドから唸り声を出す
注意点
  • 日本語の「ら」にならないように
音声[ l ]についてのまとめ

さらに詳しく紹介します。

【のどの震え】[ l ]の発音は「有声音」

[ l ]の発音は有声音です。

そのため、のどの震えがあります。

声帯振動(のどの震え)についてはこちらをどうぞ。

【発音される場所】[ l ]の発音は「歯茎」で作られる

[ l ]の発音をするときは舌の「先」を使います。

舌の先を上前歯の根本あたりである「歯茎(しけい)」と呼ばれる部分にくっつけます。

歯茎
歯茎

「歯茎」を使って発音するため、歯茎音(しけいおん)と呼びます。

口の中の名称についてはこちらをどうぞ。

【発音する方法】[ l ]の発音は「側面接近音」

[ l ]の発音は「側面接近音(そくめんせっきんおん)」と呼ばれる音です。

[ l ]の発音
[ l ]の発音

上の図のように、舌先と歯茎で口の真ん中の通路をふさぎ、舌の側面から唸り声を出すイメージです。

口の内側と舌の両サイド(側面)を接近させ、その間から声を出すので、側面接近音と呼びます。

声の流れは次の「矢印」のようなイメージになりますよ。

[ l ]の発音をしているところを前から見たところ
[ l ]の発音をしているところを前から見たところ

こんな音が出せましたか?

【ポイント】[ l ]を発音するときのコツ

では、[ l ]を発音するときのコツを紹介します。

まずは[ n ]の発音からはじめる

日本語にない発音である[ l ]を突然やろうとしても難しいので、まずは[ n ]の発音からはじめましょう。

いや、[ l ]の発音をしたいのに、なんで[ n ]なの?

こんなふうに思ったかもしれませんが、実は[ l ]と[ n ]の発音は口のなかの構えがほぼ同じなのです。

唯一の違いが息の出し方です。次のような違いがあります。

[ n ]の発音
舌先を歯茎にくっつけたまま、声を鼻から出す
[ l ]の発音
舌先を歯茎にくっつけたまま、声を口から出す

2つの発音をしているときの口のなかの図を比較してみてください。

[ n ]の発音
[ n ]の発音
[ l ]の発音
[ l ]の発音

口のなかの構えはまったく同じで、声を鼻から出すか、口から出すかの違いだけです。

[ n ]の発音から[ l ]の発音に移行する

では、[ n ]の発音をするために「ンー」という声を鼻から出してください。

この際に注意したいのは、日本語の「ん」の発音にならないこと。

舌先を必ず歯茎(上の前歯の根本あたり)にくっつけたまま「ンー」と言ってください

[ n ]の発音
[ n ]の発音

そして、「ンー」と言っている途中から、口から声を出すように「切り替え」てみましょう。

舌先を歯茎にくっつけたまま、「ンー」から「ウー」に声が変わるイメージで。

[ l ]の発音
[ l ]の発音

次の音声はわたしがやってみた例です。

[ n ]の発音が、途中から[ l ]の発音になっていることに気づきました?

舌先を歯茎から離した瞬間「ラッ」のような発音になる

先述しましたが、本当の[ l ]の発音は次のような「ウー」のような音です。

でも、ほとんどの人が聞いたことのある[ l ]の音は、次のような音ではないでしょうか?

そうそう、これがエルの発音だよね!

実は、先ほどの唸り声のような[ l ]の発音とまったく同じ発音です。

なにが違うのかと言うと、
「歯茎」に押し付けていた舌を離しただけ!

