
アメリカの製薬大手が相次いで開発中のコロナウイルス(COVID-19)ワクチンの有効性について発表しました。
この記事では、カナダ
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新型コロナウイルスワクチンについてどんな発表があった?
アメリカ製薬大手の ファイザー(Pfizer)は11月9日、ドイツのBioNTech社との共同開発中のコロナワクチンについて、臨床試験の最終段階(Phase 3 clinical trial)で90%の有効性の初期データが得られたと中間発表を行いました。
さらに11月16日、アメリカ製薬大手のモデルナ(Moderna)は3万人を対象とした治験で 94.5%の有効性が見られたと発表しました。
ワクチンの承認を見据え、カナダ政府は8月5日の時点ですでにファイザー社とモデルナ社と国内にワクチンを供給することで合意しています。
ワクチンは本当に有効?安全?
今回発表されたデータはあくまで初期の未完成データであり、最終的なワクチンの有効性や安全性を認めるものではありません。
どちらも短期間に得られたデータで、長期的な効果や影響については今後さらなる検証が必要となります。
また、新型コロナウイルスによって重症化しやすい(さらにワクチンが効きにくい)とされている高齢患者の詳細なデータはまだ公開されていません。
どちらの研究結果もまだ詳しく分析されておらず、論文としても発表されていませんし、査読(審査)もされていないません。
ワクチンは感染を防ぐ?発症を防ぐ?
まだ分かりません。
今回の治験では、コロナウイルス感染症が「発症(症状が出た)」人を対象にデータが収集されました。
そのため、ワクチンを接種した人や無症状の患者がどれだけ感染を広めるか分かっていません。
ワクチン開発の主要評価項目(primary endpoint、ワクチンの主要な目的)はコロナによる発症を防ぐこと。
副次評価項目(secondary endpoint、その他の目的)は重症化を防ぎ、さらに感染自体を防ぐことだとモデルナ社は話しています。
今後これらを検証するため、さらなる試験が行われます。
ワクチンが承認されるにはどのぐらいの有効性が必要?
アメリカ食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)は、新型コロナウイルスのワクチンが承認されるには50%以上の有効性が必要だと発表しています。
世界保健機構 (WHO, World Health Organization)もワクチン承認には少なくても50%の有効性が認められなければならない、70%以上が理想であると述べています。
また、ワクチンの効果は最低6か月(可能な限り1年以上)持続することが求められます。
臨床試験の最終段階って?
今回の臨床試験はどちらも Phase 3 clinical trials (第3相試験)、つまり臨床試験の最終段階のものです。
一般的に、ワクチン開発の臨床試験は3段階に分けて行われます。
Phase 1 と Phase 2 は比較的少人数(百人以下~数百人)の患者を対象とし、ワクチンの安全性や用量の確認、免疫反応が確認されます。
Phase 3 ではより多くの患者(数千人以上)を対象とし、ワクチンとプラセボ(偽薬)を接種した患者を比較します。また、対象人数が多いので、稀な副反応が明らかになるケースもあります。
ファイザーの Phase 3 臨床試験では約4.3万人、モデルナの試験では約3万人が参加しました。
どのような副反応が確認された?
ファイザー社はワクチンまたはプラセボ(偽薬)を接種した治験患者に軽度~中等度の副反応が見られたと発表していますが、具体的な症状は明らかにしていません。
モデルナ社は治験患者に軽度~中等度の副反応が見られたといいます(例:接種した場所の痛み、倦怠感、筋肉痛等)。
より重度な副反応が見られたのは治験患者の10%未満でした。
長期的な影響は?
新しいコロナワクチンの長期的な影響はまだはっきりしていません。
一般的に、ワクチンの副反応は2か月以内に出ることが多くいため、ワクチンが承認されるには治験患者の半数を2か月以上追跡して調査する必要があります。
ファイザー社は「長期的な安全性のため」、今回の臨床試験に参加した患者の2回目のワクチン接種後、2年間は追跡調査を行うとしています。
治験患者はどのようにしてコロナに感染した?
