本場の『ABCの歌』をうまく歌うコツとは?「LMNOP」が速い理由

タカコ

執筆者

WEBライター。2013年にアメリカに渡る。現在はアメリカ人の夫と子ども2人でテキサスに在住。

私は週に1~2回ほど、娘を連れて近所の図書館に行っています。

本を読むというよりは、図書館で行われている「読み聞かせ」に連れて行くためです。

本を読んでくれるだけでなく、英語の歌も一緒に歌ってくれるので、英語の歌をほとんど知らない私にはとてもありがたいのです。

今回は、そこでよく歌われる、日本でも定番の『ABCの歌』に迫りたいと思います。

日本でもよく歌われる『ABCの歌』

『ABCの歌』という、アルファベットの歌は誰もが耳にしたことがあると思います。

A、B、C、D、E、F、G~♪

……という歌ですね。

日本でもおなじみになっている歌なので誰もが聞いたことがあるのではないでしょうか?

ちなみに英語圏では『ABC Song』とか『The Alphabet Song』と呼ばれています。

英語の「ABCの歌」は歌詞が違う?!

この『ABCの歌』ですが、私が子どもの頃から知っていたものと、アメリカで歌われる歌詞が、少し違いました

調べると、歌詞の違うものが何種類かあるようですが、こちらがアメリカで一般的に歌われているものです。

どうでしょうか? こんな反応になったのでは?

なんか知っているのと違う!?

英語圏で歌われる歌詞を書き出してみましょう。

A-B-C-D-E-F-G-
H-I-J-K-LMNOP-
Q-R-S- T-U-V-
W- X- Y-and-Z-
Now I know my "ABCs",
Next time won't you sing with me?

(※ 上の歌詞で赤くしているところは日本語バージョンと違う部分です)

でも、私がもともと知っていたのはこちらです。

A-B-C-D-E-F-G-
H-I-J-K-L-M-N-
O-P-Q-R-S-T-U-
V- W- X-Y-Z-
A-B-C-D-E-F-G-
H-I-J-K-L-M-N-

(※ 『ABCの歌』の歌詞はいろんなバージョンがあるそうです)

私の知っているバージョンは、1拍に1文字ずつ歌い、「Now I know my "ABC"s」などの文章のような歌詞はなく、ひたすらアルファベットだけが登場するものでした。

2度目の繰り返しの部分が「N」で終わってしまい、最後の「Z」まで歌えないという不思議な歌詞です。

忙しく感じるアメリカ版『ABCの歌』

初めてアメリカ版の歌を聞いた方の多くがこんなふうに感じられると思います。

なんて忙しいんだ!!

もちろん、「LMNOP」の部分です。「HIJK」までは同じリズムなのに、「LMNOP」の部分で、急に坂道を転げ落ちるかのように、速くなります

【日本バージョン】
H-I-J-K-L-M-N

【英語圏バージョン】
H-I-J-K-LMNOP

私が知っていた、アルファベットしか登場しない歌詞だと、タンタンタンという規則的なリズムで1文字ずつ歌えばよかったのに、アメリカ版では、1拍に「LM」「NO」の2文字ずつ歌うことになります。

これは慣れるまでけっこう大変です。言葉がなかなかメロディーに収まらないのです。

なぜかというと、日本語と英語の発音の仕方の違いに原因があります。

本場の『ABCの歌』が歌いにくい理由

日本語では、音節は、基本的に母音で終わります。そういう特性のある言語を、専門的な言葉で「開音節言語」といいます。

でも英語の場合は子音で終わることの多い「閉音節言語」です。

説明すると長くなるので「開音節言語」と「閉音節言語」についての記事もご参考に!

言葉は難しいのですが、早い話、日本人は、日本語の特性から、「つい」言葉の音節に「母音を勝手に付け足してしまいがち」なのです。

たとえば、「L・M・N・O」アルファベットも日本語風に発音すると、

エル(e-ru)・エム(e-mu)・エヌ(e-nu)・オー(o)

