こんにちは、アメリカ在住ライターのタカコです。
名前にはニックネームがつきものですよね。
私たち日本人の名前も、家族や親しい友人からは、本名以外のニックネームで呼ばれていることが多いのではないでしょうか。
もちろん、欧米で使われている名前にも、ニックネームがあります。
でも、このニックネームにも、日本人には一見わかりづらい感覚が含まれているんです。
今回は「欧米で使われている名前の謎」第3弾の最終回、「ニックネーム」について書こうと思います。
目次
「Bill」と「William」の関係とは?
この夏から、娘と「おさるのジョージ」の「おばけ伝説のなぞ」というDVDを何度となく見ています。
このDVDは、おとなも子どもも楽しめておすすめ……なことは別記事で書いたのですが、
そのお話の中で、登場する「Bill(ビル)」という男の子(「黄色い帽子のおじさん」の田舎にある別荘の近所に住んでいる)が、「William(ウィリアム)」と呼ばれていたのです。
「おさるのジョージ」のオリジナルである「Curious George」では、彼はたいてい「ビル」と呼ばれています。
細かなことですが、初めて気づいたときは……

「ウィリアム」って誰!? 何かの間違いでは?
……と思うくらいびっくりしました。
「ビル」という名前は短いし、「ウィリアム」って、なんだかかしこまった感じに聞こえるので……

「ウィリアム」は本名で、「ビル」はニックネームかな……
というところまでは想像できたのですが、「ウィリアム」から、なぜ「ビル」の「B」の音が出てくるのか、全くわかりませんでした。
「Bill」は「William」の短縮型
気になってウィキペディアで調べてみると、
ウィリアム(William。英語発音: [?wilj?m] ゥイリャム)は、英語の男性名。短縮型はウィル(Will)、ウィリー、ビル(Bill)、ビリー、リアム(Liam)。
ヴィルヘルム/ウィルヘルム(Wilhelm:ドイツ語)、ウィレム/ヴィレム(Willem:オランダ語)、ギヨーム(Guillaume:フランス語)、グッリェルモ(Gugliermo:イタリア語)、ギジェルモ(Guillermo:スペイン語)も参照。
ウィリアム – Wikipediaより引用しました。
やはり、「ビル」は、「ウィリアム」の短縮形なのですね。
William → Will → (Willy) → Bill → (Billy) → Liam
と、どんどん変形していく様子がわかると思います。
最後の「リアム」は、「ウィリアム」の名前の後半なので、これもわからなくはないのです。
でも、どうしても、なぜ「ビル」や「ビリー」の「B」の音が出てくるのか、全然わかりませんでした。
「頭の子音を変えてもいい」という法則
そこで、夫(アメリカ人)に聞いてみました。

ねえねえ「William」のニックネームって、「Bill」なの?

そうだよ。「William」は「Will」とか「Bill」とか。

うん。「Will」はわかる。なんで「Bill」? 音が全然違うんだけど……??

なぜって言われても……(もごもご)。それは、そうなってるんだよ。それでいいんだよ。
なんともすっきりしない会話ですが、欧米人には「なぜ」と思うことのない、普通に受け入れられる「音の変化」ということはわかりました。
「Richard(リチャード)」のニックネームは「Dick(ディック)」
代わりに夫は、もう1つ例をくれました。
夫の知り合いに「Richard(リチャード)」という名前の男性がいるのですが、彼のニックネームは「Dick(ディック)」なのです。
Richard → Rick → (Ricky) → Dick → (Dicky)
という流れです。これも頭の子音が「R」から「D」へ変わっています。
この「リチャード」が「ディック」となるのも、一般的な変化なんですね。
そうはいっても、日本人には、どうして「D」の音になるのかわかりませんよね。
「マサオ」が「ヒサオ」になるような感じ?
名前が短くなる変化ならわかりますが、頭の子音が変わると、全く別の名前に聞こえますよね。
すごい変化です。
でも、この日本人にびっくりな、「頭の子音を変えてもいい」というのが、一般的な法則なのです。
わたしも、「William」→「Bill」だけだとピンときませんでしたが、ほかにも例があると「あぁ、そうなのか」と思えるようになりました。
ニックネームは自由につけてもいい
こんなふうに「こういう名前のときにはこう!」と決まっているものもありますが、英語名のニックネームも、日本語名同様に好きにつけることもできます。
こうでないといけない! と決まっているわけではありません。
「William」という名前が「ウィル」か「ウィリー」、「ビル」か「ビリー」と変化することは多いですが、必ずしもそう呼ばれているわけではありません。
ラストネーム(苗字)の方からニックネームにしている人もいるでしょう。
英語名だって、キリスト教の聖書に出てくるような古典的な名前ばかりではありません。
でも、古くから使われている名前には、ある程度ニックネームのパターンが決まっているものがあるというのが特徴ですね。
ニックネームの中に見える愛情
ちなみにこちらの2つ。どちらが子どもに呼びそうな名前だと思いますか?
- Dick(ディック)
- Dicky(ディッキー)
「Dicky」の方がさらにくだけた感じで、子ども向けに聞こえませんか?
前述した「ウィル」と「ウィリー」、「ビル」と「ビリー」を比べても、そんな感じに聞こえませんか?
夫の知り合いの「ディック」さんは、けっこういいお年(60代)なのですが、数年前に亡くなったお母さんからは、ずっと「ディッキー」と呼ばれていたそうです。
彼は、三人兄弟の末っ子。しかも、上の二人とは年が離れていたので、かなりお母さんからかわいがられていたようです。
呼び名からしても、「かわいくて仕方がない」というのがわかります。
日本人でも、子どもの頃から使っていた「○○ちゃん」というようなニックネームを、お母さんがずっと使い続けることがありますよね。
いいお年のおじさんが、すごくかわいい名前で呼ばれていること。
母にとっては、息子はいくつになっても「子ども」という感覚は、どこも同じなのですね。
まとめ
いかがでしたか?
欧米で使われている名前の謎について3回に分けて書いてきました。
たかが「名前」でも、日本人にとってはわからない感覚が満載でしたね。
ニックネームは、いきなり違う子音が登場して、全く別の名前に聞こえる変化をするので、特にわかりづらかったと思います。
でもその「変化」も、英語名では一般的。
まだまだ日本人が「えっ!!!!」と驚愕するような「違い」が、英語にはあるのではないかと思わせてくれます。
このブログでは何度も使っているフレーズですが、言葉は文化の一部です。
それくらい、日本語と英語は歩んできた歴史も全然違うし、言語的にも文化的にも全く違うということですね。