今回の試験では、通常の生活(学校や仕事など)を送り、自然にコロナに感染した患者のデータを利用しています。
より多くのデータを短期間で集められるよう、ワクチンの臨床試験では感染者数の多い国が対象とされることが多いです。
どれぐらい期待していいの?
専門家は今回の発表について「期待できる」と述べています。
モントリオールの疫学者 Dr. Christopher Labos は「2021年のはじまりにはワクチンの供給が開始される可能性が高い」と述べています。
WHO の Dr. Bruce Aylwardは「ワクチンが承認されれば、3月にはこの危機の流れが根本的に変わる」と話しました。
ただし、ワクチン承認後もすぐにカナダ全土にワクチンが渡るわけではありません。
モントリオールの小児感染症と医学微生物学者の Dr. Caroline Quach は「まだ困難から脱したわけではない」とし、引き続き手洗いなどの感染予防対策を行う必要性を指摘しました。
臨床試験で得られたデータはまだ全て公表されておらず、まだその有効性は断定できません。
また、このワクチンは低温での保管が重要で、物流面での問題もあります。
今回使われたのはどのようなワクチン?
今回ファイザー社とモデルナ社で使用されたワクチンはどちらも mRNA(messenger RNA)という遺伝子を用いています。
脂質ナノ粒子(LNP)と呼ばれる脂質でできた「袋」に mRNA を閉じ込め、人体に接種するのがこのワクチンの特徴です。
体の中に入ると、到達した細胞内で mRNA が抗原タンパク質に翻訳されて、免疫が誘導されます(つまり、免疫が作られる)。
ファイザー社が用いたこのテクノロジーは、バンクーバーの企業 Acuitas Therapeutics が研究・開発した脂質ナノ粒子(LNP)の技術も含まれています。
mRNA ワクチンのメリットとデメリットは?
mRNA ワクチンのメリットは、ウイルスやウイルス由来のたんぱく質を使っていないため、従来のワクチンよりも安全に使用できる点です。
また、製造も比較的簡単です。
デメリットは、mRNA ワクチンがまだ新しいテクノロジーで、これまでに mRNA ワクチンは世界で承認されたことがない点です。
さらに、mRNA は不安定で低温での保管が必須です。
ファイザー社のワクチンは、長期的な保管のためにはマイナス70℃の環境が必要です(ただし、5日程度なら冷蔵庫でも保管可能とのこと)。
モデルナ社のワクチンは冷蔵庫で一か月、マイナス20℃で数か月は保管できるそうです。
ワクチンの持続期間は?
新しいワクチンの効果がどれぐらい持続するかはまだ分かりません。
BioNTech社の CEO、Ugur Sahin 氏は「最低1年は有効である」と述べましたが、現在データが発表されていないので根拠はありません。
免疫抑制剤を使用している患者への有効性は?
まだ具体的には分かりません。
しかし、モデルナ社は「幅広い層で安全性と有効性が示唆された」としています。
たまごアレルギーがあっても大丈夫?
今回のワクチンは卵由来の成分を使用していないので、卵アレルギーのある人でも接種できます。
カナダにはどれぐらい供給される?
カナダ政府は8月5日にファイザー社とモデルナ社と契約し、それぞれ2,000万回分のワクチンを供給を受けることで合意しています。
カナダではいつ供給される?
ファイザー社・モデルナ社共にワクチンが承認されれば、2021年にはカナダ人への接種が始まると予定されています。
この2社以外にも、カナダ政府は複数の製薬会社とも契約を結んでおり、2021年の終わりにはカナダ人全員にワクチンが行き渡る計画です。
まとめ
世界中が注目する新型コロナウイルスのワクチン開発。
承認されれば、早くて2021年のはじめからカナダを含め各国での接種がはじまります。
今後も続報に期待しましょう!
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