となります。

「o」は英語でも日本語でも母音なので、発音はそこまで変わりません。ここで見てほしいのは「エル(e-ru)」「エム(e-mu)」「エヌ(e-nu)」です。

本来の英語での発音では「エル(e-ru)」も「エム(e-mu)」も「エヌ(e-nu)」も、最後に「 u 」を付けません。発音は子音で終わります。

  • 「エル(e-ru)」「エム(e-mu)」「エヌ(e-nu)」
  • 「e-l」「e-m」「e-n」

でも、日本人の歌う『ABCの歌』では「 u 」の音まで発音します。

話は歌に戻りますが、ただでさえ、アメリカ版の歌だと、1拍に2文字分歌わないといけないのに、さらに日本語的に発音してしまうと、余計な母音まで足してしまうのです。

※ この辺りの説明がよくわからない方は、ぜひ下記記事をご覧くださいね。

参考: 子音だけを発音するとは? 日本語は子音と母音が合体しているという事実

英語でよく使われる「発音のリンク」

では、この歌を実際歌うときのコツを紹介します。

英語は「子音」で終わる言葉が多いのですが、速く言葉を発音する場合、子音は後ろの母音とリンクして(つながって)発音されることが多いのです。

L・M・N・O・Pを音声的に表すと、「el・em・en・o・p」です。

一語一語区切ると「el・em・en・o・p」なのに、発音はというと、子音は後ろのある母音とくっついて、「e・le・me・no・p」という風にリンクするのです。

その結果、「LMNOP」は「エレメノピー」のように発音されます(参考: 英語のリンキングについて)。

これなら、母音を伴う音節に慣れている日本人にも言いやすくなります。

うまく言えなくても、なんとなく雰囲気はつかめませんか? 雰囲気さえつかめたら、あとは練習あるのみです!

ちなみに、この発音がリンクする現象は、普段の会話でもよく使いますよ。リンクだらけです。

参考: 英語の「文章」を綺麗に発音するコツとは?「スペース」を取っ払って読め!

「韻」を踏んでいる『ABCの歌』

「LMNOP」の部分だけ大忙しなのですが、こういう歌詞になるには、「理由」がありました

実は英語圏のこの歌詞は、「韻」を踏んでいるのだそうです。さすが子ども向けの歌ですね。

それでは、どこに韻が踏まれているのでしょう? もう一度歌詞を見てみてみると……。

A-B-C-D-E-F-G-
H-I-J-K-LMNOP-
Q-R-S- T-U-V-
W- X- Y-and-Z-
Now I know my "ABCs",
Next time won't you sing with me?

一区切りつくときの語(各行の最後の語)「G」「P」「V」「Z」に注目です。

韻を踏んでいる

  • G → ジー
  • P → ピー
  • V → ヴィー
  • Z → ズィー(イギリス式では「zed」と発音)

この「韻」ですが、日本語バージョンだと、この法則は成り立ちません。

たぶん、1文字1文字の発音のしやすさに重点を置いたんでしょうね。「LMNOP」の部分は、日本人には慣れるまで大変ですから。

ついでに言うと、最後の「Next time won't you sing with me?」の「me」も韻を踏んでいます。

『ABCの歌』は、アルファベットの部分が難しい

アルファベットの部分が歌えると、あとは楽勝です。

Now I know my "ABC's"(これが私の知っている"ABC")
Next time won't you sing with me?(次は一緒に歌わない?)

「won't you~?」と、「will」の否定形を使ってお誘いしているところが、かわいらしいです。

「ABC's」というふうに「 s 」が入っているのもお忘れなく!

特に速く歌う部分もありません。単語自体もそう難しくはないと思います。各単語の頭を少し強く発音して、語尾を抜くように歌うのがコツです。

ABCなどのアルファベットだけではなく、ちょっとした文章も歌えると、なんだかすごくうれしくなりませんか? 自信にもつながりますよね。

アメリカでは、この歌をゆっくり歌ったり、速く歌ったりして、いろいろなバージョンを楽しみます。

速いと、やはり「LMNOP」の部分が大変なのですが……。

『ABCの歌』とメロディーが同じ『きらきら星』

『ABCの歌』が歌えると、続けて挑戦してみていただきたい歌が『きらきら星』です。

実は、この2曲は、メロディーが同じなんですね。

この歌も難しい言葉はありません。速く歌うこともなく、ゆっくりしっとり歌うことが多いので、落ち着いて歌えますよ。

まとめ

少し発音の忙しい部分はありますが、コツさえつかめば歌えると思います。

そして、『ABCの歌』の次は『きらきら星』にステップアップ。

なんといっても、1つのメロディーで2曲楽しめるのがうれしいですね。

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アメリカ人の夫との結婚を機に渡米。現在は二児の母として英語に囲まれた環境の中で生活。日本語教育に携わっていたため言語への視点が鋭く、元・英会話教師の夫とのやりとりから生まれる記事が秀逸。
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