英語と沖縄方言(ウチナーグチ)の不思議な共通点とは? これって偶然なの?

サッシ

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WEBライター。旅をしながらブログを書いて生活。塾で英語を約20年教えた経験あり。早稲田大学 教育学部卒業。→ サッシについてはこちら

日本の中でもっとも「アメリカっぽい都道府県」といえば、「沖縄」が浮かびませんか?

たとえば沖縄の那覇市の中心地「国際通り」周辺を歩いていると、実際にハンバーガーショップやアロハシャツのお店をよく見かけます。

そんなアメリカンなテイストを感じる沖縄ですが、なんと言語も英語とピッタリ一致しているところがあるんです!

今回は、沖縄に5年間住んでいた私が、英語と沖縄方言(うちなーぐち)の不思議な3つの共通点を紹介します。

英語と沖縄方言(うちなーぐち)の不思議な3つの共通点

では、英語と沖縄方言の不思議な共通点を紹介します。

空から見た沖縄
空から見た沖縄

英語の「er」のように「長音」で人を表す

まず一つ目の共通点は、単語の語尾に「er(実際には『長音(ー)』)」を付けると「それをする人」を表すということです。

たとえば、英語で「歌手」は何と言うでしょうか? そう、「singer」ですね。

その成り立ちを考えてみると、「歌」という名詞「sing」の語尾に「er」を付けた成り立ちになっています。

sing(歌)+ er = singer(歌う人 = 歌手)

他にも「make」に「er」で「maker(メーカー) = 作る人・モノ」、「play」に「er」で「player(プレーヤー)= する人(選手)」という具合ですね。

沖縄方言「ハルサー」の例

では、沖縄方言の場合はどうでしょうか?

たとえば、沖縄では「農家の人」のことを「ハルサー」と呼びます。

この「ハルサー」は「畑」を表す「ハル」という言葉から来ているんですね。

つまり、発音の成り立ちとしては「ハル」に「サー」が語尾にくっ付いて出来ているので……そう、英語とまったく同じ作りなんです!

ハル(畑)+ サー = ハルサー(畑をする人=農家)

アルファベットにすると、こんなふうに見えますよね。

haru(畑)+ er = haruser

沖縄方言にある「人化」の例

他にも、こんなものがあります。

沖縄方言にある「人化」の例

  • 海を歩く人(漁師)…… ウミアッチャー
  • 内地(沖縄以外の本州など)出身の人 …… ナイチャー
  • 髪を切る(断髪をする)人(床屋・美容室)…… ダンパチャー

……など、英語の「『er』が付くと人を表す」のような雰囲気の言葉がいろいろ存在します。

面白いですよね~。

私は「床屋」を表す「ダンパチャー」という言葉がお気に入りです!!

「行く」は「来る」!?

続いて2つ目の共通点は、「行く」を「来る」と表すという点です。

たとえば、誰かと電話していて「今からそちらに向かう」という意思を伝えたい場合。

日本語の標準語だと「今行くね~」のように言いますよね。

では、英語だと何と表すか知っていますか? 答えは「I'm coming.」です。

相手のいる場所に「行く」ときも「come」
相手のいる場所に「行く」ときも「come」

日本語では「行く」なので「go」を使いたいところですが、実は「come(来る)」で表すんですよね。

英語では自分が相手のところに行くときも「COME」を使う

これは、日本語と英語の「発想の違い」から来ています。

日本語は「自分視点」で発想するので、自分が相手に向かうなら「行く」という言葉になります。

一方、英語の場合「相手視点」で、「相手のところへ自分が近づく」という発想になり、「come(来る)」を使います。

なんだか、英語の方がちょっと「気遣いが出来る人」な感じですね。もっと詳しくはこちらの記事をご覧ください。

沖縄方言も「来る」を使う!

さて、じゃあ沖縄方言の場合はどうなるのでしょうか?

ズバリ沖縄では……「今来ようね~」です!

そう、英語と同じく「相手視点」な発想で「来る」を使うんですよ。

この言い方を知らないと、沖縄の人と電話した場合に「ん?誰が来るの?」って思ってしまい、会話が一瞬ストップしてしまうことがあるのでご注意を!

沖縄でも二人称は「you」!?

最後の3つ目の共通点は、「二人称の呼び方」です。

英語だと、一人称(自分を指す言い方)は「 I 」で、二人称(相手を指す言い方)は「you」ですよね。

では、沖縄の方言では何と表すでしょうか?