よく聞く「ラ」のような音は、舌を離した勢いで作られていたのです。

舌先を「歯茎」にくっつけたまま側面から声を逃がすイメージ

[ l ]を発音するポイントは、舌先を「歯茎」にしっかりとくっつけることです。

[ l ]の発音
[ l ]の発音

重要なのでもう一度言います。

舌先を歯茎に
くっつけたまま声を出しましょう。

舌先をくっつけたまま、舌の「両サイド」から声を「流す(逃がす)」イメージです。

舌先をくっつけるというより、「強く押し付ける」というぐらいでやってもOKです。

[ l ]の発音をしているところを前から見たところ
[ l ]の発音をしているところを前から見たところ

上の図のように、舌を使って「声がまっすぐ出る」のをふさぎ、舌の両サイドから声を流すように出します。

舌の位置はもう少し適当でもOK

[ l ]の発音は、上の前歯の歯茎(根本あたり)に舌先を押し当てるというふうに説明しましたが、その位置はもっと適当でかまいません。

実は、次の図のように上前歯の後ろに舌を押し当てていてもオッケーです。

舌先は歯のうしろでもOK
舌先は歯のうしろでもOK

次の画像はもはや「TH」の発音みたいに、舌を歯と歯のスキマから押し出していますが、これでもほぼ同じ発音になります。

舌先は歯と歯の間でもOK
舌先は歯と歯の間でもOK

発音する場所が変わっても、発音の仕方は先ほど説明したやり方と同じですよ。

どの位置に舌が来るのかは、[ l ]の前後の発音によって変わります。

【確認】[ l ]の発音の注意点

[ l ]の発音をするときの注意点を紹介します。

発音するときに口を丸めない

[ l ]の発音をするときに、口を丸めないようにしましょう。

上下の歯はくっつけないように、つまり口を閉じず、開いたまま発音しますよ。

[ l ]の発音をしているところを前から見たところ
[ l ]の発音をしているところを前から見たところ

日本語の「ら」よりも舌先を長くくっつける

[ l ]の発音をするときに、どうしても日本語の「ら行」の発音になる人がいます。

そんなときに意識してほしいのが、発音の長さです。

[ l ]は、舌で声の通路をふさぎ、舌の両サイドから声を流す音であるため、日本語の「ら」よりも音がじゃっかん長くなります

次の音声では日本語の「らりるれろ」と[ l ]の発音を使った「la・li・lu・le・lo」を発音しています。

「ら行」「 L 」の発音の順番で2回どおり言っています。

日本語の「ら行」よりも[ l ]の音声のほうが「タメ」があるような印象ではないでしょうか?

なぜ日本語の「ら行」のほうが時間的に短く聞こえるのかというと、「ら行」子音である[ ɾ ]の特徴にあります。

[ ɾ ]の発音
[ ɾ ]の発音

この図のように、「ら行」の子音[ ɾ ]は、一瞬だけチョンっと舌を上あごに「はじく」ような音声なのです。

「ら行」の子音[ ɾ ]は専門的には「歯茎はじき音」と呼びます。

「声を出す」のではなく「吐き出す」イメージ

[ l ]の発音で声を出すときですが、「アー」のような声ではないです。

のどの奥から「声を吐き出す」ぐらいのイメージで「ウー」と言ってみましょう。

舌は、歯茎に強く押しつけたまま。

[ l ]の発音
[ l ]の発音

「アー」ではなく、「ウー」と言いながら口を丸くしないようにすると、上手く発音できますよ。

日本語で[ l ]が使われる例

[ l ] の発音は日本語では使われません。

英語の[ l ]を発音するときに日本語の「ら行」に置き換えても、通じることはありえないほど異質な音声だと覚えておきましょう。

ら行la行(日本語にはない)
ら[ ɾa ]*[ la ]
り[ ɾi ]*[ li ]
る[ ɾɯ ]*[ lɯ ]
れ[ ɾe ]*[ le ]
ろ[ ɾo ]*[ lo ]
「ら行」と「la行」

日本人でも人によっては、「ん」の後に続く「ら」を[ l ]で発音する人もいます。たとえば「(らん)」の「ら」が[ la ]になるみたいに。

「う段」を[ u ]ではなく、[ ɯ ]と書いているのは、こちらのほうが日本語の「う」の発音に近いからです(参考: 日本語にある2種類の「う」について)。

ちなみに、[ l ]に「あ・い・う・え・お」をつけた「la行」を音声にしてみたのでご参考に。

日本語の「ら行」についての記事もご参考に。

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まとめ

今回は日本語にはない発音である[ l ]について紹介しました。

最後に[ l ]の発音の仕方をおさらいしましょう。

「L」の発音まとめ

  1. [ n ]の発音をするときの舌の位置
    上前歯の根本あたりに舌先をくっつける
  2. その舌の位置で口を丸めたりせず、舌を強く押し付ける
  3. 喉の奥から「うめき声」を出すように声を出す(舌の両側から声を流すイメージで)

日本語にはありませんがほとんどの言語にある発音で、慣れるとかんたんです。

あと、「子音だけ発音する」ということにも注意してくださいね。

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アメリカ留学で言語に興味を持ち日本語教師に。その後、自分が「音声学」に猛烈に惹かれることに気づく。一般的には学ばない「日本語の音声」を学ぶことで英語の発音を習得し、独自の英語の発音習得メソッドを持つ。>>ヨスについて詳しくはこちら
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