「ミスド」を「misdo」と表記する理由は? 英語として読みやすくするため?

「ミスド」は英語でなぜ「misdo」と書く?
ヨス

執筆者

アメリカ留学で言語に興味を持ち、日本語教師の資格をとる。メディアなど掲載多数。著書は2冊。一般的には学ばない「日本語の音声」を学ぶことで英語の発音を習得し、独自の英語の発音習得メソッドを持つ。→ ヨスについてはこちら

「ミスタードーナツ」の略称は「ミスド」です。

これをアルファベットで書くときに「misudo」と書くはずですが、公式サイトでは「misdo」のように書かれています。

なぜ「 u 」がないのでしょうか? 入力ミス……ということはないので、わざということはわかります。

では、なぜ「ミスド」を「misdo」と書くのかについて、その理由をひも解いていきましょう。

そして、公式サイトにお問い合わせすると、予想もしていなかった事実が……

「ミスド」を「misdo」と表記している例

「ミスタードーナツ」を略して「ミスド」と呼ぶことが多いですよね。

公式サイトでも「ネットで注文できるシステム」を「ミスドネットオーダー」と命名していて、公式に企業側も使っているほど。

そして、ミスドの期間限定企画で、次のようなアルファベット表記をみかけました。

misdo meets 祇園辻利 Toshi Yoroizuka
misdo meets 祇園辻利 Toshi Yoroizuka

あれ?「ミスド」って「misudo」って書かないの?

そうなんです。同じ疑問をもった人、いるのでは?

ほかにも調べると「misdoclub card」というものも以前ありましたし、Facebookの公式ページURLも「https://www.facebook.com/misdo.jp/」になっています。

つまり、企業側として略称である「ミスド」を英語表記にしたときは「misdo」にするようにしているということです。

「misdo」と表記する理由は?

さて、なぜ「misudo」ではなく、「misdo」と表記するのでしょうか?

これは単純に「su」と表記すると、英語として読んだときに発音しにくいからでしょう。

「misudo」と書いてしまうと、おそらく英語のネイティブは「ミスゥードゥ」のように発音してしまうと思います。

アクセントも「su」にきてしまい、本来の発音よりも「スウー」のようにおおげさに発音してしまうのです。

「super」の「su」も「true」の「ru」もアクセントがきて、強く言いますよね。

そうなると、本来の発音と大幅に違ってくるので、子音だけの「 s 」にしているのでしょう。

「 u 」を取っておけば、[ s ]の発音だけになるため /mísdou/ のように発音してくれるという感じで。

車のメーカー「マツダ」を「Mazda」と書くのも同じ理由だと思われます(この場合はさらに子音も、読みやすく「ts」→「 z 」に変更していますが)。

ちなみに、わたしの名前「Yosuke(ヨウスケ)」も、普通に読まれると「ヨウスーキー」のように、「スー」のところにアクセントがきてしまい不自然です。

これも「 u 」を消して、「Yoske」と書いたら、「ヨスキー」と呼んでくれるはず。

まぁ「ケ」が「キー」と読まれてしまうのはどうしようもないですが(参考:Pokémonの「é」のチョンはなに?)。

日本語でも「ウ段」は音が消える

実はですが、日本語でも「ウ」の音が消えることがあります。

日本語には「無声子音」に挟まれた母音「ウ」と「イ」は無声化しやすいという特徴があるんです(※ 地域によっては無声化しない)。

「無声子音」ってなに?

無声子音というのは濁点のついていない、濁っていない子音で、日本語には次の5種類があります(参考:英語の清音・濁音について)。

日本語にある無声子音

  1. [ p ] ……「パ行」の子音
  2. [ t ]……「タ行」の子音
  3. [ s ]……「サ行」の子音
  4. [ k ]……「カ行」の子音
  5. [ h ]……「ハ行」の子音

厳密には「し[ ɕi ]」「ち[ t͡ɕi ]」「つ[ t͡su ]」、そして「ひ[ çi ]」「ふ[ ɸu ]」の子音は別ですが、ここではふれません。

その「無声子音」に両側から挟まれた母音には、「母音の無声化」が起こり、「ウ」の音声が聞こえなくなるのです。

では、具体的に無声子音にはさまれる母音の例を見てみましょう。

無声母音のある言葉(ウ段)

  • 草(kusa)
  • 作る(tsukuru)
  • たくさん(takusan)
  • 還付金(kampukin)
  • パスタ(pasuta)

上の例にある赤文字の「 u 」は音がなくなります。「草(kusa)」なら「ksa」のように。

ちなみに、「イ段」も無声子音にはさまれると無声化しますよ。

無声母音のある言葉(イ段)

  • 秋田(akita)
  • 明日(ashita)
  • 歴史(rekishi)
  • ぴかぴか(pikapika)
  • 非課税(hikazei)

ただし、今回焦点をあてている「misudo(ミスド)」は無声音だけでなく、有声音「 d 」にも囲まれているためこのルールには適合しません。

つまり「ミスド」の「ス」には母音の無声化は起こらないということ!

英語にある「misdo」

この「misdo」というスペルですが、実は英語にも「misdo」という単語があります。

こちらは「mis(ミスする)」と「do(〜をする)」の合体した言葉で、「やり損なう」「悪事をはたらく」のような意味です。

原形三人称単数現在分詞形過去形過去分詞形
misdomisdoesmisdoingmisdidmisdone
「misdo」の活用

発音は「ミスドゥー /misdú/」なので、「ミスド」とは違いますよ!

【衝撃】ミスドにお問い合わせした結果……

本記事は、元日本語教師で音声学マニアのわたしが勝手に考察した内容になっています。

でも、やはり公式な回答がほしいですよね。たぶん、わたしの考察で合っている気がしますが、念のため。

ということで、公式サイトからお問い合わせをしたら、すぐに回答がきました!

このたびお問合せの件については、「mister Donut」の英語表記を短かくして「misdo」と表記させていただいております。

えええええーーー!

なんと! なんと!!

英語表記の「mister Donut」の略だから「misdo」のようです!

たしかに、突然どこからともなく「 u 」が出てきて「misudo」になるのも、よく考えると変ですよね……。

まとめ

結論として、わたしがひとりで考察していたのはなんだったんだ……になりました(笑)。

この記事ではあえてふれていませんでしたが「misdo」の「m」が小文字なのも気になっていたんですよね。

固有名詞なら通常は「大文字」で「Misdo」と表記するはずなので。

でも、正式なロゴを見ると「mister Donut」になってて、「 m 」が小文字なので、略称もそろえて小文字にしているんでしょうね。

考察は外れましたが「無声子音に挟まれた母音が無声化しやすいこと」も覚えておいてくださいね。

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ヨス
アメリカ留学で言語に興味を持ち日本語教師に。その後、自分が「音声学」に猛烈に惹かれることに気づく。一般的には学ばない「日本語の音声」を学ぶことで英語の発音を習得し、独自の英語の発音習得メソッドを持つ。>>ヨスについて詳しくはこちら
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