「二人称(親しい仲で使う)」は「やー」

「あなた」に当たる表現は「ウンジュ」と言うのですが、親しい仲で「おまえ」に当たるニュアンスの場合は「やー」と言います。

なんと英語の「you」とほぼ一緒の言い方なんです!

「やー」は語尾を上げめに発音するので、かなり「you」っぽく聞こえるんですよ。

ちなみに、僕は沖縄に移住して中高生と話しているときにはじめて「やー」の表現に出合いました。

まだその言葉を知らなかった僕が「さっきから言ってる、『やー』って誰のこと?」と聞くと、「やーは……やーだよ」と言われて不思議な空気になった思い出があります(笑)。

(補足:沖縄方言で「家」も「やー」と言います。年配世代は厳密に「いゃー(ぃやー)」と発音して「家」と「おまえ」を区別する傾向がありますが、青年世代より下はどちらも「やー」で発音しているようです)

沖縄方言(うちなーぐち)ってどんな言葉? 英語と共通点が多い理由は?

なぜか英語と共通点が多い沖縄方言。

一致するポイントが多いことには、何か理由があるのでしょうか?

その謎を解明するために、ここで「沖縄方言(うちなーぐち)」についてもう少し詳しく紹介しておきますね。

沖縄方言(うちなーぐち)って?

沖縄方言(Okinawa dialect)は沖縄地方で使われている言葉の総称で、「うちなーぐち」や「しまくとぅば」とも呼ばれています。

厳密には沖縄の中でも地方によって方言はかなり違うのですが、今記事では総称して「沖縄方言」と言わせてもらいますね。

文法・単語の系統としては日本語の標準語と同じ系統なので「日本の方言の一つ」と言う考え方もあれば、標準語の人とは普通に会話が成立しないので「別の言語」という考え方もあります

ユネスコでは「別の言語」と認定されているようです!

沖縄方言には母音が3つしかない

日本語の標準語と比べてみると、「母音」の違いがあって面白いんですよ。

日本語だと「あ・い・う・え・お」ですよね?

それを沖縄方言に当てはめると「あ・い・う・」になります。そう、3つの母音しか使わないんです!

たとえば「米」は「コメ(kome)」ではなく「クミ(kumi)」という発音になります。

私が暮らしていた「久米島」は別名「クミの島」とも呼ばれていたので、まさにこれに当たりますね。

英語と共通点がある理由は?

さて、そんな特徴がある沖縄方言ですが、果たして英語との共通点が多いことに理由はあるのでしょうか?

答えはズバリ……「謎」です。

はい、いまだに誰も「よくわからん」そうです(笑)

英語からの影響ではなく偶然

たしかにアメリカっぽい雰囲気が多い沖縄ですが、アメリカとの関わりは1945年(昭和20年)のアメリカ軍による沖縄占領からなので、まだ100年も経っていません

沖縄方言「ウチナーグチ」はそれより遥か昔から存在しているので、言語的に「アメリカの影響を受けた」という可能性は無いと断言できるレベルです。

海外との付き合いで言えば、中国・朝鮮や東南アジアの方がずっと長い歴史がありますからね。

英語の沖縄方言の一致に関しては、現在のところ本当に「偶然の一致」というのが一般的な解釈です。

実際のところ、言語での偶然の一致はよくあることで、日本語で驚いたときに言う「あらまぁ」がマレーシア語(マレー語)でも「アラマー(alamak)」だったり、ハンガリー語で「塩っ気が足りない」を表す「シオタラン」だったり。

言語っておもしろいですねぇ!

まとめ

さて、英語と沖縄方言との不思議な共通点はいかがでしたでしょうか?

実際のところ、こういう共通点はまったく関係のない言語でもあるようですが、面白いですよね。

今回の内容をまとめるとこちらのような感じです。

まとめ

  • 「er」のような語尾に付けると「それをする人」
  • 「今行くね~」は「I'm coming」と同じく「今来ようね~」
  • 二人称(おまえ)は「you」と同じく「やー」
  • 一致する理由は謎
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中村サッシ
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塾講師として英語・国語の指導を約20年してきた経験のある「英語の文法オタク」。早稲田大学 教育学部卒。小学生の時から英語を学んでいた経験もあり。「毎日が生まれたて」という月間に100万回以上読まれる人気ブログも運営。>>サッシについて詳しくはこちら
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